景気変動の計量分析とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・市場と経済の分析
ひとことで言うと
- 景気変動の計量分析とは、GDP成長率や生産・雇用などのデータに回帰分析や時系列モデルを当てはめ、景気の動きを数量的にとらえる手法です。
- 代表的な道具は、説明変数で景気を説明する回帰モデル、過去の自分の値で説明する自己回帰(AR)モデル、複数の変数を同時に扱うVARモデルです。
- 推定された係数から、ショックの持続性や景気が平均に戻る速さを読み取れます。
この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「景気変動の計量分析」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/経済 |
|---|---|
| 大分類 | (10) 市場の分析・予測と経済的要因 |
| 協会の学習ポイント | 計量経済モデルによる景気変動分析ができる。 |
景気変動の計量分析とは
経済は、長期的な成長トレンドのまわりを、拡張と後退を繰り返しながら動いています。このトレンドからの循環的な変動が景気変動です。景気変動の計量分析では、実際のデータに統計モデルを当てはめて、「いまの景気はどの局面か」「ショックはどのくらい続くか」「どの変数が景気を動かしているか」を数字で示します。
トレンドと循環を分ける
分析の出発点は、GDPなどの系列をトレンド(長期の成長)と循環(景気の波)に分けることです。移動平均やHPフィルターなどでトレンドを取り出し、実績との差をGDPギャップ(需給ギャップ)として景気の強さの目安にします。
回帰モデルで景気を説明する
GDP成長率を、金利・為替・海外景気・財政支出などの説明変数で説明する回帰モデルを推定すると、各変数が景気に与える影響の大きさと向きがわかります。係数のt値で統計的に有意かを確認し、決定係数(R2)で当てはまりを評価します。
時系列モデルで景気の「くせ」をとらえる
景気には、良い状態・悪い状態がしばらく続く持続性(自己相関)があります。これを表すのがARモデルです。さらに、GDP・物価・金利など複数の変数が互いに影響し合う関係はVARモデルで表し、あるショック(たとえば金利の引き上げ)が各変数にどう波及するかをインパルス応答として分析します。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| yt | t期の景気指標(GDP成長率など) |
| xt | 説明変数(金利・海外景気など) |
| φ | 自己回帰係数(持続性の強さ) |
| εt | 誤差項(モデルで説明できないショック) |
具体例で確認
四半期の実質GDP成長率(年率、%)について、次のAR(1)モデルが推定されたとします。
yt = 0.3 + 0.7 yt−1
- 長期平均:0.3 ÷ (1 − 0.7) = 1.0%。景気はこの水準に向かって戻っていきます。
- 足元の成長率が −2.0%のとき、1期先の予測:0.3 + 0.7 × (−2.0) = −1.1%
- 2期先の予測:0.3 + 0.7 × (−1.1) = −0.47%
長期平均からの乖離は、−3.0 → −2.1 → −1.47 と毎期0.7倍になっています。φが大きいほど乖離は縮みにくく、不況が長引きやすいことを意味します。乖離が半分になるまでの期間(半減期)は ln0.5 ÷ ln0.7 ≒ 1.9期です。
試験で問われやすいポイント
- 推定されたモデルに数値を代入して1期先・2期先の予測値を求める計算と、その過程を示す問題に備えましょう。
- AR(1)の長期平均 c ÷ (1 − φ)と、φの大きさが景気の持続性を表すという解釈が問われやすいです。
- 係数のt値による有意性の判断や決定係数の意味を、推定結果の表から読み取らせる形に注意しましょう。
- 相関があっても因果とは限らないこと、見せかけの回帰(トレンドを持つ変数同士の回帰)の危険性も記述で問われやすい論点です。
- GDPギャップやトレンド・循環の分解が、景気判断にどう使われるかを説明できるようにしておきましょう。
要点まとめ
- 景気変動の計量分析は、トレンドと循環を分け、景気の波を回帰・時系列モデルで数量化する
- AR(1)では φ が持続性を表し、長期平均は c ÷ (1 − φ)
- 複数変数の相互作用はVARモデル、ショックの波及はインパルス応答で見る
- 推定結果はt値・決定係数で評価し、見せかけの回帰に注意する
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
