日本型経済システムとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・市場と経済の分析
ひとことで言うと
- 日本の経済制度は、長期雇用・年功賃金・企業別労働組合という雇用慣行と、メインバンク制・株式持ち合いという企業と金融の関係に特徴がありました。
- これらの制度は互いに支え合う制度的補完性を持ち、高度成長期には経済的な合理性がありました。
- 1990年代以降は、持ち合いの解消やコーポレートガバナンス改革などにより、株主や資本市場の役割が強まっています。
この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「日本の経済制度」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/経済 |
|---|---|
| 大分類 | (9) 産業政策と市場規制 |
| 協会の学習ポイント | 日本の経済制度について説明できる。 |
日本型経済システムとは
経済制度とは、市場取引や企業の行動を方向づける法律、慣行、組織のルールのことです。戦後の日本では、欧米とは異なる独特の経済制度が発達し、日本型経済システムと呼ばれてきました。
雇用システム
長期雇用(終身雇用)、勤続年数に応じて賃金が上がる年功賃金、企業ごとに組織される企業別労働組合が代表的な特徴です。長く勤めることを前提にすると、企業も従業員も、その企業でしか役立たない技能(企業特殊的人的資本)に投資しやすくなります。年功賃金は、若いうちは生産性より低い賃金、年をとってからは高い賃金を受け取る「後払い」の仕組みとして、離職を抑え、努力を引き出す役割を持つと説明されます。
企業と金融の関係
企業は銀行借入による間接金融への依存度が高く、最大の融資銀行であるメインバンクが、株主として、また情報を持つ貸し手として企業を継続的に監視していました。業績が悪化すると、メインバンクが経営に介入して再建を支援する仕組み(状態依存型ガバナンス)が働いたとされます。また、企業グループや取引先・銀行との株式持ち合いによって安定株主が形成され、敵対的買収の脅威が小さく、経営者は長期的な視点で経営しやすい一方、株主による規律は働きにくい面がありました。
制度的補完性と変化
長期雇用は内部昇進の経営者と、内部昇進の経営者は安定株主と、安定株主は長期的な銀行取引と、というように、各制度は互いの効果を高め合っていました(制度的補完性)。そのため、一つの制度だけを変えるのは難しく、変化は連鎖的に起こりやすいといえます。1990年代以降、不良債権問題による銀行の弱体化、持ち合い株式の売却、海外投資家の増加、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの導入、非正規雇用の増加や職務を重視した雇用の広がりなどにより、システムは大きく変わりつつあります。
整理しておきたいポイント
| 制度 | 期待された機能 | 弱点・変化 |
|---|---|---|
| 長期雇用・年功賃金 | 企業特殊的な技能の蓄積、離職の抑制 | 成長鈍化で人件費負担が増加、労働移動が起きにくい |
| 企業別労働組合 | 協調的な労使関係、情報共有 | 非正規雇用との格差 |
| メインバンク制 | 情報の非対称性の緩和、経営危機時の支援 | 不良債権問題で機能が低下 |
| 株式持ち合い | 安定株主の形成、長期的経営 | 株主による規律の弱さ、資本効率の低さ。持ち合い解消が進む |
具体例で確認
ある製造業の会社を例に、制度のつながりを考えます。
- 従業員は定年まで勤めるつもりで、社内の生産ラインに特化した技能を身につけます。会社も長期間の教育投資を回収できるため、研修に力を入れます。
- 経営者は社内の昇進で選ばれ、取引銀行や取引先が安定株主として株式を保有しているため、短期の株価よりも雇用の維持や長期的な成長を重視します。
- 業績が悪化すると、メインバンクが追加融資や人材派遣で再建を支えます。
- しかし、海外投資家の比率が高まり、持ち合いが解消されると、資本効率(ROEなど)の改善を求める圧力が強まり、事業の再編や雇用のあり方の見直しが迫られます。制度の一部の変化が、他の制度の変化を促す例です。
試験で問われやすいポイント
- 長期雇用・年功賃金・企業別労働組合、メインバンク制、株式持ち合いの内容と、それぞれの経済的な合理性(企業特殊的人的資本、情報の非対称性の緩和など)。
- 制度的補完性の意味と、それが制度改革を難しくする理由。
- メインバンクによる状態依存型ガバナンスと、株主による市場のガバナンスの違い。
- 1990年代以降の変化(持ち合い解消、海外投資家の増加、ガバナンス改革、雇用形態の多様化)の方向性。
- 記述式では、ある制度の利点と問題点、変化の背景を筋道立てて説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- 日本型経済システムは、独特の雇用慣行と、銀行中心の企業金融・株式持ち合いに特徴があった。
- 各制度は企業特殊的な技能の蓄積や情報の非対称性の緩和などの合理性を持っていた。
- 制度どうしが支え合う制度的補完性があり、変化は連鎖的に起こりやすい。
- 近年は資本市場と株主の役割が強まり、雇用のあり方も多様化している。
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
