ひとことで言うと

  • 複数の確率変数をベクトルXにまとめると、期待値はベクトルμ、分散と共分散は分散共分散行列Σで表せます。
  • ウェイトwのポートフォリオの期待リターンはw’μ、分散は2次形式 w’Σwという短い式で書けます。
  • 銘柄数がいくつになっても同じ式で表せるのが、ベクトル表記の最大のメリットです。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「期待値・分散の2次形式表記」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (10) ベクトルと行列
協会の学習ポイント 複数の確率変数の期待値、分散、共分散についてベクトルの2次形式で表記できる。

期待値・分散の2次形式表記とは

n銘柄のリターンを R1, …, Rn とし、これを列ベクトル R = (R1, …, Rn)’ にまとめます。各銘柄の期待リターンを並べたものが期待値ベクトルμ、i行j列に RiとRjの共分散σij(対角成分は分散σi2)を並べたものが分散共分散行列Σです。Σは σij = σji なので対称行列になります。

ポートフォリオの期待値と分散

投資比率のベクトルを w = (w1, …, wn)’ とすると、ポートフォリオのリターンは Rp = w’R です。期待値の線形性から E[Rp] = w’μ、分散は Var(Rp) = w’Σw となります。w’Σw のように、ベクトルで行列を両側から挟んだ形を2次形式といいます。

2次形式を展開すると ΣΣwiwjσij(すべてのi、jの組み合わせの和)となり、2資産なら w12σ12 + w22σ22 + 2w1w2σ12 という、1次試験でもおなじみの式に一致します。共分散の項が「2倍」になるのは、σ12とσ21の2か所に同じ値があるためです。

2つのポートフォリオの共分散

ウェイトがwとvの2つのポートフォリオの共分散は Cov(w’R, v’R) = w’Σv と表せます。分散は、この式でv = wとした特別な場合です。また、分散はマイナスにならないので、どんなwに対しても w’Σw ≧ 0(Σは半正定値)が成り立ちます。

押さえておきたい公式

E[w’R] = w’μポートフォリオの期待リターン(内積)
Var(w’R) = w’Σw = ΣiΣj wiwjσijポートフォリオの分散(2次形式)
Cov(w’R, v’R) = w’Σv2つのポートフォリオの共分散
記号 意味
R、μ リターンのベクトルと期待値ベクトル
Σ 分散共分散行列(対称行列)
σij i銘柄とj銘柄の共分散(i = j なら分散)
w、v ウェイト(投資比率)のベクトル

具体例で確認

資産1:期待リターン8%、標準偏差20%。資産2:期待リターン4%、標準偏差10%。相関係数0.5。ウェイト w = (0.6, 0.4)’ とします。

  1. 共分散:σ12 = 0.5 × 0.20 × 0.10 = 0.01。Σ = [[0.04, 0.01], [0.01, 0.01]]
  2. 期待リターン:w’μ = 0.6 × 8% + 0.4 × 4% = 6.4%
  3. Σw = (0.04×0.6 + 0.01×0.4, 0.01×0.6 + 0.01×0.4)’ = (0.028, 0.010)’
  4. 分散:w’Σw = 0.6×0.028 + 0.4×0.010 = 0.0208(展開形 0.36×0.04 + 0.16×0.01 + 2×0.24×0.01 = 0.0208 と一致)
  5. 標準偏差:√0.0208 ≒ 14.42%

別のポートフォリオ v = (0.2, 0.8)’ との共分散は、Σv = (0.016, 0.010)’ より w’Σv = 0.6×0.016 + 0.4×0.010 = 0.0136 です。

試験で問われやすいポイント

  • ポートフォリオの分散をw’Σwと表記できるか、また展開して2資産の公式に一致することを示せるかが問われます。
  • Σの対角成分が分散、非対角成分が共分散であり、相関係数ではない点に注意しましょう(σij = ρijσiσjに直す)。
  • w’Σw(スカラー)と ww’(行列)のように、転置の位置でサイズが変わることがひっかけになりやすいです。
  • 2つのポートフォリオの共分散 w’Σv は、ベータの計算(市場ポートフォリオとの共分散)にもつながります。
  • 記述式では、Σの作成→Σwの計算→w'(Σw) という計算の順序を示すと、ミスを防ぎつつ採点者にも伝わりやすくなります。

要点まとめ

  • 期待値はベクトルμ、分散・共分散は対称行列Σにまとめられる
  • ポートフォリオの期待リターンはw’μ、分散は2次形式w’Σw
  • 2つのポートフォリオの共分散はw’Σv
  • Σの非対角成分は共分散(相関係数×標準偏差×標準偏差)

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。