ひとことで言うと

  • 金融緩和は金利を下げて資本流出を促すため、基本的に自国通貨安の要因になります。長期的にも物価上昇を通じて自国通貨安につながります。
  • 財政拡大は、資本移動が自由なら金利上昇と資本流入で自国通貨高、資本移動が乏しい場合は経常収支の悪化で自国通貨安と、前提で結論が変わります。
  • 短期の為替は金利差と将来の為替予想で決まるため、政策が予想をどう変えるかも重要です。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「政策と為替レート」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (8) 国際資本移動と外国為替市場
協会の学習ポイント 金融政策と財政政策が、為替レートに及ぼす影響について説明できる。

金融政策・財政政策と為替レートとは

為替レートは、ある通貨を持ちたい人と手放したい人のバランスで決まります。現代の外国為替市場では、貿易取引よりも金融資産の取引(資本移動)の規模がはるかに大きいため、短期的には「どちらの国の資産を持つと有利か」が為替を動かす主役になります。金融政策や財政政策は、金利や将来の物価・為替の予想を通じて、この判断に影響を与えます。

短期:金利平価の考え方

資本移動が自由で投資家がリスク中立的なら、自国資産と外国資産の期待収益率は等しくなります(カバーなし金利平価)。自国の金利が外国より低いときは、その分だけ自国通貨の将来の増価が予想されていないと釣り合いません。将来の予想為替レートが変わらないまま自国の金利が下がると、現在の自国通貨が売られて自国通貨安になります。

金融政策の効果

金融緩和は、短期的には金利低下を通じて自国通貨安をもたらします。さらに、緩和が続くと将来の物価が上がると予想されるため、購買力平価の考え方から将来の為替予想も自国通貨安の方向へ動き、現在の自国通貨の価値をさらに押し下げます。物価が短期的には硬直的であることから、為替レートが一時的に長期均衡を超えて大きく動き、その後戻っていく現象をオーバーシューティング(ドーンブッシュ・モデル)と呼びます。金融引締めでは、これらがすべて逆方向(自国通貨高)に働きます。

財政政策の効果

財政拡大の為替への影響は、資本移動の度合いによって変わります。資本移動が自由な場合は、国内金利の上昇で資本が流入し自国通貨高になります(マンデル=フレミングモデルの結論)。一方、資本移動が乏しい場合は、所得の増加で輸入が増えて経常収支が悪化し、自国通貨安の要因になります。また、財政赤字の拡大で政府債務の持続可能性が疑われると、リスク・プレミアムの上昇やインフレ予想を通じて自国通貨安につながることもあります。

押さえておきたい公式

i = i* + (Se − S) ÷ Sカバーなし金利平価(S:1ドル=S円の直物レート、Se:1年後の予想レート)
S = Se ÷ (1 + i − i*上の式を直物レートについて解いた形。iが下がるとSは上昇(円安)
記号 意味
i、i* 自国(日本)の金利、外国(米国)の金利
S 現在の為替レート(1ドル=S円)
Se 1年後の予想為替レート

具体例で確認

日本の金利1%、米国の金利4%、1年後の予想為替レートが1ドル=150円とします。

  1. 当初の直物レート:S = 150 ÷(1 + 0.01 − 0.04)= 150 ÷ 0.97 ≒ 154.64円
  2. 日銀が金利を0%に引き下げ、予想は変わらない場合:S = 150 ÷ 0.96 ≒ 156.25円(円安)
  3. 緩和で将来の物価上昇が予想され、1年後の予想が153円に変わった場合:S = 153 ÷ 0.96 ≒ 159.38円(さらに円安)

金利の低下という直接の効果に、将来予想の変化という効果が加わることで、為替はより大きく動きます。政策の発表そのものより、それが市場の予想をどれだけ変えたかが為替の動きを左右する点に注意しましょう。

試験で問われやすいポイント

  • 金融緩和・引締めが金利→資本移動→為替を通じて自国通貨安・高をもたらす流れが基本として問われます。
  • 財政拡大は資本移動の度合いによって通貨高にも通貨安にもなる点がひっかけになりやすいので、前提条件を必ず確認しましょう。
  • カバーなし金利平価を使って、金利変更後の直物レートを計算する問題に備えましょう。記述式では計算過程を示すことが求められます。
  • オーバーシューティングが起こる理由(物価の硬直性と為替の伸縮性)を説明できるようにしておきましょう。
  • 長期では購買力平価により、金融緩和による物価上昇が自国通貨安につながるという関係も押さえましょう。

要点まとめ

  • 金融緩和は短期・長期とも自国通貨安の要因になる
  • 財政拡大は資本移動が自由なら通貨高、乏しければ通貨安になりやすい
  • 短期の為替は金利差と将来の為替予想で決まる(金利平価)
  • 物価の硬直性から、為替は一時的に長期均衡を超えて動く(オーバーシューティング)

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