トラッキングエラーとIRとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・ポートフォリオ・マネジメント
ひとことで言うと
- アクティブ・リターンはポートフォリオとベンチマークのリターン差、トラッキングエラー(TE)はその差の標準偏差(アクティブ・リスク)です。
- インフォメーション・レシオ(IR)=アクティブ・リターン ÷ トラッキングエラーで、ベンチマークからのズレ1単位あたりにどれだけ超過収益を上げたかを測ります。
- IRはアクティブ運用の「腕前」を比べる代表的な物差しです。
この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「トラッキングエラーとIR」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント |
|---|---|
| 大分類 | (1) 現代ポートフォリオ理論 |
| 協会の学習ポイント | アクティブ・リスクとトラッキングエラー、インフォメーション・レシオ(IR)について理解する。 |
トラッキングエラーとインフォメーション・レシオとは
アクティブ運用は、TOPIXなどのベンチマークを上回ることを目標にします。そのため評価の軸は「リターンそのもの」ではなく、ベンチマークとの差(アクティブ・リターン)になります。各期のアクティブ・リターンを並べたとき、その平均が超過収益の大きさ、そのばらつき(標準偏差)がベンチマークからどれだけぶれたかを表します。
アクティブ・リスクとトラッキングエラー
アクティブ・リターンの標準偏差をトラッキングエラー、あるいはアクティブ・リスクと呼びます。ベンチマークとまったく同じ銘柄・同じ比率で保有するパッシブ運用ならTEはほぼゼロで、ベンチマークから大きく離れた銘柄選択や業種配分をするほどTEは大きくなります。TEは「リスクの絶対水準」ではなく「ベンチマークに対する相対的なリスク」である点が重要です。ポートフォリオ自体の標準偏差が小さくても、ベンチマークと違う動きをすればTEは大きくなります。
インフォメーション・レシオ
IRは平均アクティブ・リターンをTEで割った値で、とったアクティブ・リスク1単位あたりの超過収益を示します。シャープ・レシオが「無リスク資産に対する超過リターン ÷ 総リスク」なのに対し、IRは「ベンチマークに対する超過リターン ÷ アクティブ・リスク」です。同じ超過収益でも、小さなズレで達成したマネジャーほどIRが高く、効率的だと評価されます。
アクティブ運用の基本法則では、IRは情報係数(IC:予測の的中度)と独立な投資判断の数(ブレッドス)の平方根の積で近似されると説明されます。予測の精度を上げるか、独立した判断の数を増やすことでIRを高められる、という考え方です。
押さえておきたい公式
具体例で確認
あるファンドの5年間のアクティブ・リターン(ファンド − ベンチマーク)が、+3%、−1%、+4%、0%、+2%だったとします。
- 平均アクティブ・リターン:(3 − 1 + 4 + 0 + 2)÷ 5 = 1.6%
- トラッキングエラー:偏差は1.4、−2.6、2.4、−1.6、0.4。偏差の2乗和は17.2で、標本標準偏差は√(17.2 ÷ 4) ≒ 2.07%
- IR:1.6 ÷ 2.07 ≒ 0.77
別のファンドが平均アクティブ・リターン2.4%、TE 6%だったとすると、IRは0.4です。超過収益の大きさでは後者が上ですが、アクティブ・リスクあたりの効率では前者が優れていると判断できます。
試験で問われやすいポイント
- TEは「ポートフォリオのリスク」ではなく「ベンチマークとの差の標準偏差」。総リスクとの取り違えが狙われやすいです。
- IRとシャープ・レシオの違い(分子の基準がベンチマークか無リスク金利か、分母がTEか総リスクか)を説明できるようにしましょう。
- アクティブ・リターンの系列からTEとIRを計算させる問題では、計算過程を順に示せるようにしておくことが大切です。
- 超過収益が大きいマネジャーほど優れているとは限らず、IRで比べる理由を記述で説明させる形も考えられます。
- 基本法則(IR ≒ IC × √BR)の意味と、ICやブレッドスを高めることの効果も確認しておきましょう。
要点まとめ
- アクティブ・リターン=ポートフォリオ − ベンチマーク。
- トラッキングエラー(アクティブ・リスク)はアクティブ・リターンの標準偏差。
- IR=平均アクティブ・リターン ÷ TEで、アクティブ運用の効率を測る。
- IR ≒ IC × √BR:予測精度と独立な判断の数がIRを決める。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
