ひとことで言うと

  • 個別株式のリスクプレミアムは、CAPMなら「ベータ × 市場リスクプレミアム」で求めます。
  • マルチファクター・モデルでは、市場以外にも規模・バリューなど複数のファクターへの感応度と、各ファクターのプレミアムを掛けて合計します。
  • 求めたリスクプレミアムに無リスク利子率を足したものが、株主資本コスト(要求収益率)になります。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「CAPM・マルチファクターでの推定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (5) 株式リターンの分析と株式ポートフォリオによる投資戦略
協会の学習ポイント CAPMやマルチファクター・モデルを利用した個別株式リスクプレミアムの推定方法を理解する。

CAPM・マルチファクター・モデルによるリスクプレミアム推定とは

市場全体の株式リスクプレミアムがわかっても、個別銘柄にはそれぞれ異なるリスクがあります。そこで、個別株式がどれだけのリスクプレミアムを求められるかを、資産価格モデルを使って推定します。代表的なのがCAPMとマルチファクター・モデルです。

CAPM(資本資産評価モデル)

CAPMでは、分散投資で消せない市場全体の動きに対する感応度(ベータ)だけが報われるリスクだと考えます。個別株式のリスクプレミアムは、ベータに市場リスクプレミアムを掛けたものです。ベータが1より大きい銘柄は市場より大きなプレミアムを、1より小さい銘柄は小さなプレミアムを求められます。個別企業固有のリスク(非システマティック・リスク)は分散投資で消せるため、プレミアムには反映されません。

マルチファクター・モデル

実際の株式リターンは、市場全体だけでなく、企業規模(小型株かどうか)、割安度(バリュー)、モメンタムなど、複数の共通要因で説明できることが知られています。マルチファクター・モデルでは、各ファクターへの感応度(ファクター・エクスポージャー)と、そのファクターのリスクプレミアムを掛けて足し合わせます。代表例にファーマ=フレンチの3ファクター・モデル(市場・規模・バリュー)があり、マクロ経済変数をファクターにするモデルもあります。

CAPMは単純で使いやすい一方、1つの要因しか考えないため説明力に限界があります。マルチファクター・モデルは説明力が高まる反面、どのファクターを採用するか、各プレミアムをどう推定するかという判断が必要です。

押さえておきたい公式

E(Ri) − Rf = βi × {E(RM) − Rf}CAPMによる個別株式のリスクプレミアム
E(Ri) − Rf = bi1 × λ1 + bi2 × λ2 + … + biK × λKマルチファクター・モデルによる個別株式のリスクプレミアム
記号 意味
βi 銘柄iの市場ポートフォリオに対するベータ
E(RM) − Rf 市場リスクプレミアム
bik 銘柄iのファクターkへの感応度
λk ファクターkのリスクプレミアム

具体例で確認

例1:CAPM

無リスク利子率1%、市場リスクプレミアム5%、A社のベータ1.2とします。

  1. リスクプレミアム:1.2 × 5% = 6%
  2. 株主資本コスト:1% + 6% = 7%

例2:3ファクター・モデル

同じA社について、市場ファクターへの感応度1.1(プレミアム5%)、規模ファクター0.4(プレミアム2%)、バリューファクター−0.3(プレミアム3%)と推定されたとします。

  1. リスクプレミアム:1.1 × 5% + 0.4 × 2% + (−0.3) × 3% = 5.5% + 0.8% − 0.9% = 5.4%
  2. 株主資本コスト:1% + 5.4% = 6.4%

バリューファクターへの感応度がマイナス(グロース株的な性質)なので、その分だけプレミアムが小さくなっています。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「株式リスクプレミアム・CAPM・マルチファクターモデル・ベータ推計を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • CAPMで報われるのはシステマティック・リスク(ベータ)だけで、固有リスクにはプレミアムがつかない理由を説明させる問題が考えられます。
  • 「リスクプレミアム」と「期待リターン(=無リスク利子率+プレミアム)」を取り違えないことが大切です。
  • マルチファクターの計算では、感応度がマイナスのファクターの符号の扱いがひっかけになりやすいです。
  • CAPMとマルチファクター・モデルの長所・短所の比較は、記述式で問われやすい論点です。
  • 計算問題では、各項の掛け算と合計の過程を示して答えられるようにしておきましょう。

要点まとめ

  • CAPM:リスクプレミアム=β×市場リスクプレミアム
  • マルチファクター:Σ(感応度×ファクター・プレミアム)
  • 株主資本コスト=無リスク利子率+リスクプレミアム
  • マルチファクターは説明力が高いが、ファクター選択の判断が必要

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。