有形固定資産の日本基準とIFRSの違いとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- IFRSでは有形固定資産の測定に原価モデルと再評価モデルを選べますが、日本基準は原価モデルが基本です。
- IFRSは重要な構成部分ごとに減価償却するコンポーネント・アプローチを求め、耐用年数や残存価額も毎期見直します。
- 減損は、日本基準が割引前キャッシュフローで判定する2段階、IFRSは1段階で、IFRSでは減損の戻入れもあります。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「有形固定資産の基準差」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 費用の測定 |
| 協会の学習ポイント | 有形固定資産の会計について、日本基準とIFRSの相違点を理解する。 |
有形固定資産の基準差とは
工場・機械・建物といった有形固定資産は、減価償却費や減損損失を通じて利益に大きな影響を与えます。日本基準とIFRS(IAS第16号、減損はIAS第36号)の違いを知らないと、同じ業種の企業でも利益率や総資産利益率(ROA)を正しく比べられません。
当初認識後の測定:原価モデルと再評価モデル
日本基準では、取得原価から減価償却累計額と減損損失累計額を差し引いた金額で計上する原価モデルが基本です(土地再評価法による一時的な再評価という例外的な制度はありました)。IFRSでは、資産の種類ごとに原価モデルと再評価モデルを選択できます。再評価モデルでは定期的に公正価値で評価し直し、評価増は原則としてその他の包括利益(再評価剰余金)に計上します。
減価償却:コンポーネント・アプローチと見積りの見直し
IFRSでは、全体の取得原価に対して重要な構成部分があり、耐用年数などが異なる場合には、その部分ごとに別々に減価償却します(コンポーネント・アプローチ)。また、耐用年数・残存価額・償却方法を少なくとも各期末に見直すことが求められます。日本では実務上、税法の耐用年数を参考にした一括償却が多く見られます。
減損:2段階と1段階、戻入れの有無
日本基準では、減損の兆候がある資産について、まず割引前の将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回るかを判定し(認識の判定)、下回る場合に回収可能価額まで減額します。IFRSでは割引前キャッシュフローによる判定はなく、帳簿価額が回収可能価額(使用価値と処分コスト控除後の公正価値の高い方)を上回れば減損します。さらにIFRSでは、のれん以外の資産について、状況が改善すれば減損損失の戻入れが行われますが、日本基準では戻入れは行いません。
このほか、借入コストについて、IFRSは一定の資産(適格資産)の取得に直接かかる借入コストの資産計上を求めるのに対し、日本基準は原則として費用処理(不動産開発事業など一部で資産計上を容認)という違いもあります。
整理しておきたいポイント
| 論点 | 日本基準 | IFRS |
|---|---|---|
| 測定モデル | 原価モデルが基本 | 原価モデルと再評価モデルの選択 |
| 減価償却の単位 | 一括償却が一般的 | 重要な構成部分ごとに償却 |
| 見積りの見直し | 変更があれば見直し | 少なくとも各期末に見直し |
| 減損の認識 | 割引前CFで判定する2段階 | 回収可能価額と比較する1段階 |
| 減損の戻入れ | 行わない | のれん以外は行う |
| 借入コスト | 原則費用処理 | 適格資産は資産計上 |
具体例で確認
① コンポーネント・アプローチ:取得原価1,000の航空機のうち、機体800(耐用年数20年)、エンジン200(耐用年数5年)とします(残存価額ゼロ、定額法)。
- 一括償却(20年):1,000÷20=50
- 構成部分ごと:800÷20+200÷5=40+40=80
IFRSでは減価償却費が大きくなり、初期の利益は小さくなります。
② 減損の判定:帳簿価額1,000、割引前将来キャッシュフロー1,050、回収可能価額700の資産を考えます。
- 日本基準:割引前キャッシュフロー1,050が帳簿価額1,000を上回るため、減損を認識しません。
- IFRS:回収可能価額700が帳簿価額を下回るため、300の減損損失を計上します。
日本基準は割引前のキャッシュフローで判定するため、IFRSより減損が認識されにくいといえます。
試験で問われやすいポイント
- 再評価モデルはIFRSのみの選択肢であり、評価増は原則としてその他の包括利益に計上される点が問われやすいです。
- コンポーネント・アプローチによる減価償却費の計算に注意しましょう。
- 減損の2段階(日本)と1段階(IFRS)の違い、日本基準のほうが減損を認識しにくい理由を説明できるようにしましょう。
- 減損損失の戻入れの有無は定番の相違点です(IFRSでものれんは戻入れ不可)。
- 2次の記述式では、基準の違いが利益やROAの比較に与える影響を説明させる形も考えられます。
要点まとめ
- IFRSは原価モデルと再評価モデルの選択、日本基準は原価モデルが基本。
- IFRSは重要な構成部分ごとに償却し、見積りを毎期見直す。
- 減損は日本基準が2段階、IFRSが1段階で、IFRSは戻入れあり。
- 基準の違いは減価償却費・減損損失を通じて利益や総資産に影響する。
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
