ひとことで言うと

  • 日本基準の引当金は、将来の費用・損失が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もれるなら計上します。
  • IFRSの引当金は、過去の事象による現在の義務(法的義務または推定的義務)があることが前提です。
  • そのため、日本基準で計上される修繕引当金などは、IFRSでは計上できないことがあります。

この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「引当金の基準差」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析
大分類 (5) 費用の測定
協会の学習ポイント 引当金の会計について、日本基準とIFRSの相違点を理解する。

引当金の基準差とは

引当金は、将来に支出が見込まれる費用や損失のうち、当期の負担に属する金額を見積もって前もって計上するものです。見積りの要素が大きいため、経営者の判断によって利益が動きやすい項目でもあります。日本基準とIFRS(IAS第37号)では、「どんなときに引当金を計上できるか」という考え方の出発点が異なります。

日本基準:4つの要件

日本基準(企業会計原則注解18)では、次の4つの要件を満たす場合に引当金を計上します。

  1. 将来の特定の費用または損失であること
  2. その発生が当期以前の事象に起因すること
  3. 発生の可能性が高いこと
  4. 金額を合理的に見積もることができること

この考え方は、費用を発生原因となった期間に配分する費用収益対応を重視したものです。そのため、第三者への義務がなくても、修繕引当金や特別修繕引当金のように、将来の自社の支出に備える引当金も計上されます。

IFRS:現在の義務があるか

IFRSでは、①過去の事象の結果として現在の義務(法的義務または推定的義務)があり、②その義務を決済するために経済的便益の流出の可能性が高く(発生しない可能性より高い)、③金額を信頼性をもって見積もれる場合に、引当金(負債)を計上します。負債の定義を満たすかどうかを重視する考え方です。

自社の設備の将来の修繕は、設備を売却すれば避けられる支出であり、現在の義務ではないため、IFRSでは引当金になりません。IFRSでは、定期的な大規模修繕は実施時に資産計上し、次の修繕までの期間で償却する(コンポーネント・アプローチ)のが一般的です。また、IFRSでは貨幣の時間価値の影響が重要な場合、引当金を現在価値に割り引いて測定します。

整理しておきたいポイント

論点 日本基準 IFRS
考え方の軸 費用収益対応(当期以前の事象に起因) 負債の定義(現在の義務)
修繕引当金 要件を満たせば計上 現在の義務がなく計上しない
推定的義務 明示的な概念なし 慣行や公表方針から生じる義務も含む
割引 一部の引当金を除き一般的でない 時間価値が重要なら割引計算

具体例で確認

① 修繕引当金:船舶を保有する会社が、5年ごとに500の大規模修繕を行うとします。

  • 日本基準:次の修繕に備えて毎期500÷5=100ずつ修繕引当金繰入額(費用)と修繕引当金(負債)を計上します。
  • IFRS:引当金は計上しません。修繕を行った時点で500を資産計上し、次の修繕までの5年間で毎期100ずつ償却します。

日本基準では負債が積み上がる一方、IFRSでは負債がなく、費用の計上時期もずれます。負債比率やROAの比較に影響する点に注意しましょう。

② 割引計算:3年後に1,000の支出が見込まれる現在の義務があり、割引率が3%なら、IFRSでの引当金は1,000÷1.033915です。翌期には割引の巻き戻し(915×3%≒27)が金融費用として計上されます。

試験で問われやすいポイント

  • 日本基準の引当金4要件を正確に覚えておきましょう。
  • 日本基準は費用収益対応、IFRSは現在の義務(負債の定義)という考え方の違いが問われやすいです。
  • 修繕引当金はIFRSでは計上できない代表例です。
  • IFRSの「推定的義務」や、時間価値が重要な場合の割引計算も相違点として押さえましょう。
  • 2次の記述式では、引当金の見積りが利益調整に使われうる点や、基準の違いが負債比率に与える影響を説明させる形も考えられます。

要点まとめ

  • 日本基準は4要件(将来の特定の費用、当期以前の事象に起因、発生可能性が高い、合理的に見積可能)で判断する。
  • IFRSは過去の事象による現在の義務があることが前提。
  • 修繕引当金などはIFRSでは計上できない。
  • IFRSは時間価値が重要なら引当金を割り引いて測定する。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。