経済制度とインセンティブとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・市場と経済の分析
ひとことで言うと
- 経済制度とは、法律・規制・慣行など、人々の経済行動を方向づける「ゲームのルール」です。
- 制度は企業や家計のインセンティブ(誘因)を変えることで、投資・雇用・取引の量や資源配分に影響します。
- 意図した効果だけでなく、モラルハザードや価格規制による品不足など、意図しない副作用が生じることもあります。
この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「経済制度の影響」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/経済 |
|---|---|
| 大分類 | (9) 産業政策と市場規制 |
| 協会の学習ポイント | 経済制度が及ぼす影響について説明できる。 |
経済制度とインセンティブとは
市場がうまく働くためには、財産権が守られ、契約が確実に履行されるといった制度の土台が必要です。経済学では、制度を人々の相互作用を形づくる「ゲームのルール」ととらえ、どのようなルールのもとで人々がどう行動するかを分析します。
制度が効率性を高める経路
財産権の保護が確かであれば、人々は将来の収益を見込んで投資しやすくなります。契約や情報開示の制度が整えば、取引相手を探したり監視したりする取引費用が下がり、取引が活発になります。コースの定理は、財産権が明確で取引費用が十分に小さければ、当事者の交渉で効率的な資源配分が実現することを示しており、逆にいえば、取引費用が大きい現実の世界では制度の設計が結果を左右することを意味します。
制度がもたらす副作用
一方で、制度は意図しない行動の変化も引き起こします。預金保険のように損失を肩代わりする仕組みがあると、保護される側がリスクを取りすぎるモラルハザードが生じます。価格の上限規制は品不足や質の低下を、参入規制は既存企業の既得権益と非効率を生みやすくなります。また、規制当局が規制される業界の利益に取り込まれてしまう規制の虜(キャプチャー)や、政府の介入がかえって効率を損なう政府の失敗も指摘されています。
さらに、制度は一度定着すると変えにくく、過去の選択が現在の制度を縛る経路依存性があります。制度の評価では、目的とする効果だけでなく、人々の行動がどう変わるかまで含めて考えることが大切です。
整理しておきたいポイント
| 制度・規制 | ねらい | 起こりうる副作用 |
|---|---|---|
| 預金保険・公的救済 | 取り付け騒ぎの防止、金融システムの安定 | 銀行・預金者のモラルハザード |
| 価格の上限規制(家賃規制など) | 低所得者の負担軽減 | 超過需要(品不足)、質の低下、死荷重 |
| 最低賃金 | 低賃金労働者の所得向上 | 水準が高すぎると雇用の減少 |
| 参入規制・許認可 | 安全や品質の確保 | 競争の制限、既得権益、規制の虜 |
| 解雇規制 | 雇用の安定 | 企業が正社員の採用に慎重になる |
具体例で確認
ある地域の賃貸住宅市場で、需要曲線が P = 100 − Q、供給曲線が P = 20 + Q(Pは家賃、Qは戸数)だとします。規制がなければ、均衡は Q = 40、P = 60 です。
- 家賃の上限を 50 に規制すると、供給量は 50 = 20 + Q より 30、需要量は 50 = 100 − Q より 50 となり、20戸の品不足が生じます。
- 実際に取引されるのは30戸だけです。30戸目に対する借り手の評価(需要価格)は70、貸し手の限界費用は50なので、Q = 30〜40 の取引が失われたことによる死荷重は 1/2 × 10 × (70 − 50) = 100 です。
- 借りられた人は安い家賃の恩恵を受けますが、借りられない人が出て、順番待ちや物件の質の低下、非公式な上乗せ料金などの副作用も起きやすくなります。制度が人々の行動を変え、資源配分に影響する典型例です。
試験で問われやすいポイント
- 制度はインセンティブを通じて行動を変える、という基本的な考え方と、財産権・取引費用・コースの定理の関係。
- モラルハザード、規制の虜、政府の失敗、経路依存性などのキーワードの意味。
- 価格の上限規制・下限規制による超過需要・超過供給と死荷重の計算。上限規制は均衡価格より低いときのみ効果を持つ点に注意しましょう。
- 制度の評価では、意図した効果と意図しない副作用の両面を考えること。
- 記述式では、ある制度の導入が企業や家計の行動をどう変え、市場にどんな影響を与えるかを説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- 経済制度は人々の経済行動を方向づけるルールで、インセンティブを通じて資源配分に影響する。
- 財産権の保護や取引費用の低下は、投資や取引を促して効率性を高める。
- モラルハザードや品不足、規制の虜など、意図しない副作用にも注意が必要。
- 制度の評価では、行動の変化まで含めて費用と便益を考える。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
