【証券アナリスト2次】市場と経済の分析とは?要するに何を学ぶのかを学習ポイントに沿って解説
証券アナリスト(CMA)2次試験で学ぶ「市場と経済の分析」。1次で学んだミクロ・マクロ経済の知識を土台に、経済成長モデル、テイラールール、マンデル=フレミングモデル、通貨危機、計量経済モデルによる予測まで範囲が広がり、「結局この分野で何ができるようになればいいの?」と感じる方も多いはずです。
この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、2次の市場と経済の分析で要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。
市場と経済の分析で学ぶこと
- 長期の経済成長と政策の効き方:ソロー=スワンモデルや成長会計で成長の源泉をとらえ、金融政策・財政政策が景気・物価・資本市場にどう効くかを考える
- 国際経済と為替・通貨危機:貿易政策、マンデル=フレミングモデル、国際金融のトリレンマ、為替介入、過去の通貨危機・金融危機のメカニズムを理解する
- 制度・規制と経済予測:外部性や競争政策などの制度面と、計量経済モデルを使った景気・アセットリターン・為替の予測の考え方を身につける
市場と経済の分析の基本情報
| 試験科目 | 2次「市場と経済の分析」(経済・数量分析)の分野グループ |
|---|---|
| 試験での出題 | 午前・午後の総合試験の中で出題(記述式) |
| 学習ポイント数 | 44項目(大分類6つ) |
| 1次とのつながり | 1次では市場メカニズムと企業行動、国民所得と金利・物価、国民経済計算、景気循環と経済成長、金融・資本市場とマネー、金融政策と財政政策、国際貿易、国際資本移動と外国為替市場の基礎を学びます。2次ではこのうち(4)(6)(7)(8)をより深く掘り下げ、新たに(9)産業政策と市場規制、(10)市場の分析・予測と経済的要因が加わります |
全体像:6つの大分類
| 大分類 | ひとことで言うと |
|---|---|
| (4) 景気循環と経済成長とその要因 | 生産関数や成長モデルを使って、長期的に経済が成長する仕組みと資本市場の役割を理解する |
| (6) 金融政策と財政政策 | 財政・金融政策が資本市場や物価・生産に与える影響を考え、経済統計から景気の先行きを読む |
| (7) 国際貿易と世界経済 | 比較優位と為替・賃金の関係、非関税措置、保護貿易が続く理由を学ぶ |
| (8) 国際資本移動と外国為替市場 | 開放経済での政策効果、為替介入、資本規制、通貨危機・金融危機の仕組みを理解する |
| (9) 産業政策と市場規制 | 外部性や競争政策、会社・開示・金融取引の制度が、市場と資本市場にどう影響するかを学ぶ |
| (10) 市場の分析・予測と経済的要因 | 計量経済モデルやサーベイを使って、景気・アセットリターン・為替を予測する方法と限界を学ぶ |
各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。
参考:1次も含めた大分類の全体像
協会の「主要学習事項と学習ポイント」では、1次と2次で大分類に同じ通し番号を使っています。2次の市場と経済の分析に(1)〜(3)と(5)が出てこないのは、これらを1次で学ぶためです。2次は1次の内容を前提に出題されるので、全体の流れを参考に確認しておきましょう。
| 大分類 | 扱う試験 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| (1) 市場メカニズムと企業行動 | 1次のみ | ミクロ経済の基本。需要と供給、消費者と企業の最適な行動、完全競争・独占・寡占の違いを学ぶ |
| (2) 国民所得と金利や物価との関係 | 1次のみ | AD-AS分析で、GDPと物価が短期・長期でどう決まるかを考える |
| (3) 国民経済計算の仕組み | 1次のみ | GDPの測り方と中身、貯蓄・投資バランス、IS-LM分析など、マクロ経済の「ものさし」と基本モデル |
| (4) 景気循環と経済成長とその要因 | 1次・2次 | 生産関数や成長モデルを使って、長期的に経済が成長する仕組みと資本市場の役割を理解する |
