ひとことで言うと

  • ポートフォリオ・バランス・モデルは、投資家が自国通貨建て資産と外貨建て資産を分散して保有し、両者が完全には代替的でないと考える為替レート決定モデルです。
  • 外貨建て資産には為替リスクがあるため、投資家はその分のリスク・プレミアムを要求し、金利平価は「金利差+リスク・プレミアム」の形で成り立ちます。
  • 外貨建て資産の供給量や投資家のリスク回避度が変わるとリスク・プレミアムが変わり、金利が同じでも為替レートが動く点がポイントです。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「ポートフォリオ・バランス・モデル」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (8) 国際資本移動と外国為替市場
協会の学習ポイント ポートフォリオ・バランス・モデルに基づいて為替リスクについて説明できる。

ポートフォリオ・バランス・モデルとは

カバーなし金利平価(UIP)では、投資家はリスク中立的で、自国資産と外国資産は完全代替だと仮定します。このため、期待収益率が同じであれば、どちらの通貨の資産をどれだけ持っても構わないことになります。しかし現実には、外貨建て資産の円換算の価値は為替レートの変動で上下するため、リスクを嫌う投資家は、外貨建て資産に為替リスクに見合う上乗せ(リスク・プレミアム)を求めます。この考え方をもとに為替レートを説明するのがポートフォリオ・バランス・モデル(ポートフォリオ・バランス・アプローチ)です。

為替レートの決まり方

投資家は、資産全体(富)を自国通貨建て資産・外貨建て資産・貨幣などに配分します。その配分は、各資産の期待収益率とリスクによって決まります。市場全体では、投資家が「持ちたい」外貨建て資産の量と、実際に存在する(供給される)外貨建て資産の量が一致するように、為替レートとリスク・プレミアムが調整されます。

リスク・プレミアムを動かす要因

民間が保有しなければならない外貨建て資産の量が増えると、投資家はそれを持つ見返りとしてより高いリスク・プレミアムを求めるため、外貨が割安(自国通貨高)の方向に調整されます。たとえば、外国政府の財政赤字が拡大して外国債券の発行が増えた場合や、自国通貨買い・外貨売りの不胎化介入で民間の外貨資産が増えた場合です。また、為替の変動性(ボラティリティ)が高まったり、投資家のリスク回避度が高まったりしても、リスク・プレミアムは上昇します。こうした要因によって、金利差が変わらなくても為替レートが動きうるというのが、このモデルの重要な含意です。

モデルの意義

このモデルは、不胎化介入がなぜ為替に影響しうるのかを説明する理論的な根拠になります(資産が完全代替なら、不胎化介入は為替に影響しません)。また、経常収支の黒字が続くと自国の対外資産が積み上がり、その保有に伴うリスクが為替に影響するという、経常収支と為替の長期的な関係を考える枠組みにもなります。実証的には、リスク・プレミアムを直接観察するのが難しいため、効果の大きさについては見方が分かれています。

押さえておきたい公式

i* + (Se − S) ÷ S = i + ρ外貨建て資産の期待収益率(左辺)が、自国資産の金利+リスク・プレミアムに等しい
S = Se ÷ (1 + i − i* + ρ)直物レートについて解いた形。ρが上がるとSは低下(外貨安・自国通貨高)
ρ = f(外貨建て資産の供給量, 為替の変動性, リスク回避度)いずれが大きくなってもρは上昇する
記号 意味
i、i* 自国(日本)の金利、外国(米国)の金利
S、Se 現在の為替レート、1年後の予想為替レート(1ドル=S円)
ρ 外貨建て資産に求められるリスク・プレミアム(ρ=0ならカバーなし金利平価)

具体例で確認

日本の金利1%、米国の金利4%、1年後の予想為替レートが1ドル=150円とします。

  1. リスク・プレミアムがない場合(UIP):S = 150 ÷(1 + 0.01 − 0.04)= 150 ÷ 0.97 ≒ 154.64円
  2. ドル資産に1.5%のリスク・プレミアムが求められる場合:S = 150 ÷(1 − 0.03 + 0.015)= 150 ÷ 0.985 ≒ 152.28円
  3. 米国債の発行が増えるなどしてプレミアムが2.5%に上昇した場合:S = 150 ÷ 0.995 ≒ 150.75円

金利も将来予想も変わっていないのに、リスク・プレミアムが上がるだけで現在のドルは安く(円は高く)なります。ドルを持つリスクに見合うだけ、将来のドル高(期待収益)を大きくする必要があるため、現在のドルの価格が下がるのです。

試験で問われやすいポイント

  • カバーなし金利平価との違いは、資産が完全代替かどうか(リスク・プレミアムの有無)である点が基本として問われます。
  • 外貨建て資産の供給増、為替変動性の上昇、リスク回避度の上昇がリスク・プレミアムを上げ、外貨安・自国通貨高につながる方向を押さえましょう。
  • リスク・プレミアムを含む金利平価式から直物レートを計算する問題に備え、記述式では計算過程を示せるようにしましょう。
  • 不胎化介入の効果をこのモデルで説明させる問題は典型的です(完全代替なら効果がない点も重要です)。
  • リスク・プレミアムの符号をどちらの資産に付けるかで式の形が変わるため、定義を確認してから計算しましょう。

要点まとめ

  • 自国資産と外国資産は完全代替ではなく、外貨資産にはリスク・プレミアムが求められる
  • 金利平価は「金利差+リスク・プレミアム」の形で成り立つ
  • 外貨資産の供給増やリスク回避度の上昇はプレミアムを上げ、外貨安につながる
  • 不胎化介入が為替に影響しうる理論的な根拠になる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。