その他有価証券の税効果とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- その他有価証券の時価評価差額は、税効果を差し引いた純額で純資産のその他有価証券評価差額金に計上します。
- 評価差益には繰延税金負債、評価差損には繰延税金資産が対応し、相手勘定は法人税等調整額ではなく評価差額金です。
- そのため、全部純資産直入法では評価差額も税効果も当期純利益に影響しません。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「その他有価証券の税効果」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (7) 税効果会計 |
| 協会の学習ポイント | その他の有価証券に係る税効果会計を理解する。 |
その他有価証券の税効果とは
持合い株式など、売買目的でも満期保有目的でもなく、子会社・関連会社株式でもない有価証券はその他有価証券に分類され、期末に時価で評価します。ただし税務上は、原則としてこうした有価証券は取得原価のままで、評価差額は課税所得に含まれません。会計上の帳簿価額(時価)と税務上の帳簿価額(取得原価)に差が生じるため、これは一時差異になり、税効果会計の対象になります。
全部純資産直入法
原則的な方法では、評価差額の合計額を純資産の部に計上します。このとき、評価差益に対しては将来売却したときに税金を払うことになるため繰延税金負債を、評価差損に対しては将来税金が減るため繰延税金資産を計上し、残りの純額をその他有価証券評価差額金とします。評価差額そのものが損益を通っていないため、税効果も法人税等調整額を使わず、評価差額金から直接控除します。連結の包括利益計算書では、税効果控除後の金額がその他の包括利益に表示されます。
部分純資産直入法
継続適用を条件に、評価差益は純資産に計上し、評価差損は当期の損失として損益計算書に計上する方法も認められています。この場合、評価差損に対応する税効果は法人税等調整額を通じて計上されます。
翌期の処理と注意点
その他有価証券の評価差額は、翌期首に取得原価に戻す洗い替えを行います。一方、時価が著しく下落し回復の見込みがない場合の減損処理は、評価差額金ではなく損益に計上し、洗い替えもしません。また、評価差損に対応する繰延税金資産は、ほかの繰延税金資産と同様に回収可能性の判断が必要です。
押さえておきたい公式
具体例で確認
実効税率30%の会社が、期末に次の2銘柄をその他有価証券として保有しているとします。
| 銘柄 | 取得原価 | 期末時価 | 評価差額 |
|---|---|---|---|
| A株式 | 1,000 | 1,200 | +200 |
| B株式 | 500 | 400 | −100 |
全部純資産直入法
- A株式:繰延税金負債200×30%=60、評価差額金+140
- B株式:繰延税金資産100×30%=30、評価差額金−70
- その他有価証券評価差額金の合計は140−70=70で、純資産が70増えます。当期純利益への影響はゼロです。
部分純資産直入法
- A株式は同じく評価差額金+140。
- B株式の評価差損100は投資有価証券評価損として損益に計上し、繰延税金資産30を法人税等調整額(税金費用の減少)で計上します。当期純利益は100−30=70減少します。
- 純資産全体への影響は、どちらの方法でも+70で同じです。
試験で問われやすいポイント
- 評価差額は税効果を控除した純額で純資産に計上される点と、その計算が基本です。
- 全部純資産直入法では法人税等調整額を使わない点が、ほかの一時差異との違いとして問われやすいです。
- 評価差益には繰延税金負債、評価差損には繰延税金資産という対応関係を取り違えないようにしましょう。
- 部分純資産直入法では当期純利益が変わるが、純資産全体の変動は同じになる点に注意しましょう。
- 2次の記述式では、評価差額金の変動がROEの分母や自己資本比率に与える影響を説明させる形も考えられます。
要点まとめ
- その他有価証券の評価差額は一時差異で、税効果の対象になる。
- 全部純資産直入法では税効果控除後の純額を評価差額金に計上し、純利益には影響しない。
- 評価差益には繰延税金負債、評価差損には繰延税金資産が対応する。
- 部分純資産直入法では評価差損と税効果が損益に計上される。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
