ひとことで言うと

  • 統合された市場では資本が国境を越えて自由に動き、同じリスクの資産は国に関係なく同じ期待リターンで評価されます。基準になるのは世界市場のリスクです。
  • 分断された市場では規制やコストなどで資本移動が妨げられ、資産はその国の中のリスク(自国市場に対するベータ)で評価されます。
  • 統合が進むと、一般に資本コストが下がって資産価格は上がる一方、市場間の相関が高まり国際分散の効果は小さくなりやすいです。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「市場の統合と分断」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (6) 国際証券投資と為替管理、資産配分
協会の学習ポイント 国際資本市場の統合と分断の概念について理解する。

市場の統合と分断とは

国際資本市場が統合(インテグレーション)されているとは、投資家が世界中の資産に自由に投資でき、同じリスクを持つ資産は、どの国で取引されていても同じ期待リターンで価格が決まる状態をいいます。この場合、資産の価格付けに関係するのは世界全体で分散しきれないリスク、つまり世界市場ポートフォリオに対するベータです。国際CAPMやIAPMは、この統合を前提としたモデルです。

これに対して分断(セグメンテーション)された市場では、外国人投資の規制、資本移動の制限、税制、取引コスト、情報の格差などにより、国内外の投資家が自由に売買できません。その国のリスクはおもに国内の投資家だけで負担することになり、資産は自国市場に対するベータで評価されます。

統合・分断が与える影響

分断された市場では、国内の投資家だけでリスクを抱えるため、求められるリスク・プレミアムが大きくなりやすく、資本コストが高く(株価は低く)なりがちです。市場が開放されて統合が進むと、リスクが世界中の投資家で分担され、資本コストの低下と株価の上昇が起こりやすいと考えられています。

一方で、統合が進むと各国市場が同じ世界的な要因で動きやすくなり、市場間の相関が上昇します。その結果、国際分散投資によるリスク低減の効果は小さくなります。現実の市場は完全な統合でも完全な分断でもなく、その中間にあり、時間とともに程度が変化すると考えられます。

押さえておきたい公式

統合市場:E(Ri) = Rf + βiW × [E(RW) − Rf]世界市場に対するベータで評価(為替リスクは省略した単純形)
分断市場:E(Ri) = Rf + βiL × [E(RL) − Rf]自国市場に対するベータで評価
記号 意味
βiW、βiL 世界市場、自国市場に対するベータ
E(RW)、E(RL) 世界市場、自国市場の期待リターン

具体例で確認

ある新興国の株式市場全体(市場インデックス)の資本コストを考えます。無リスク金利は1%とします。

  • 分断されている場合:自国市場に対するベータは1.0、国内投資家が求める市場リスク・プレミアムが6%なら、資本コストは 1% + 1.0 × 6% = 7%
  • 統合された場合:この市場の世界市場に対するベータが0.6、世界市場のリスク・プレミアムが5%なら、資本コストは 1% + 0.6 × 5% = 4%

この国の固有のリスクの多くが世界の投資家の分散によって消えるため、統合後は資本コストが下がり、同じ将来キャッシュフローでも株価は高く評価されます。

試験で問われやすいポイント

  • 統合市場では世界市場ベータ、分断市場では自国市場ベータで評価するという違い。
  • 分断の原因(資本規制、外国人投資規制、税制、取引コスト、情報格差など)。
  • 統合が進むと資本コスト低下・株価上昇、相関上昇・分散効果の低下が起こりやすい方向。
  • 国際CAPMやIAPMは統合を前提としている点。
  • 記述式では、統合と分断それぞれの場合の期待リターンの計算と、違いが生じる理由の説明に備えましょう。

要点まとめ

  • 統合市場:資本が自由に移動し、世界市場のリスクで価格が決まる。
  • 分断市場:規制やコストで資本移動が妨げられ、国内のリスクで価格が決まる。
  • 統合が進むと資本コストは下がりやすいが、市場間の相関が高まる。
  • 現実はその中間にあり、統合の程度は時間とともに変わる。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。