希薄化後EPSとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- 希薄化前EPS(1株当たり当期純利益)は、普通株主に帰属する利益を期中平均の普通株式数で割ったものです。
- 希薄化後EPS(日本基準では潜在株式調整後1株当たり当期純利益)は、新株予約権や転換社債などが株式に変わった場合に増える株式数(潜在株式)を考慮して計算します。
- EPSを下げる効果(希薄化効果)のある潜在株式だけを含め、EPSを上げてしまう潜在株式(逆希薄化)は除外します。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「希薄化前・希薄化後EPS」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (11) 財務分析の応用 |
| 協会の学習ポイント | 複雑な資本構成での希薄化前と希薄化後のEPSを計算できる。 |
希薄化前・希薄化後EPSとは
EPS(Earnings Per Share)は、1株当たりどれだけの利益を稼いだかを示す指標で、PER(株価÷EPS)の計算にも使われる、株式投資で最も基本的な指標の一つです。
企業が新株予約権(ストック・オプションを含む)や転換社債型新株予約権付社債、転換型の優先株式などを発行していると、将来それらが普通株式に変わり、株式数が増える可能性があります。こうした将来株式になりうるものを潜在株式といい、潜在株式がある資本構成を「複雑な資本構成」と呼びます。既存株主にとっては、潜在株式が株式に変わると1株当たりの利益が薄まる(希薄化する)ため、その影響を示すのが希薄化後EPSです。
希薄化後EPSの計算の考え方
- 新株予約権:自己株式方式で考えます。権利が行使されると株式が増えますが、行使時の払込金で期中平均株価で自己株式を買い戻したと仮定し、その差の株式数だけを分母に加えます。行使価格が期中平均株価より高い場合は、株式数が増えないので希薄化しません。
- 転換社債:期首(発行が期中ならその日)に転換されたと仮定し、転換で増える株式数を分母に加えます。同時に、転換されれば支払わずに済んだ社債利息(税引後)を分子に足し戻します。
- 逆希薄化の除外:足し戻す利益に比べて増える株式数が少なく、EPSを上げてしまう潜在株式は計算に含めません。
押さえておきたい公式
具体例で確認
当期純利益1,000百万円、優先配当100百万円、期中平均普通株式数9百万株の企業があります。潜在株式は次の2つです(税率30%)。
- 新株予約権:1百万株分、行使価格600円(期中平均株価1,000円)
- 転換社債:額面2,000百万円、利率1%、転換で2百万株が増加
① 希薄化前EPS:(1,000 − 100)÷ 9 = 100円
② 新株予約権:払込額600百万円で買い戻せる株式は600 ÷ 1,000 = 0.6百万株。増加株式数は1 − 0.6 = 0.4百万株(分子の調整なし)
③ 転換社債:税引後利息 = 2,000 × 1% ×(1 − 0.3)= 14百万円。増加1株当たり7円で、希薄化前EPS100円より小さいため希薄化効果あり
④ 希薄化後EPS:(900 + 14)÷(9 + 0.4 + 2)= 914 ÷ 11.4 ≒ 80.2円
潜在株式を考慮すると、EPSは100円から約80円へと約2割薄まります。PERを計算するときに、どちらのEPSを使うかで評価が変わることがわかります。
試験で問われやすいポイント
- 分子から優先配当を差し引くこと、分母は期末ではなく期中平均株式数を使うことが基本の確認ポイントです。
- 新株予約権の自己株式方式で、期中平均株価を使って増加株式数を計算する手順が頻出の計算論点です。
- 転換社債では、分母の株式数を増やすだけでなく、税引後の支払利息を分子に足し戻す点を忘れやすいので注意しましょう。
- 逆希薄化の潜在株式を除外する判断(増加1株当たりの利益と比較)も問われやすいです。
- 記述式では、計算過程を順に示しながら希薄化後EPSを求めさせる形が考えられます。
要点まとめ
- 希薄化前EPSは、普通株主に帰属する利益を期中平均普通株式数で割る。
- 希薄化後EPSは、潜在株式が株式に変わった場合の株式数の増加を考慮する。
- 新株予約権は自己株式方式、転換社債は税引後利息の足し戻しと株式数の加算で調整する。
- EPSを上げてしまう逆希薄化の潜在株式は計算から除く。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
