企業結合会計の日本基準とIFRSの違いとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- 企業結合の基本的な処理(取得法:取得した資産・負債を時価で受け入れ、差額をのれんとする)は日本基準とIFRSで共通です。
- 最大の違いはのれんの償却で、日本基準は20年以内で規則的に償却し、IFRSは償却せず毎年減損テストを行います。
- IFRSでは非支配持分を公正価値で測定し、非支配持分に帰属するのれんも計上する方法(全部のれん)を選ぶこともできます。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「企業結合会計の基準差」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (8) 企業結合会計 |
| 協会の学習ポイント | 企業結合会計について、日本基準とIFRSの相違点を理解する。 |
企業結合会計の基準差とは
企業結合は、ある企業が他の企業や事業の支配を獲得する取引です。日本基準(企業結合に関する会計基準)もIFRS(IFRS第3号)も、原則として取得法(パーチェス法)で処理し、取得した識別可能な資産・負債を取得日の時価で受け入れ、取得対価との差額をのれんとします。この骨格は同じですが、のれんのその後の扱いや非支配持分の測定などに違いがあります。
① のれんの償却と減損
日本基準では、のれんを20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって規則的に償却し、あわせて減損の兆候があれば減損処理を検討します。IFRSでは、のれんを償却せず、少なくとも年1回(兆候があればその都度)減損テストを行います。そのため、買収の多い企業では、IFRSの方が平常時の利益が大きく見える一方、業績悪化時に多額の減損損失がまとめて計上されやすいという特徴があります。
減損の手続きも異なり、日本基準は割引前将来キャッシュ・フローで減損を認識するかを判定してから測定する2段階、IFRSは回収可能価額と帳簿価額を直接比べる1段階です。
② 非支配持分の測定(部分のれんと全部のれん)
日本基準では、非支配株主持分を子会社の識別可能純資産の持分相当額で測定し、のれんは親会社持分についてのみ計上します(部分のれん)。IFRSでは、取引ごとに、この方法と、非支配持分を公正価値で測定して非支配持分に帰属するのれんも計上する方法(全部のれん)のどちらかを選べます。
③ その他の違い
負ののれんは、両基準とも資産・負債の識別や測定を見直したうえで、なお生じる額を利益として計上します(日本基準では原則として特別利益)。条件付取得対価(アーンアウト)について、IFRSは取得日の公正価値で対価に含めますが、日本基準は原則として支払いが確実になり、金額を合理的に決められるようになった時点で取得原価を修正する、といった違いもあります。
整理しておきたいポイント
| 論点 | 日本基準 | IFRS |
|---|---|---|
| のれんの償却 | 20年以内で規則的に償却 | 償却しない |
| のれんの減損 | 兆候がある場合に2段階で判定・測定 | 少なくとも年1回テスト、1段階 |
| 非支配持分の測定 | 識別可能純資産の持分相当額(部分のれん) | 持分相当額か公正価値かを選択(全部のれんも可) |
| 条件付取得対価 | 原則として支払いが確実になった時点で取得原価を修正 | 取得日の公正価値で対価に含める |
具体例で確認
P社がS社株式の80%を1,000で取得しました。S社の識別可能純資産の時価は1,000、非支配持分20%の公正価値は240とします。
- 部分のれん(日本基準/IFRSの選択肢):1,000 − 1,000×80% = 200、非支配持分は200
- 全部のれん(IFRSの選択肢):(1,000 + 240)− 1,000 = 240、非支配持分は240
さらに、のれん200を日本基準で10年償却すると、毎年20の償却費が営業費用に計上されます。IFRSでは償却費がないため、減損がなければ営業利益は毎年20大きくなりますが、のれん残高は残り続け、将来の減損リスクとして注意が必要です。
試験で問われやすいポイント
- のれんは日本基準が規則的償却、IFRSが非償却+毎年の減損テスト。この違いが利益・総資産・ROE・ROAに与える方向を説明できるようにしましょう。
- 全部のれんと部分のれんの計算の違い(非支配持分を公正価値で測るかどうか)が計算問題になりやすいです。
- 減損テストの手続き(日本基準2段階、IFRS1段階)の違いも押さえておきましょう。
- 記述式では、IFRS適用企業と日本基準適用企業を比較する際にのれん償却の有無をどう調整するかを説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- 企業結合は両基準とも取得法で処理する。
- のれんは日本基準で20年以内に償却、IFRSでは償却せず毎年減損テスト。
- IFRSでは非支配持分を公正価値で測る全部のれんも選択できる。
- 基準差を踏まえて、利益水準や将来の減損リスクを比較・分析する。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
