ひとことで言うと

  • 参照点とは、損得を判断する基準点のことで、人は最終的な富ではなく参照点からの変化で結果を評価します。
  • 損失回避とは、同じ額なら利益の喜びより損失の痛みを大きく感じる性質で、損失は利益のおよそ2倍程度重く感じるとされます。
  • 感応度が逓減するため、利益ではリスク回避的、損失ではリスク追求的になりやすく、確率も客観値どおりには評価されません。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「プロスペクト理論の主要概念」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (8) 行動ファイナンスの意義と応用
協会の学習ポイント プロスペクト理論における主要な概念(参照点や損失回避、リスクに対する態度、リスク評価等)を理解する。

損失回避と参照点とは

プロスペクト理論は、人の実際の選択を説明するために、いくつかの重要な概念を用います。ここでは、協会の学習ポイントにある「参照点」「損失回避」「リスクに対する態度」「リスク評価」を順に整理します。

参照点

人は結果を絶対的な富の水準ではなく、ある基準からの利益損失かで評価します。この基準が参照点です。多くの場合は現状の資産水準ですが、株式の購入価格、期待していた利益、周囲の人の成果などが参照点になることもあります。同じ100万円の資産でも、200万円から減った人と50万円から増えた人では感じ方がまったく違うのはこのためです。

損失回避

価値関数は参照点で折れ曲がっており、損失側の傾きが利益側より急になっています。このため、同じ額の利益と損失では損失のほうが大きく感じられます。この度合いを損失回避係数(λ)で表し、トベルスキーとカーネマンの推定ではおよそ2.25とされています。

リスクに対する態度

価値関数は、参照点から離れるほど追加の損益に対する感じ方が鈍くなる感応度逓減の性質を持ちます。利益側では凹型なのでリスク回避的に、損失側では凸型なのでリスク追求的になります。損失を確定させるくらいなら、さらに損失が膨らむ可能性があっても賭けに出るという行動は、この性質で説明できます。

リスク評価(確率の扱い)

プロスペクト理論では、確率をそのまま使わず決定ウェイトに変換して評価します。一般に、小さな確率は過大に、中程度から大きな確率は過小に評価されます。宝くじと保険を同時に買うといった行動も、この確率のゆがみと価値関数の組み合わせで説明されます。

押さえておきたい公式

v(x) = xα(x ≧ 0)、 v(x) = −λ × (−x)β(x < 0)トベルスキー=カーネマンの推定値の例:α = β = 0.88、λ = 2.25
x 参照点からの損益
α、β 感応度逓減の度合い(1未満)
λ 損失回避係数(1より大きい)

具体例で確認

上の価値関数(α = β = 0.88、λ = 2.25)を使い、確率のゆがみは無視して考えます。

  • 損失回避:50%で+100、50%で−100の賭けの価値は、0.5 × 1000.88 − 0.5 × 2.25 × 1000.88 ≒ 28.8 − 64.7 = −36.0。期待値はゼロでも、価値はマイナスなので断ります。損失100と釣り合わせるには、利益が約251必要になります(100 × 2.251/0.88 ≒ 251)。
  • 利益局面:確実な+100の価値は 1000.88 ≒ 57.5、50%で+200の賭けは 0.5 × 2000.88 ≒ 53.0。確実な方を選ぶ(リスク回避)。
  • 損失局面:確実な−100の価値は ≒ −129.5、50%で−200の賭けは ≒ −119.1。賭けを選ぶ(リスク追求)。

試験で問われやすいポイント

  • 参照点・損失回避・感応度逓減・決定ウェイトの意味を、それぞれ一言で説明できるようにしましょう。
  • 価値関数の形(利益で凹、損失で凸、損失側が急で参照点で折れ曲がる)と、そこから導かれるリスク態度の違いがよく問われます。
  • 損失回避係数(λ)を使って、期待値ゼロの賭けを断る理由や、受け入れに必要な利益額を計算させる問題に備えましょう。
  • 参照点が変わると同じ結果でも利益にも損失にもなりうる点(フレーミングとの関係)。
  • 記述式では、損失回避と感応度逓減を使って投資家の行動(損切りの遅れなど)を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 人は参照点からの損益で結果を評価する。
  • 損失回避により、同じ額でも損失は利益よりおよそ2倍重く感じられる。
  • 感応度逓減により、利益ではリスク回避、損失ではリスク追求になりやすい。
  • 確率は決定ウェイトに変換され、小さな確率は過大評価されやすい。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。