ひとことで言うと

  • 国際金融のトリレンマとは、①為替相場の安定(固定相場)②自由な資本移動③独立した金融政策の3つを同時に実現することはできず、どれか1つを諦める必要があるという考え方です。
  • 為替の安定と金融政策の独立性を両立させたい国は、資本移動を制限(資本規制)することになります。
  • 資本規制は急激な資本流出入を抑える効果がある一方、資源配分の効率低下や抜け道などの副作用もあります。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「トリレンマと資本規制」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (8) 国際資本移動と外国為替市場
協会の学習ポイント 国際金融のトリレンマの視点から資本規制について説明できる。

国際金融のトリレンマとは

国際金融のトリレンマ(不可能な三角形、国際金融の三すくみ)は、マンデル=フレミングモデルから導かれる重要な結論です。資本移動が自由な状態で為替レートを固定すると、国内金利は外国金利と同じにならざるをえません。もし国内金利を独自に下げれば資本が流出して固定相場を維持できなくなるからです。つまり、固定相場と自由な資本移動を選べば、金融政策の独立性は失われます

3つの組み合わせ

各国は3つの目標のうち2つを選ぶことになります。変動相場制を採用する日本や米国は、自由な資本移動と独立した金融政策を選び、為替の安定を諦めています。ユーロ圏の各国は、域内で共通通貨を使い資本移動も自由にする代わりに、各国独自の金融政策を放棄しています(金融政策は欧州中央銀行が担います)。第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制の時代には、多くの国が資本移動を制限することで、固定相場と独自の金融政策を両立させていました。

資本規制とは

資本規制とは、国境を越える資本の出入りを法律や税で制限する政策です。資本流入を抑える規制(短期資金の流入に課税する、一定割合を無利子で中央銀行に預けさせるなど)と、資本流出を抑える規制(海外への送金や外貨の持ち出しを制限するなど)があり、方法としては課税などの価格型と、数量制限や許可制などの数量型に分けられます。1990年代のチリの流入規制や、アジア通貨危機後のマレーシアの流出規制がよく知られた例です。

資本規制の効果と副作用

資本規制には、短期資金の急激な流出入による通貨危機や資産バブルを防ぎ、金融政策の自由度を確保するという効果が期待されます。一方で、資本が最も生産的な使い道に回らなくなる効率性の低下、海外からの投資の減少、規制の抜け道による実効性の低下、規制を運用する行政コストなどの副作用があります。近年は、国際機関でも一定の条件のもとで一時的な資本フロー管理を容認する考え方が示されており、マクロ経済政策やマクロ・プルーデンス政策と組み合わせて使うものと位置づけられています。

整理しておきたいポイント

選ぶ2つ 諦める1つ 代表的な例
自由な資本移動+独立した金融政策 為替相場の安定 変動相場制の日本・米国など
為替相場の安定+自由な資本移動 独立した金融政策 ユーロ圏各国、カレンシーボード制の国
為替相場の安定+独立した金融政策 自由な資本移動(資本規制) ブレトンウッズ体制下の多くの国

具体例で確認

自国通貨をドルに固定し、資本移動も自由な新興国を考えます。国内の景気が悪化したので、中央銀行が景気対策として利下げを行いました。すると、米国より金利が低くなった自国通貨の資産から資本が流出し、自国通貨に売り圧力がかかります。固定相場を守るには、中央銀行が外貨準備を使って自国通貨を買い支える必要がありますが、それはマネーサプライを減らして利下げの効果を打ち消します。外貨準備が尽きれば固定相場は維持できなくなります。

この国が景気対策と為替の安定を両立したいなら、資本流出を制限する資本規制を導入するか、固定相場を諦めて変動相場制に移行するか、どちらかを選ぶ必要があります。これがトリレンマの具体的な意味です。

試験で問われやすいポイント

  • トリレンマの3つの目標と、「2つしか同時に選べない」理由を説明させる問題が典型です。
  • 各国・各時代の制度がどの目標を諦めているか(変動相場制の国、ユーロ圏、ブレトンウッズ体制)を対応づけられるようにしましょう。
  • 固定相場+自由な資本移動のもとで利下げをすると、介入によりマネーサプライが元に戻るという流れを記述式で説明できるようにしましょう。
  • 資本規制の目的・種類(流入規制・流出規制、価格型・数量型)・副作用を整理して押さえましょう。
  • 実際には完全な固定・完全な自由ではなく、中間的な制度(管理フロートや部分的な資本規制)を選ぶ国も多い点に注意しましょう。

要点まとめ

  • 為替の安定・自由な資本移動・独立した金融政策の3つは同時に達成できない
  • 変動相場制の国は為替の安定を、ユーロ圏各国は独自の金融政策を諦めている
  • 為替の安定と金融政策の独立性を両立させるには資本規制が必要になる
  • 資本規制には危機予防の効果と、効率低下・抜け道などの副作用がある

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。