ひとことで言うと

  • ストレス・テストは、めったに起きないが起きれば大きな損失につながる極端な市場変動を想定し、ポートフォリオの損失を試算する手法です。
  • シナリオ分析は、金利・株価・為替などが同時にどう動くかという筋書き(シナリオ)を作り、その影響を評価します。
  • VaRが「通常の範囲の損失」を測るのに対し、これらはVaRの外側にある大損失に備えるための補完的な手法です。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「ストレス・テストとシナリオ分析」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (3) ポートフォリオの構築とリスク管理
協会の学習ポイント ストレス・テスト、感応度リスク分析、シナリオリスク分析の手法と特性について理解する。

ストレス・テストとは

VaRは過去のデータや分布の仮定をもとに「一定の確率での損失の目安」を示しますが、確率の低い極端な事態(テール・イベント)がどれほどの損失をもたらすかは十分に表せません。また、危機時には資産間の相関が急に高まる、流動性がなくなるといった、平常時のデータにはあらわれにくい現象が起こります。ストレス・テストは、こうした極端な状況を意図的に想定し、「もしこうなったらいくら損をするか」を試算する手法です。

主な手法

  • 感応度リスク分析(単一ファクター型):金利を+2%、株価を−30%というように、1つのリスク・ファクターだけを大きく動かして影響を測ります。どのファクターに弱いかがわかりやすい反面、複数要因の同時変動は反映されません。
  • シナリオリスク分析(複数ファクター型):複数のファクターを整合的に同時に動かします。シナリオの作り方には、実際に起きた危機(ブラックマンデー、世界金融危機など)の市場変動を当てはめるヒストリカル・シナリオと、将来起こりうる事態を想定して作る仮想シナリオがあります。
  • リバース・ストレス・テスト:「経営や運用が立ち行かなくなる損失」から逆算して、それをもたらすシナリオを探す手法です。

長所と限界

ストレス・テストは、VaRでは見えないテール・リスクや、相関の急変・流動性の枯渇といった危機特有の現象を織り込めるのが長所です。結果が「このシナリオで○億円の損失」と具体的なため、経営陣や顧客への説明、資本の十分性の確認、リスク削減策の検討に使いやすい点も利点です。一方で、シナリオの選び方は主観に左右され、そのシナリオが起きる確率はわかりません。想定しなかった事態には無力であるため、複数のシナリオを定期的に見直すことが大切です。

整理しておきたいポイント

手法 何を動かすか 特徴
VaR 統計的な分布にもとづく損益 確率つきの損失の目安。テールや危機時の相関変化に弱い
感応度リスク分析 単一ファクターを一定幅 弱点のファクターが明確。同時変動は反映しない
シナリオリスク分析 複数ファクターを整合的に同時に 現実的な筋書きで評価。シナリオ設定が主観的
ストレス・テスト 極端だが起こりうる変動 テール・リスクを把握。発生確率は示さない

具体例で確認

時価100億円のポートフォリオが、国内株式40億円と国内債券60億円(修正デュレーション7)で構成されているとします。2つのシナリオで損失を試算してみます。

  • シナリオA(株安・金利上昇):株価−30%、金利+1%。株式:40億円 × (−30%) = −12億円、債券:− 7 × 60億円 × 1% = −4.2億円。合計 −16.2億円(−16.2%)
  • シナリオB(株安・金利低下):株価−30%、金利−1%。株式:−12億円、債券:+4.2億円。合計 −7.8億円(−7.8%)

株式と債券が逆に動くことを前提にした分散効果(シナリオB)が、危機の種類によっては働かず、損失が倍以上にふくらみうる(シナリオA)ことがわかります。平常時の相関にもとづくVaRでは見落としやすい点で、ここにストレス・テストの意義があります。

試験で問われやすいポイント

  • ストレス・テストは「VaRを補完し、確率の低い極端な損失(テール・リスク)を把握する手法」であることが基本です。
  • 感応度リスク分析(単一ファクター)とシナリオリスク分析(複数ファクター同時)の違いが問われやすいです。
  • ヒストリカル・シナリオと仮想シナリオの特徴、危機時の相関上昇や流動性低下を織り込める点を押さえましょう。
  • 限界として「シナリオ設定が主観的」「発生確率がわからない」「想定外の事態は捉えられない」が挙げられます。
  • 記述式では、シナリオにもとづく損失額の計算と、VaRとの違い・併用の必要性を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • ストレス・テストは極端な市場変動を想定して損失を試算し、VaRの外側を補う。
  • 感応度リスク分析は単一ファクター、シナリオリスク分析は複数ファクターを同時に動かす。
  • シナリオにはヒストリカル型と仮想型があり、リバース・ストレス・テストもある。
  • 具体的でわかりやすいが、シナリオ設定の主観性と確率がわからない点が限界。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。