ひとことで言うと

  • 重回帰の係数は、残差の二乗和を最小にする最小二乗法(OLS)で推定します。
  • モデルの当てはまりは決定係数R2で測りますが、R2は説明変数を増やすだけで上がるため、自由度修正済み決定係数もあわせて見ます。
  • 残差の標準偏差(回帰の標準誤差)や、係数の符号・大きさの妥当性もモデル評価の材料です。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「推定とモデルの評価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (11) 回帰分析(重回帰)
協会の学習ポイント 重回帰モデルを推定しそのモデルについて評価できる。

重回帰の推定と決定係数とは

最小二乗法による推定

観測値Yiと、推定した回帰式による理論値Ŷiの差 ei = Yi − Ŷi残差といいます。最小二乗法は、この残差の二乗和 Σei2 が最も小さくなるように係数を選ぶ方法です。行列で書くと、推定量は b = (X’X)−1X’y になります。標準的な仮定のもとで、OLS推定量は線形不偏推定量の中で分散が最小(BLUE)になることが知られています(ガウス=マルコフの定理)。

変動の分解と決定係数

Yの平均からのばらつき全体(総変動 SST)は、回帰式で説明できる部分(回帰変動 SSR)と、説明できない残差の部分(残差変動 SSE)に分けられます。決定係数 R2 = SSR ÷ SST = 1 − SSE ÷ SST は、Yの変動のうち回帰式で説明できた割合で、0から1の値をとります。

自由度修正済み決定係数

R2には、関係のない変数を追加しても下がらない(通常は少し上がる)という性質があります。そこで、推定するパラメータの数に応じたペナルティを加えたのが自由度修正済み決定係数(adjusted R2です。説明力の低い変数を加えると、こちらは下がることがあります。説明変数の数が異なるモデルを比べるときは、R2ではなく自由度修正済みのほうを使います。

そのほかの評価の視点

当てはまりの数値だけでなく、①係数の符号や大きさが理論や直感と整合しているか、②個々の係数や全体が統計的に有意か(t検定・F検定)、③残差に系列相関や不均一分散などのパターンが残っていないか、もあわせて確認します。残差の標準偏差にあたる回帰の標準誤差 s = √(SSE ÷ (n − k − 1)) も、予測のばらつきの目安になります。

押さえておきたい公式

SST = SSR + SSE総変動 = 回帰で説明できる変動 + 残差変動
R2 = SSR ÷ SST = 1 − SSE ÷ SST決定係数
adj R2 = 1 − (SSE ÷ (n − k − 1)) ÷ (SST ÷ (n − 1)) = 1 − (1 − R2) × (n − 1) ÷ (n − k − 1)自由度修正済み決定係数
s = √(SSE ÷ (n − k − 1))回帰の標準誤差
記号 意味
n 観測数
k 説明変数の数(定数項を除く)
SST、SSR、SSE 総変動、回帰変動、残差変動(いずれも平方和)

具体例で確認

観測数 n = 30、説明変数 k = 3 の重回帰で、総変動 SST = 200、残差変動 SSE = 80 だったとします。

  1. 決定係数:R2 = 1 − 80 ÷ 200 = 0.60
  2. 自由度修正済み決定係数:1 − (80 ÷ 26) ÷ (200 ÷ 29) = 1 − 3.077 ÷ 6.897 ≒ 0.554
  3. 回帰の標準誤差:s = √(80 ÷ 26) ≒ 1.754

ここに4つ目の説明変数を追加したところ、R2が0.61に上がったとします。自由度修正済み決定係数は 1 − 0.39 × 29 ÷ 25 ≒ 0.548 となり、元のモデル(0.554)より下がります。追加した変数は、自由度を失うほどの説明力を持っていないと判断できます。

試験で問われやすいポイント

  • R2 = 1 − SSE ÷ SST自由度修正済みR2の計算が定番です。自由度 n − k − 1 と n − 1 を取り違えないようにしましょう。
  • 「説明変数を増やすとR2下がらないが、自由度修正済みR2下がることがある」という性質が問われやすいです。
  • R2が高いことは、因果関係や係数の有意性を保証しない点に注意しましょう。
  • 最小二乗法が残差の二乗和を最小化する方法であることや、推定量 (X’X)−1X’y の形が問われることがあります。
  • 記述式では、計算結果をもとにどちらのモデルが望ましいかを理由とともに説明させる問題に備えましょう。

要点まとめ

  • 係数は残差二乗和を最小にする最小二乗法で推定する
  • R2=1−SSE÷SSTは説明できた変動の割合
  • 変数の数が違うモデルの比較には自由度修正済みR2を使う
  • 係数の妥当性、有意性、残差のパターンもあわせて評価する

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。