ひとことで言うと

  • 日本基準は有価証券を保有目的(売買目的・満期保有目的・子会社関連会社株式・その他)で分類し、評価方法を決めます。
  • IFRS第9号は、金融資産を償却原価その他の包括利益を通じた公正価値(FVOCI)損益を通じた公正価値(FVPL)の3つに分類します。
  • 株式のFVOCIでは売却しても損益に振り替えない(リサイクリングしない)点や、予想信用損失による減損が大きな違いです。

この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「金融資産・負債の基準差」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析
大分類 (5) 費用の測定
協会の学習ポイント 金融資産・負債の会計について、日本基準とIFRSの相違点を理解する。

金融資産・負債の基準差とは

企業が保有する株式や債券、貸付金、そして借入金や社債などの金融負債の会計処理は、利益の大きさや変動性に直結します。日本基準(金融商品に関する会計基準)とIFRS第9号では、分類の考え方そのものが異なります。

日本基準:保有目的による分類

  • 売買目的有価証券:時価評価し、評価差額は当期の損益。
  • 満期保有目的の債券:償却原価で評価。
  • 子会社株式・関連会社株式:個別財務諸表では取得原価で評価。
  • その他有価証券:時価評価し、評価差額は原則として純資産(その他有価証券評価差額金)に計上。売却時には損益に振り替えられます(リサイクリング)。

IFRS第9号:ビジネスモデルとキャッシュフローの性質による分類

負債性の金融資産(債券・貸付金など)は、契約上のキャッシュフローが元本と利息のみか(SPPIテスト)と、保有のビジネスモデル(回収目的か、回収と売却の両方か)によって、償却原価、FVOCI(売却時にリサイクリングあり)、FVPLのいずれかに分類されます。

資本性の金融資産(株式)は原則としてFVPLですが、売買目的でない株式は、当初認識時に銘柄ごとにFVOCIを選択できます。この選択をすると、公正価値の変動はその他の包括利益に計上され、売却しても損益には振り替えません(利益剰余金へ直接振り替え)。減損損失も損益に計上されず、受取配当金だけが損益に計上されます。

減損と金融負債

IFRS第9号は、償却原価やFVOCIの債券・貸付金について、将来の信用損失を見込んで引き当てる予想信用損失モデル(原則12か月分、信用リスクが著しく増大したら全期間分)を採用しています。日本基準は、債権を一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権等に区分して貸倒見積高を算定する方法が基本です(日本でも予想信用損失モデルの導入に向けた検討が行われてきました)。金融負債は両基準とも原則として償却原価ですが、IFRSでは公正価値オプションを選んだ負債について、自社の信用リスクの変動による部分をその他の包括利益に計上します。

整理しておきたいポイント

論点 日本基準 IFRS第9号
分類の考え方 保有目的 ビジネスモデルとキャッシュフローの性質
持合い株式など その他有価証券(時価・純資産直入) FVPLまたはFVOCIの選択
株式の売却損益 損益に計上(リサイクリング) FVOCI選択なら損益に計上しない
株式の減損 著しい下落時に損益へ計上 FVOCI選択なら損益に計上しない
債権の減損 債権区分に応じた貸倒見積高 予想信用損失モデル

具体例で確認

取得原価1,000の上場株式(持合い目的)が期末に時価1,300になり、翌期に1,300で売却したとします(税効果は考えません)。

  • 日本基準(その他有価証券):1年目は評価差額300を純資産に計上し、損益には影響しません。2年目に売却すると、投資有価証券売却益300が損益に計上されます。
  • IFRS(FVOCIを選択):1年目は300をその他の包括利益に計上。2年目に売却しても損益への影響はゼロで、累計額は利益剰余金へ振り替えられます。
  • IFRS(FVPL):1年目に300の評価益が損益に計上され、2年目の売却損益はゼロです。

日本基準では、含み益のある株式を売却するタイミングで利益を調整できますが、IFRSのFVOCIではそれができません。

試験で問われやすいポイント

  • 日本基準の4つの保有目的区分と、それぞれの評価方法・評価差額の計上先を正確に覚えましょう。
  • IFRSの3分類(償却原価・FVOCI・FVPL)と、分類を決める2つの基準(ビジネスモデル、SPPI)が問われやすいです。
  • 株式のFVOCIではリサイクリングしない、債券のFVOCIではリサイクリングする、という違いは混同しやすい論点です。
  • 予想信用損失モデルでは損失が発生する前から引当てを行う点を押さえましょう。
  • 2次の記述式では、分類の違いが純利益の変動性や利益の質に与える影響を説明させる形も考えられます。

要点まとめ

  • 日本基準は保有目的、IFRSはビジネスモデルとキャッシュフローの性質で分類する。
  • IFRSの株式FVOCIは売却しても損益に振り替えず、減損も損益に計上しない。
  • 日本基準のその他有価証券は売却時に損益へリサイクリングされる。
  • IFRSは予想信用損失モデルで貸倒れを早めに引き当てる。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。