ひとことで言うと

  • 株式マネジャーの選択は、過去の成績だけでなく運用哲学・運用プロセス・組織・人材などを定量・定性の両面から評価して行います。
  • ベンチマークに対するトータル・アクティブ・リターンは、真のアクティブ・リターンミスフィット・リターンに分解できます。
  • 複数マネジャーを組み合わせるときは、合計したスタイルの偏りがベンチマークから外れないよう管理することが大切です。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「マネジャーの選択とスタイル管理」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (5) 株式リターンの分析と株式ポートフォリオによる投資戦略
協会の学習ポイント 株式マネジャーの選択プロセスやトータル・アクティブ・リターンの把握、スタイル管理手法について理解する。

マネジャー選択とスタイル管理とは

年金基金などの資産保有者(アセット・オーナー)は、株式の運用を外部の運用会社(マネジャー)に委託することが一般的です。その際、どのマネジャーを選び、複数のマネジャーをどう組み合わせるかによって、株式ポートフォリオ全体の成果とリスクが大きく変わります。この学習ポイントは、選ぶ段階(マネジャー選択)組み合わせた後の管理(スタイル管理)の両方を扱います。

マネジャー選択のプロセス

マネジャー選択では、まず委託する資金の役割(パッシブかアクティブか、どのスタイルを担わせるか)を決め、候補を絞り込みます。評価は、過去のリターンやリスク、インフォメーション・レシオなどの定量評価と、運用哲学・運用プロセスの一貫性、運用担当者の経験や体制、組織の安定性、コンプライアンスなどの定性評価を組み合わせて行います。過去の好成績は運や一時的なスタイルの追い風による場合もあるため、その成績が再現可能なプロセスから生まれたものかを見極めることが重要です。手数料や報酬体系も、最終的なリターンに影響する要素として比較されます。

トータル・アクティブ・リターンの分解

マネジャーの実績を評価するときは、そのマネジャーの得意分野を反映したノーマル・ポートフォリオ(マネジャー・ベンチマーク)を用います。たとえば小型バリュー株を得意とするマネジャーを、市場全体の株価指数だけで評価すると、スタイルの違いによる差まで「腕前」と見なしてしまいます。そこで、ベンチマークとの差であるトータル・アクティブ・リターンを、ノーマル・ポートフォリオを上回った部分(真のアクティブ・リターン)と、ノーマル・ポートフォリオと資産保有者のベンチマークとのズレによる部分(ミスフィット・リターン)に分けて考えます。

スタイル管理

複数のマネジャーに委託すると、各社のスタイルの合計が、たとえば「グロース寄り」「小型株寄り」のように、全体ベンチマークから偏ることがあります。これを放置すると、意図しないスタイル・リスク(ミスフィット・リスク)を負うことになります。そこで、スタイル分析で各マネジャーのスタイルを把握し、配分比率を調整したり、不足部分を埋める補完ファンド(コンプリーション・ファンド)を組み入れたりして、全体の偏りを管理します。また、マネジャーのスタイルが契約時から変化するスタイル・ドリフトがないかを継続的にモニタリングすることも、スタイル管理の一部です。

押さえておきたい公式

トータル・アクティブ・リターン = RP − RBポートフォリオのリターンと資産保有者のベンチマークのリターンの差
RP − RB = (RP − RN) + (RN − RB)前半が真のアクティブ・リターン、後半がミスフィット・リターン
トータル・アクティブ・リスク = √(真のアクティブ・リスク2 + ミスフィット・リスク2)両者が無相関と仮定した場合
記号 意味
RP マネジャーのポートフォリオのリターン
RN ノーマル・ポートフォリオ(マネジャーのスタイルに合わせたベンチマーク)のリターン
RB 資産保有者が設定したベンチマークのリターン

具体例で確認

あるマネジャーのポートフォリオのリターンが8.0%、そのマネジャーのノーマル・ポートフォリオが6.5%、資産保有者のベンチマーク(市場全体の指数)が6.0%だったとします。

  1. トータル・アクティブ・リターン:8.0% − 6.0% = 2.0%
  2. 真のアクティブ・リターン:8.0% − 6.5% = 1.5%(マネジャーの銘柄選択などの腕前)
  3. ミスフィット・リターン:6.5% − 6.0% = 0.5%(スタイルの違いによるもの)

市場全体の指数との比較だけでは2.0%の超過に見えますが、そのうち0.5%はスタイルの追い風によるもので、マネジャー固有の付加価値は1.5%と評価できます。また、真のアクティブ・リスクが3%、ミスフィット・リスクが2%で無相関なら、トータル・アクティブ・リスクは√(9 + 4) ≒ 3.61%となります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「ESG要因に基づく株式戦略、株式マネジャーの選択とスタイル管理を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • トータル・アクティブ・リターンを真のアクティブ・リターンとミスフィット・リターンに分解する計算が問われやすく、どのリターン同士の差かを取り違えないことが大切です。
  • ノーマル・ポートフォリオを使う理由(スタイルの影響と運用能力を分けて評価するため)を記述式で説明させる形に備えましょう。
  • リスクは単純な足し算ではなく、無相関なら二乗和の平方根になる点がひっかけになりやすいです。
  • マネジャー選択では過去の成績だけでなく、運用プロセスの一貫性や再現性などの定性評価が重要である点が問われます。
  • 複数マネジャーの合算スタイルの偏りを補完ファンドや配分調整で管理する方法、スタイル・ドリフトの監視も押さえておきましょう。

要点まとめ

  • マネジャー選択は定量評価と定性評価(哲学・プロセス・組織・人材)を組み合わせる
  • トータル・アクティブ・リターン = 真のアクティブ・リターン + ミスフィット・リターン
  • 真のアクティブ・リターンはノーマル・ポートフォリオとの差で測る
  • 複数マネジャーの合計スタイルの偏りは、配分調整や補完ファンドで管理する

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。