| (5) 金融・資本市場とマネー | 1次のみ | お金(マネー)の定義と量、貨幣の理論、金融機関と日本の金融構造 |
| (6) 金融政策と財政政策 | 1次・2次 | 財政・金融政策が資本市場や物価・生産に与える影響を考え、経済統計から景気の先行きを読む |
| (7) 国際貿易と世界経済 | 1次・2次 | 比較優位と為替・賃金の関係、非関税措置、保護貿易が続く理由を学ぶ |
| (8) 国際資本移動と外国為替市場 | 1次・2次 | 開放経済での政策効果、為替介入、資本規制、通貨危機・金融危機の仕組みを理解する |
| (9) 産業政策と市場規制 | 2次のみ | 外部性や競争政策、会社・開示・金融取引の制度が、市場と資本市場にどう影響するかを学ぶ |
| (10) 市場の分析・予測と経済的要因 | 2次のみ | 計量経済モデルやサーベイを使って、景気・アセットリターン・為替を予測する方法と限界を学ぶ |
1次で学ぶ内容は【証券アナリスト1次】市場と経済の分析の記事で学習ポイントごとに解説しています。
(4) 景気循環と経済成長とその要因
ポイント:「経済は長い目で見て何によって成長するのか」を学ぶパートです。生産関数とソロー=スワンモデルを軸に、成長会計、ショックの影響、さまざまな成長モデル、長期の資本市場の働きを押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 長期のマクロモデル(生産関数) | 生産量が資本・労働・技術で決まるという生産関数(例:コブ=ダグラス型)を使い、長期の供給力を考える |
| ソロー=スワンモデル | 資本の限界生産力は逓減するので、貯蓄による資本蓄積だけでは成長が止まり定常状態に落ち着く。持続的な成長には技術進歩が必要であることを理解する |
| 成長会計 | 経済成長率を「資本の寄与+労働の寄与+全要素生産性(TFP)の伸び」に分解し、成長の源泉を数字で確かめる |
| 外生的ショックと経済成長 | 技術革新、人口の変化、災害などのショックが、定常状態や成長経路をどう動かすかを考える |
| さまざまな成長モデル | 古典派の成長モデル、資本の収穫逓減がないAKモデル、研究開発などで技術進歩が内生的に生まれるモデルの違いを整理する |
| 長期の投資と貯蓄 | 長期の資本市場では、企業の投資(資金需要)と家計などの貯蓄(資金供給)が実質金利を通じて調整されることを理解する |
| 完全な資本市場と機能不全 | 理想的な資本市場では資金が効率的に配分される一方、情報の非対称性や借入制約などがあると機能不全が起きることを理解する |
(6) 金融政策と財政政策
ポイント:政策が経済と市場をどう動かすかを考えるパートです。財政赤字と国債・金利の関係、金融政策の中長期の効果、テイラールールによる政策金利の予想、GDP統計や経済統計を使った景気判断を押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 財政政策と資本市場 | 政府支出の拡大や国債発行、政府債務のGDP比率の上昇が、金利や民間投資(クラウディング・アウト)などを通じて資本市場に与える影響を考える |
| 金融政策の中長期的効果 | 金融緩和は短期的には生産を押し上げうるが、長期的には主に物価に影響するという考え方(貨幣の中立性)を理解する |
| テイラールール | 政策金利を、「均衡実質金利+インフレ率」にインフレ率の目標からの乖離とGDPギャップをそれぞれ係数付きで加えた式で表し、中央銀行の行動を予想する |
| GDP統計と景気循環 | 実質GDP成長率や需要項目別の寄与度、GDPギャップから、いま景気がどの局面にあるのかを読み取る |
| 経済統計と先行き予測 | 景気動向指数などの経済統計の特徴を知り、統計データを使って経済の先行きを計算・予測する |
| ポリシーミックス | 金融政策と財政政策を組み合わせたとき、金利・生産・為替などにどんな効果が出るのかを整理する |
(7) 国際貿易と世界経済
