税率変更時の繰延税金の再計算とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- 税率が変わると、期末の繰延税金資産・負債を新しい税率で計算し直します。
- 差額は原則として法人税等調整額(損益)に計上しますが、その他有価証券評価差額金のように純資産に直接計上した項目に対応する分は純資産で調整します。
- 税率引下げは、繰延税金資産が多い会社では利益を減らし、繰延税金負債が多い会社では利益を増やします。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「税率変更時の再計算」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (7) 税効果会計 |
| 協会の学習ポイント | 税率変更があった場合の再計算の仕組みを理解し、財務諸表や財務指標への影響額を計算できる。 |
税率変更時の再計算とは
日本の税効果会計は、一時差異が解消する将来の時点で適用される税率で繰延税金資産・負債を計算する資産負債法をとっています。そのため、税制改正で法人税率などが変わると、すでに計上している繰延税金資産・負債を新しい税率で計算し直す必要があります。
日本基準では、決算日までに国会で成立した税法に基づく税率を使います。期末後に成立した改正は、その期の計算には反映しません。IFRS(IAS第12号)では、期末日までに「実質的に制定された」税率を使う点が異なります。
差額の計上先
- 損益を通じて計上した一時差異(引当金、減価償却の超過額、繰越欠損金など)に対応する分:差額は法人税等調整額に計上し、純利益に影響します。
- 純資産に直接計上した一時差異(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、退職給付に係る調整累計額など)に対応する分:差額はその項目(純資産)で調整し、純利益には影響しません。
影響の方向
税率が下がると、将来減らせる税金も、将来払う税金も小さくなります。そのため、繰延税金資産は減少して税金費用が増え(利益減少)、繰延税金負債は減少して税金費用が減ります(利益増加)。どちらの影響が大きいかは、会社の繰延税金資産と負債の残高次第です。
押さえておきたい公式
具体例で確認
期末の状況は次のとおりで、税率が30%から25%に引き下げられる改正が期末までに成立したとします。
- 将来減算一時差異(引当金など)2,000 → 繰延税金資産 2,000×30%=600
- その他有価証券の評価差益500 → 繰延税金負債 500×30%=150、その他有価証券評価差額金350
- 再計算前の当期純利益800、純資産10,000
再計算
- 繰延税金資産:2,000×25%=500。100減少し、法人税等調整額(費用)100を計上 → 当期純利益は700
- 繰延税金負債:500×25%=125。25減少し、その他有価証券評価差額金が350から375に増加(損益には影響しない)
- 純資産:10,000−100+25=9,925
- ROE(当期純利益÷期末純資産):8.0% → 700÷9,925≒7.1%
税率変更による一時的な損益は、将来の収益力とは関係のない特殊要因です。分析では、この影響を除いた利益で業績の趨勢を判断することが大切です。
試験で問われやすいポイント
- 税率引下げで繰延税金資産は減少(利益減少)、繰延税金負債は減少(利益増加)という方向が問われやすいです。
- 差額の計上先を、損益由来の一時差異は法人税等調整額、純資産直入の項目は純資産、と区別しましょう。
- 一時差異×税率差で影響額を求め、純利益・純資産・ROEなどの指標を再計算する問題に慣れておきましょう。
- 日本基準は決算日までに国会で成立した税法の税率を使う点も押さえましょう。
- 2次の記述式では、計算過程を示したうえで、この影響が一時的な要因であることを説明させる形も考えられます。
要点まとめ
- 税率変更時は繰延税金資産・負債を新税率で計算し直す(資産負債法)。
- 損益由来の差額は法人税等調整額、純資産直入項目の差額は純資産で調整する。
- 影響額は一時差異×(新税率−旧税率)で求められる。
- 一時的な要因なので、分析では影響を除いて業績を評価する。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
