ひとことで言うと

  • 通貨危機とは、固定相場やペッグ制が投機攻撃を受けて維持できなくなり、通貨が急落する現象です。
  • 理論は、ファンダメンタルズ悪化型(第1世代)自己実現型(第2世代)バランスシート・ミスマッチ型(第3世代)の3つに整理されます。
  • 1990年代の欧州・メキシコ・アジアの危機は、それぞれ異なる理論の組み合わせで説明されます。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「1990年代以降の通貨危機」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (8) 国際資本移動と外国為替市場
協会の学習ポイント 1990年代以降発生した通貨危機(欧州通貨危機、メキシコ通貨危機、アジア通貨危機)を通貨危機の理論を踏まえて説明できる。

通貨危機の理論とは

通貨危機とは、固定相場制や特定通貨への連動(ペッグ)を採用している国の通貨が売り浴びせを受け、当局が外貨準備を使い果たしたり金利防衛をあきらめたりして、切り下げや変動相場制への移行を余儀なくされる現象です。短期間に為替レートが大きく下落し、金利急騰や資本流出、景気後退を伴うことが多いのが特徴です。

通貨危機がなぜ起きるのかについては、実際の危機を説明するかたちで理論が発展してきました。一般に「第1世代」「第2世代」「第3世代」と呼ばれる3つのモデルに整理されます。

第1世代モデル(ファンダメンタルズ悪化型)

財政赤字を中央銀行の信用供与(貨幣増発)でまかないながら固定相場を維持しようとすると、外貨準備が少しずつ減っていきます。投資家はいずれ固定相場が維持できなくなると予想するため、外貨準備が尽きる前の時点で一斉に投機攻撃を仕掛け、固定相場は崩壊します。政策と為替制度の矛盾が根本原因で、危機は「予見可能」だと考えるのが特徴です。

第2世代モデル(自己実現型)

ファンダメンタルズがそれほど悪くなくても、市場が「切り下げがある」と予想すると、防衛のための高金利が景気や失業、銀行部門に大きなコストをもたらします。政府が防衛コストと固定相場維持の便益を比較して防衛をあきらめると、予想どおり切り下げが起きます。このように予想が自己実現するため、同じ経済状態でも危機が起きる均衡と起きない均衡がある(複数均衡)と考えます。

第3世代モデル(バランスシート型)

銀行や企業が外貨建て・短期で借り入れ、自国通貨建て・長期で貸し出したり投資したりしていると、通貨のミスマッチ期間のミスマッチ(ダブル・ミスマッチ)が生じます。通貨が下落すると外貨建て債務の負担が膨らみ、資金の借り換えも難しくなるため、通貨危機と銀行危機が同時に起きる「双子の危機」につながります。政府の暗黙の保証によるモラルハザードや過剰な資本流入も重視されます。

整理しておきたいポイント

危機 主な背景 説明に使われる理論
欧州通貨危機(1992〜93年) 欧州為替相場メカニズム(ERM)のもと、東西ドイツ統一後にドイツが高金利を続け、景気の弱い英国・イタリアなどは高金利の維持が重荷に 第2世代(防衛コストが大きく、投機攻撃で防衛を放棄)
メキシコ通貨危機(1994〜95年) ペソの対ドル管理、経常収支赤字、ドル連動型の短期国債(テソボノス)の大量発行と借り換え不安 第1世代的要素に加え、短期外貨建て債務による流動性危機(第3世代的要素)
アジア通貨危機(1997〜98年) 実質的なドル・ペッグのもとで短期外貨資金が大量に流入し、金融機関・企業にダブル・ミスマッチが蓄積 第3世代(バランスシート、双子の危機、伝染)

メキシコ危機では周辺の中南米諸国に動揺が広がる「テキーラ効果」、アジア危機ではタイから韓国・インドネシアなどへ危機が連鎖する伝染(コンテージョン)もキーワードです。

具体例で確認

ある国が自国通貨を1ドル=25単位に固定し、銀行は海外からドル建てで1年以内の短期資金を借りて、国内企業に自国通貨建てで長期の融資をしているとします。

  • 経常収支赤字の拡大をきっかけに、海外投資家が短期資金の借り換えに応じなくなります(期間のミスマッチが表面化)。
  • 当局は外貨準備を使って通貨を支えますが、準備が減るのを見て投機的な売りが強まり、固定相場を放棄します。
  • 通貨が1ドル=50単位に下落すると、ドル建て債務の自国通貨換算額は2倍になり、銀行や企業の自己資本が大きく毀損します(通貨のミスマッチ)。
  • 銀行の貸し渋りで実体経済も悪化し、通貨危機と銀行危機が同時に進みます。これがアジア通貨危機で見られた典型的なパターンです。

試験で問われやすいポイント

  • 第1世代=財政赤字の貨幣化と固定相場の矛盾、第2世代=予想の自己実現と複数均衡、第3世代=ダブル・ミスマッチと双子の危機、という対応関係。
  • 各危機(欧州・メキシコ・アジア)と主な理論の組み合わせ。欧州=第2世代、アジア=第3世代が基本です。
  • ファンダメンタルズが良好でも危機が起きうるのはどのモデルか、という問い方に注意しましょう(第2世代)。
  • 固定相場の防衛手段(外貨準備による介入・利上げ)と、その限界やコストを説明できるようにしておきましょう。
  • 記述式では、ある国の状況(外貨建て短期債務、経常赤字など)を示して、どの理論で説明できるか、なぜ危機が起きたかを書かせる形が考えられます。

要点まとめ

  • 通貨危機は、固定相場やペッグ制が投機攻撃で崩れ、通貨が急落する現象。
  • 第1世代は政策の矛盾、第2世代は自己実現的な予想、第3世代はバランスシートのミスマッチに注目する。
  • 欧州通貨危機は第2世代、アジア通貨危機は第3世代で説明されることが多い。
  • メキシコ危機は経常赤字と短期のドル連動債務による流動性危機の側面が強い。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。