ポイント:貿易の理論と貿易政策を学ぶパートです。比較優位が為替や賃金でどう変わるか、関税以外の貿易制限の効果、そして非効率なはずの保護貿易がなぜ続くのかを考えます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 為替・賃金と比較優位 | 為替レートや賃金が変わると各国の生産コストが変わり、どの財を輸出・輸入するかの構図に影響することを理解する |
| 非関税措置の影響 | 輸入数量制限、輸出自主規制、規格・基準などの非関税措置が、価格・数量・経済厚生に与える影響を考える |
| 保護が続く理由 | 保護の利益は特定の産業に集中し、費用は消費者に薄く広く分散するといった政治経済学的な理由から、保護政策が続きやすいことを理解する |
(8) 国際資本移動と外国為替市場
ポイント:お金が国境を越えて動く世界での政策と危機を学ぶパートです。マンデル=フレミングモデル、トリレンマ、為替介入、為替リスクのモデル、マクロ・プルーデンス政策、そして過去の通貨危機・金融危機の教訓を押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| マンデル=フレミングモデル | IS-LMモデルを開放経済に広げたモデル。資本移動が自由な変動相場制では金融政策が有効で財政政策は効きにくい、といった結論を理解する |
| 政策と為替レート | 金融緩和や財政拡大が、金利や資本移動を通じて為替レートを円高・円安のどちらに動かすかを考える |
| トリレンマと資本規制 | 「為替相場の安定」「自由な資本移動」「独立した金融政策」の3つは同時に達成できないという考え方から、資本規制の意味を理解する |
| 為替介入 | 為替介入の目的と方法、介入で動いた通貨供給量を打ち消す不胎化介入と打ち消さない非不胎化介入の違い、その効果を学ぶ |
| ポートフォリオ・バランス・モデル | 自国資産と外国資産が完全には代替的でないため、為替リスクに見合うリスク・プレミアムが為替レートに影響するという考え方を理解する |
| マクロ・プルーデンスと資本フロー管理 | 金融システム全体の安定をめざすマクロ・プルーデンス政策と、急な資本流出入を抑える資本フロー管理政策の役割を学ぶ |
| 1990年代以降の通貨危機 | 欧州通貨危機、メキシコ通貨危機、アジア通貨危機を、ファンダメンタルズの悪化や自己実現的な投機攻撃、通貨・期間のミスマッチといった通貨危機の理論で説明する |
| IMFと地域金融協力 | 通貨危機の際にIMFが行う融資と政策条件、チェンマイ・イニシアティブなど地域の金融協力の役割を理解する |
| 世界金融危機とユーロ圏危機 | 2008年ごろの世界金融危機や、その後のユーロ圏の債務危機がどのように起き、どう波及したのかを説明できるようにする |
(9) 産業政策と市場規制
ポイント:市場がうまく働かないときの政策と、経済・金融の制度を学ぶパートです。外部性と余剰の計算、競争政策、日本の経済制度、規制の費用・便益分析、会社・情報開示・金融取引の制度と資本市場の関係を押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 市場の限界と外部性 | 公害のような外部性があると市場の結果が非効率になることを理解し、余剰や死荷重(厚生損失)を計算する |
| 市場競争と競争政策 | 独占や寡占による弊害と、独占禁止法などの競争政策が市場の競争を守る役割を学ぶ |
| 不公正な取引方法 | 不当廉売、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売など、公正な競争をゆがめる取引方法とその規制を知る |
| 日本の経済制度 | 日本の雇用慣行や企業と金融機関の関係、企業統治など、日本経済を特徴づける制度を理解する |
| 規制の費用・便益分析 | 新しい制度や規制を導入するとき、得られる便益と社会が負う費用を比べて、導入の是非を評価する |
| 経済制度の影響 | 制度や規制が企業や家計の行動を変え、市場の効率性や資源配分に影響することを考える |
| 株式会社の制度と資本市場 | 会社法やコーポレートガバナンスの仕組みが、株主の権利や資本市場での資金調達にどうかかわるかを学ぶ |
