リース会計の日本基準とIFRSの違いとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- IFRS第16号では、借手は短期・少額リースなどを除き、原則すべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します。
- 従来の日本基準では、借手のオペレーティング・リースはオフバランス(賃借料として費用処理)でした。
- オンバランス化で総資産・負債が増え、負債比率は上昇、ROAは低下し、EBITDAは増加します。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「リース取引の基準差」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 費用の測定 |
| 協会の学習ポイント | リース取引の会計について、日本基準とIFRSの相違点を理解する。 |
リース取引の基準差とは
リースは、設備や店舗、航空機などを購入せずに借りて使う取引です。経済的には「お金を借りて資産を買う」のと似ているにもかかわらず、会計処理によっては資産も負債も貸借対照表に載りません。この違いが、企業の財務レバレッジや資産効率の比較をゆがめる原因になってきました。
従来の日本基準:ファイナンスとオペレーティングの区分
従来の日本基準(リース取引に関する会計基準)では、借手はリースをファイナンス・リース(解約不能で、経済的利益とコストが実質的に借手に移るもの)とオペレーティング・リースに区分します。ファイナンス・リースは売買に準じてリース資産・リース債務を計上しますが、オペレーティング・リースは賃貸借処理で、支払リース料を費用処理するだけです(解約不能分の未経過リース料は注記)。
IFRS第16号:借手の単一モデル
IFRS第16号では、借手はリースの区分を行わず、リース期間が12か月以内の短期リースや少額資産のリースといった例外を除いて、使用権資産とリース負債(将来のリース料の現在価値)を計上します。損益計算書では、支払リース料の代わりに使用権資産の減価償却費とリース負債の支払利息が計上されます。なお貸手の会計処理は、IFRSでも従来どおりファイナンス/オペレーティングの区分が残っています。
日本でも、IFRS第16号と整合させた新しいリース会計基準(企業会計基準第34号)が2024年に公表され、2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定です(早期適用も可能)。分析では、比較対象の企業がどの基準で作成されているかを確認することが欠かせません。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| リース料t | t期のリース料の支払額 |
| r | 割引率(リースの計算利子率または借手の追加借入利子率) |
具体例で確認
年100のリース料を5年間(各年末払い)支払う店舗リース、割引率5%とします。会社の総資産は10,000、負債6,000、純資産4,000、オペレーティング・リースとして処理した場合の営業利益は800です。
- リース負債・使用権資産:100×(1÷1.05+…+1÷1.055)≒432.9
- 初年度の費用:減価償却費432.9÷5≒86.6、支払利息432.9×5%≒21.6、合計108.2(オフバランスなら支払リース料100)
- 負債比率(負債÷純資産):6,000÷4,000=1.50 → 6,432.9÷4,000≒1.61
- ROA(営業利益÷総資産):800÷10,000=8.0% → 営業利益は800+100−86.6≒813.4、総資産10,432.9で≒7.8%
営業利益はリース料が減価償却費に置き換わるため少し増え、EBITDAはリース料100の分だけ増えます。一方、利息を含めた初年度の費用総額は大きくなり、費用は前半に多く計上される点に注意しましょう。
試験で問われやすいポイント
- IFRS第16号では借手のオペレーティング・リースの区分がなくなり、原則すべてオンバランスになる点が基本です。
- オンバランス化で総資産・負債・負債比率・EBITDA・営業利益・ROAがそれぞれどちらに動くかがよく問われます。
- リース負債の現在価値計算、減価償却費と支払利息への分解の計算に慣れておきましょう。
- キャッシュフロー計算書では、リース負債の元本返済が財務活動に区分され、営業キャッシュフローが大きく見える点も論点です。
- 2次の記述式では、オフバランスのリースを調整して企業間比較をする手順を説明させる形も考えられます。
要点まとめ
- IFRS第16号の借手は原則すべてのリースで使用権資産とリース負債を計上する。
- 従来の日本基準ではオペレーティング・リースはオフバランスだった。
- オンバランス化で負債比率は上昇、ROAは低下、EBITDAは増加する。
- 日本でもIFRS第16号と整合的な新基準が公表され、2027年4月以後開始の事業年度から適用予定。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
