非関税措置(輸入割当・輸出自主規制)とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・市場と経済の分析
ひとことで言うと
- 非関税措置とは、関税以外の方法で貿易を制限・調整する政策で、輸入割当(数量制限)、輸出自主規制、規格・基準、補助金などがあります。
- 輸入割当は国内価格を押し上げ、消費者余剰の減少、生産者余剰の増加、死荷重(厚生損失)を生む点で関税とよく似ています。
- 違いは関税収入にあたる「割当レント」が誰のものになるかで、輸出自主規制ではレントが外国の輸出業者に渡るため、輸入国の損失はより大きくなります。
この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「非関税措置の影響」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/経済 |
|---|---|
| 大分類 | (7) 国際貿易と世界経済 |
| 協会の学習ポイント | 様々な非関税措置の影響について説明できる。 |
非関税措置とは
貿易を制限する政策というと関税を思い浮かべますが、実際には関税以外の方法も多く使われています。これらを非関税措置(非関税障壁)と呼びます。代表的なものに、輸入できる数量に上限を設ける輸入割当(輸入数量制限)、輸出国が「自主的に」輸出量を抑える輸出自主規制、国内生産者や輸出への補助金、国内の規格・基準、検査・認証手続き、政府調達での国内優遇などがあります。
輸入割当の効果
小国(国際価格に影響を与えない国)が輸入量を自由貿易時より少なく制限すると、国内では供給が足りなくなり、国内価格が国際価格より高くなります。その結果、消費者は高い価格で少ない量しか買えず消費者余剰が減少し、国内生産者は生産を増やして生産者余剰が増加します。国内価格と国際価格の差に輸入量を掛けた部分が割当レントで、輸入の権利を持つ者の利益になります。社会全体では、非効率な国内生産の増加(生産の歪み)と消費の減少(消費の歪み)による死荷重が残ります。
関税との違い
同じ国内価格をもたらす関税を「同等関税」と呼び、価格・数量・死荷重は輸入割当と同じになります。違いは、関税では価格差の部分が政府の関税収入になるのに対し、輸入割当では割当の権利を持つ者のレントになる点です。また、国内需要が増えたとき、関税なら輸入が増えて国内価格は変わりませんが、輸入割当では輸入量が固定されているため国内価格がさらに上がり、保護の度合いが強まります。
輸出自主規制と規格・基準
輸出自主規制は、輸入国の圧力を受けて輸出国側が輸出量を抑える措置です。価格への効果は輸入割当と同じですが、割当レントは外国の輸出業者が受け取るため、輸入国にとっての損失は「死荷重+レント」となり、輸入割当より大きくなります。一方、規格・基準は安全や環境を守る正当な目的を持つ場合が多いものの、必要以上に厳しい基準や複雑な手続きは、輸入品のコストを高めて実質的な貿易障壁として働くことがあります。
整理しておきたいポイント
| 項目 | 関税 | 輸入割当 | 輸出自主規制 |
|---|---|---|---|
| 国内価格 | 上昇 | 上昇 | 上昇 |
| 価格差×輸入量の帰属 | 自国政府(関税収入) | 割当の権利を持つ者(割当レント) | 外国の輸出業者 |
| 輸入国の厚生損失 | 死荷重 | 死荷重(レントが国内に残る場合) | 死荷重+レント |
| 国内需要が増えたとき | 輸入が増え、価格は不変 | 輸入は増えず、価格が上昇 | 輸入は増えず、価格が上昇 |
具体例で確認
ある小国の国内需要がQD = 100 − P、国内供給がQS = Pで、国際価格は20とします。
- 自由貿易:需要80、国内供給20、輸入60です。
- 輸入割当を20に制限:国内価格Pは(100 − P)− P = 20 よりP = 40。需要60、国内供給40、輸入20になります。
- 消費者余剰の減少:(80 + 60)÷ 2 × 20 = 1,400
- 生産者余剰の増加:(20 + 40)÷ 2 × 20 = 600
- 割当レント:(40 − 20)× 20 = 400
- 死荷重:1,400 − 600 − 400 = 400(生産の歪み200+消費の歪み200)
同じ結果は1単位20の関税(同等関税)でも得られ、その場合400は関税収入になります。もしこれが輸出自主規制なら、400のレントは外国の輸出業者に渡り、輸入国の損失は400 + 400 = 800に広がります。
試験で問われやすいポイント
- 輸入割当による国内価格・消費量・生産量・輸入量の変化と、消費者余剰・生産者余剰・レント・死荷重の計算が問われやすいです。
- 関税と輸入割当の違いはレントの帰属であり、価格や死荷重は同等関税と同じになる点を押さえましょう。
- 輸出自主規制ではレントが外国に流出し、輸入国の損失が大きくなる理由を記述式で説明できるようにしましょう。
- 国内需要の増加に対して、関税と輸入割当で国内価格の反応が異なる点はひっかけになりやすいです。
- 規格・基準は正当な目的を持ちうる一方、実質的な貿易障壁にもなりうるという両面を説明できるようにしておきましょう。
要点まとめ
- 非関税措置には輸入割当、輸出自主規制、補助金、規格・基準などがある
- 輸入割当は国内価格を上げ、消費者余剰減・生産者余剰増・死荷重を生む
- 関税との違いは価格差×輸入量(レント)が誰に帰属するか
- 輸出自主規制はレントが外国に渡るため、輸入国の損失がより大きい
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
