ひとことで言うと

  • 期待効用理論は、合理的な人が「最終的な富」の効用を確率で加重平均した期待効用を最大化すると考える、伝統的ファイナンス理論の土台です。
  • プロスペクト理論は、カーネマンとトベルスキーが提唱した理論で、人は参照点からの損得で結果を評価し、確率も主観的にゆがめて判断すると考えます。
  • 「規範的(どう選ぶべきか)」な期待効用理論に対し、プロスペクト理論は「記述的(実際にどう選ぶか)」なモデルです。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「期待効用理論とプロスペクト理論」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (8) 行動ファイナンスの意義と応用
協会の学習ポイント 伝統的ファイナンス理論が依拠する期待効用理論とプロスペクト理論の違いについて理解する。

期待効用理論とプロスペクト理論とは

不確実な状況で人がどのように選択するかを説明する理論として、ファイナンスでは長く期待効用理論が使われてきました。平均・分散アプローチやCAPMなど伝統的な理論の多くも、この考え方を前提にしています。一方、実験や観察から、人の実際の選択が期待効用理論と食い違う例が多く見つかり、それを説明するモデルとしてプロスペクト理論が登場しました。

期待効用理論

期待効用理論(フォン・ノイマン=モルゲンシュテルンの理論)では、各結果の最終的な富の水準に効用を割り当て、それを客観的な確率でそのまま加重平均した期待効用が最大になる選択肢を選ぶと考えます。選好の完備性、推移性、連続性、独立性といった公理を満たす合理的な個人が前提です。効用関数が凹型(富が増えるほど効用の増え方が小さくなる)であれば、その人はリスク回避的で、どの水準の富でも一貫してリスクを避けます。

プロスペクト理論

プロスペクト理論では、人は選択肢を整理する編集段階と、それを評価する評価段階を経て選ぶと考えます。評価段階では、最終的な富ではなく参照点(現状や期待など)からの利益・損失に価値関数で価値をつけ、確率はそのまま使わずに確率ウェイト付け関数(決定ウェイト)で主観的に変換します。価値関数は利益側で凹、損失側で凸、損失側の傾きが急という形をしており、利益局面ではリスク回避的、損失局面ではリスク追求的になりやすいこと、同じ額なら損失を利益より重く感じること(損失回避)を表します。

整理しておきたいポイント

観点 期待効用理論 プロスペクト理論
性格 規範的(合理的な選び方) 記述的(実際の選び方)
評価の対象 最終的な富の水準 参照点からの損益
評価の関数 効用関数(通常は全体で凹) 価値関数(利益で凹、損失で凸、損失側が急)
確率の扱い 確率をそのまま使う(線形) 確率ウェイト付け関数で変換
リスクへの態度 一貫してリスク回避(凹の場合) 利益ではリスク回避、損失ではリスク追求

具体例で確認

次の2つの問題を考えます。

  • 問題1:確実に10万円もらう か、50%で20万円・50%で0円 か
  • 問題2:確実に10万円失う か、50%で20万円失う・50%で0円 か

期待値はどちらも同じですが、多くの人は問題1で「確実に10万円」、問題2で「50%で20万円失う」を選びます。期待効用理論では、凹型の効用関数を持つ人は問題2でも確実な方を選ぶはずで、この組み合わせを説明できません。

プロスペクト理論の価値関数 v(x) = x0.88(利益)、v(x) = −2.25 × (−x)0.88(損失)(単位:万円、確率のゆがみは無視)で計算すると、

  • 問題1:確実な10万円の価値 7.6 > 賭けの価値 0.5 × 200.88 ≒ 7.0 → 確実な方を選ぶ
  • 問題2:確実な損失の価値 −17.1 < 賭けの価値 −0.5 × 2.25 × 200.88 ≒ −15.7 → 賭けを選ぶ

このように、プロスペクト理論は実際の選択パターンをうまく説明できます。

試験で問われやすいポイント

  • 評価の対象が「最終的な富」か「参照点からの損益」かという違いは最重要の論点です。
  • 期待効用理論は確率を線形に使い、プロスペクト理論は確率ウェイト付け関数で変換する点を比較させる問題に備えましょう。
  • 利益局面ではリスク回避、損失局面ではリスク追求という態度の違い(鏡像効果)を説明できるようにしましょう。
  • 期待効用理論が規範的理論、プロスペクト理論が記述的理論であるという位置づけ。
  • 記述式では、具体的な選択例を使って両理論の違いを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 期待効用理論は最終的な富の効用を客観確率で加重平均する伝統的理論。
  • プロスペクト理論は参照点からの損益を価値関数で評価し、確率を主観的に変換する。
  • 価値関数は利益で凹・損失で凸で、損失側の傾きが急(損失回避)。
  • 利益ではリスク回避、損失ではリスク追求という実際の選択を説明できる。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。