ひとことで言うと

  • 不公正な取引方法とは、独占禁止法が禁止する、公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)のある取引行為です。
  • 不当廉売、差別対価、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売、排他条件付取引などが代表例です。
  • 市場全体の競争を大きく損なう前の段階でも規制される点が、私的独占やカルテルとの違いです。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「不公正な取引方法」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (9) 産業政策と市場規制
協会の学習ポイント 市場取引における不公正な取引方法について説明できる。

不公正な取引方法とは

独占禁止法は、私的独占や不当な取引制限(カルテル)に加えて、「不公正な取引方法」を禁止しています。私的独占やカルテルが「競争の実質的制限」、つまり市場の競争がすでに大きく損なわれている状態を問題にするのに対し、不公正な取引方法は、競争を阻害するおそれがある段階の行為を対象にします。いわば競争秩序を守るための予防的な規制です。

不公正な取引方法には、法律で直接定められた類型(共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用)と、公正取引委員会の告示(一般指定)で定められた類型(抱き合わせ販売、排他条件付取引、拘束条件付取引、ぎまん的顧客誘引など)があります。法律で定められた類型の一部には課徴金が課されることもあります。

公正競争阻害性の3つの観点

公正競争阻害性は、一般に次の3つの観点から判断されると整理されます。

  • 自由競争の減殺:競争者を排除したり、価格競争を回避したりする(不当廉売、再販売価格の拘束、排他条件付取引など)。
  • 競争手段の不公正さ:品質や価格ではなく、誤解を招く表示や過大な景品で顧客を奪う(ぎまん的顧客誘引など)。
  • 自由競争基盤の侵害:取引上の地位が強い者が、相手の自由な判断を妨げて不当な不利益を与える(優越的地位の濫用)。

経済学的には、例えば不当廉売(略奪的価格設定)は、競争者を市場から退出させた後に価格を引き上げて損失を取り戻すことを狙う行為と考えられます。ただし、安売りそのものは消費者の利益になるため、「費用を下回る価格かどうか」「競争者を排除する効果があるか」を慎重に見極める必要があります。

整理しておきたいポイント

行為類型 内容 問題となる理由
不当廉売 正当な理由なく費用を大きく下回る価格で継続して販売する 効率的な競争者まで排除するおそれ
再販売価格の拘束 メーカーが小売店の販売価格を指示・拘束する 小売段階の価格競争がなくなる
優越的地位の濫用 取引上優越した立場を利用して、協賛金の強要や不当な返品などを行う 取引相手の自由な判断を奪い、不当な不利益を与える
抱き合わせ販売 人気商品の購入条件として、別の商品も買わせる 従たる商品の市場で競争者を排除するおそれ
排他条件付取引 競争者と取引しないことを条件に取引する 競争者の販路を閉ざすおそれ

なお、金融商品取引法にも「不公正取引」の規制(インサイダー取引、相場操縦、風説の流布など)があります。こちらは証券市場の公正な価格形成と投資家保護を目的とするもので、独占禁止法の不公正な取引方法とは別の制度です。

具体例で確認

シェアの大きい家電メーカーX社が、系列の販売店に対して「当社の指定価格より安く売った店には今後の出荷を減らす」と通知したとします。

  • 販売店どうしの値引き競争がなくなり、消費者はどの店でも同じ高い価格で買うことになります。これは再販売価格の拘束に当たる典型例で、原則として違法とされます。
  • 一方、X社が「希望小売価格」を参考として示すだけで、販売店が自由に価格を決められるのであれば、通常は問題になりません。
  • また、大規模な小売チェーンが納入業者に対して、正当な理由なく協賛金の負担や従業員の派遣を一方的に求める場合は、優越的地位の濫用が問題になります。

試験で問われやすいポイント

  • 「不公正な取引方法」は競争を阻害する「おそれ」の段階で規制され、私的独占・カルテルの「競争の実質的制限」とは要件が異なること。
  • 代表的な行為類型(不当廉売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売、排他条件付取引)の内容と具体例の対応。
  • 公正競争阻害性の3つの観点(自由競争の減殺、競争手段の不公正さ、自由競争基盤の侵害)。
  • 独占禁止法の「不公正な取引方法」と、金融商品取引法の「不公正取引」(インサイダー取引・相場操縦など)を混同しないようにしましょう。
  • 記述式では、ある取引慣行を示して、どの類型に当たるか、なぜ経済的に問題かを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 不公正な取引方法は、公正な競争を阻害するおそれのある取引行為で、独占禁止法が禁止している。
  • 法律で定められた類型と、公正取引委員会の一般指定による類型がある。
  • 安売りや取引条件の設定そのものではなく、競争を排除・回避する効果があるかがポイント。
  • 金融商品取引法の不公正取引とは目的も対象も異なる。

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