ひとことで言うと

  • 重回帰の仮説検定には、個々の係数が0かどうかを調べるt検定と、すべての係数が同時に0かどうかを調べるF検定があります。
  • t値は係数の推定値 ÷ 標準誤差、自由度はn − k − 1です。
  • F値はR2から計算でき、モデル全体に説明力があるかを判断します。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「重回帰の仮説検定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (11) 回帰分析(重回帰)
協会の学習ポイント 重回帰分析における仮説検定について理解する。

重回帰の仮説検定とは

推定した係数がたまたま0でない値になっただけなのか、それとも本当にYに影響しているのかを、統計的に判断するのが仮説検定です。誤差項が正規分布に従うなどの仮定のもとで、検定統計量が既知の分布(t分布・F分布)に従うことを利用します。

個々の係数のt検定

帰無仮説 H0:βj = 0、対立仮説 H1:βj ≠ 0 とし、t = bj ÷ SE(bj) を計算します。このt値は自由度 n − k − 1 のt分布に従うので、|t| が臨界値(両側5%なら概ね2前後)を超えれば H0 を棄却し、「Xjは有意にYを説明している」と判断します。p値が有意水準より小さいかどうかで判断しても同じ結論になります。

0以外の値との比較もできます。たとえば「ベータが1かどうか」を調べるなら、t = (bj − 1) ÷ SE(bj) とします。

モデル全体のF検定

帰無仮説 H0:β1 = β2 = … = βk = 0(定数項以外すべて0)、対立仮説 H1:少なくとも1つは0でない、とし、F = (SSR ÷ k) ÷ (SSE ÷ (n − k − 1)) を計算します。Fは自由度 (k, n − k − 1) のF分布に従い、臨界値を超えれば「モデル全体として説明力がある」と判断します。同じ式は R2 を使って書き直すこともできます。

t検定とF検定の関係

個々のt検定ではどれも有意でないのに、F検定では有意になることがあります。これは説明変数どうしの相関が強い多重共線性の典型的なサインです。個々の影響は切り分けにくくても、全体としては説明力がある状態です。

押さえておきたい公式

t = (bj − βj0) ÷ SE(bj)  自由度 n − k − 1個々の係数のt検定(通常は βj0 = 0)
F = (SSR ÷ k) ÷ (SSE ÷ (n − k − 1)) = (R2 ÷ k) ÷ ((1 − R2) ÷ (n − k − 1))モデル全体のF検定。自由度 (k, n − k − 1)
記号 意味
bj、SE(bj) 係数の推定値とその標準誤差
n、k 観測数、説明変数の数(定数項を除く)
SSR、SSE 回帰変動、残差変動

具体例で確認

n = 30、k = 3 の重回帰で、R2 = 0.60(SSR = 120、SSE = 80)となりました。係数の推定値と標準誤差は、X1が b1 = 0.8(SE 0.25)、X2が b2 = 0.3(SE 0.20)です。自由度26のt分布の両側5%臨界値は約2.056、自由度(3, 26)のF分布の上側5%臨界値は約2.98です。

  1. X1のt値:0.8 ÷ 0.25 = 3.2 > 2.056 → 5%水準で有意
  2. X2のt値:0.3 ÷ 0.20 = 1.5 < 2.056 → 5%水準で有意でない
  3. F値:(120 ÷ 3) ÷ (80 ÷ 26) = 40 ÷ 3.077 ≒ 13.0(R2から (0.6 ÷ 3) ÷ (0.4 ÷ 26) = 13.0 でも同じ)
  4. 13.0 > 2.98 → モデル全体として有意な説明力がある

試験で問われやすいポイント

  • t値 = 推定値 ÷ 標準誤差の計算と、臨界値との比較による判断が定番です。
  • t検定の自由度は n − k − 1、F検定の自由度は (k, n − k − 1) です。定数項の分の「−1」を忘れないようにしましょう。
  • R2からF値を計算する式は、表に残差変動が示されていない問題で役立ちます。
  • 「有意でない = 影響がないと証明された」ではなく、0と区別できないだけという解釈の違いに注意しましょう。
  • 記述式では、帰無仮説・対立仮説・検定統計量・臨界値・結論の順に書くと、論理が明確になります。

要点まとめ

  • 個々の係数はt検定(t=b÷SE、自由度n−k−1)
  • モデル全体はF検定(自由度k、n−k−1)で、R2からも計算できる
  • |t|や F が臨界値を超えれば帰無仮説を棄却する
  • t検定は有意でないのにF検定は有意なら、多重共線性を疑う

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。