| 情報開示制度と資本市場 | 企業の情報開示(ディスクロージャー)が情報の非対称性を減らし、公正な価格形成を支えることを理解する |
| 金融取引に関する制度 | 金融商品取引法などのルールが、投資家保護や市場の公正さ・安定をどのように確保しているかを知る |
(10) 市場の分析・予測と経済的要因
ポイント:経済を「予測する」ためのパートです。計量経済モデルで景気・成長トレンド・アセットリターン・金融危機を分析し、予測の枠組みと限界、経済指標どうしの関係、為替予測やサーベイの活用を学びます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 景気変動の計量分析 | 回帰分析などの計量経済モデルを使って、景気の変動を数量的に分析する |
| 成長トレンドの計量分析 | 経済成長の長期的なトレンドを計量経済モデルで推定し、潜在成長率などを考える |
| マクロ経済予測と経済指標 | 計量経済モデルにもとづくマクロ経済の予測がどう作られ、どの経済指標が使われるのかを理解する |
| アセット・リターンの予測 | 株式・債券など資産クラスごとの特徴をふまえ、経済変数を使って期待リターンを予測する |
| 金融危機とリスクの計量分析 | 金融危機の兆候や市場リスクの高まりを、データとモデルで分析する考え方を学ぶ |
| 予測の役割とフレームワーク | 資本市場で予測がどんな判断に使われるのか、予測を組み立てる基本的な枠組みを理解する |
| 予測モデルの種類と限界 | 時系列モデルや構造モデルなど予測手法の種類と、構造変化や想定外のショックで予測が外れるといった限界を知る |
| マクロ経済指標の相互関係 | 成長率・物価・金利・失業率・為替などの指標が互いにどう連動しているかを分析する |
| 為替レートの予測 | 購買力平価や金利平価、ファンダメンタルズ分析などの手法を使って為替レートを予測する |
| サーベイを使った分析 | 企業や家計、専門家へのアンケート調査(サーベイ)から、景況感や予想を読み取って分析に生かす |
市場と経済の分析を学ぶときのコツ
1. 1次のモデルを「道具」として思い出す
2次の内容は、1次で学んだIS-LMモデル、国民経済計算、金利平価などの上に積み上がっています。わからない論点が出てきたら、1次のどのモデルを発展させたものかを確認すると、理解がぐっと楽になります。
2. 「政策→経路→結果」の順に説明する練習をする
2次は記述式です。「金融緩和をすると、金利が下がり、資本が流出して、通貨安になる」のように、政策から結果までの経路を自分の言葉で順番に説明する練習をしておくと、答案が書きやすくなります。
3. 危機や政策は「理論」とセットで押さえる
通貨危機や金融危機は、出来事を覚えるだけでなく、どの理論で説明できるのかをセットで整理しましょう。テイラールールや成長会計などの計算も、テキストの例題を自分の手で解いて確かめておくと安心です。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。
よくある質問
Q. 2次の市場と経済の分析は1次の内容を復習してから始めるべきですか?
はい、1次の経済の基礎をざっと見直してから始めるのがおすすめです。2次の大分類は(4)(6)(7)(8)が1次の続きになっているため、IS-LMモデルや国民経済計算、金利平価などを思い出しておくと、2次の内容がスムーズに理解できます。
Q. 計算が必要な論点はどこですか?
たとえば(4)の成長会計、(6)のテイラールールや経済統計による予測、(9)の外部性の余剰計算、(10)の計量経済モデルや為替レートの予測などです。テキストの例題で、式の意味を確かめながら練習しておきましょう。
Q. 学習ポイントとは何ですか?
日本証券アナリスト協会が「CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」として公表している、学習内容の一覧です。出題範囲の公式な目安になるので、テキストを読むときはどの学習ポイントを学んでいるのかを意識しましょう。
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。
