重回帰モデルとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・数量分析と確率・統計
ひとことで言うと
- 重回帰モデルは、1つの被説明変数Yを複数の説明変数X1, X2, …の1次式と誤差項で説明するモデルです。
- 各係数βjは、他の説明変数を一定に保ったままXjが1単位増えたときのYの変化(偏回帰係数)を表します。
- 行列を使うと y = Xβ + ε とまとめて表せます。
この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「重回帰モデルの概要」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計 |
|---|---|
| 大分類 | (11) 回帰分析(重回帰) |
| 協会の学習ポイント | 重回帰モデルの概要について理解する。 |
重回帰モデルとは
単回帰モデルは、Yを1つの説明変数Xだけで説明します。しかし現実には、株式のリターンは市場全体の動きだけでなく、企業規模や割安度などにも左右されます。そこで、複数の説明変数を同時に使って Y = β0 + β1X1 + … + βkXk + ε と表すのが重回帰モデルです。
偏回帰係数の意味
βjは偏回帰係数と呼ばれ、「他の説明変数の値を固定したうえで、Xjだけを1単位動かしたときにYが平均的にどれだけ変わるか」を表します。単回帰で求めた係数には、そのXと相関している他の要因の影響も混ざってしまいますが、重回帰ではそうした要因をモデルに入れることで、それぞれの変数の影響を切り分けて評価できます。そのため、同じ変数でも単回帰と重回帰で係数の値が変わるのが普通です。
行列による表記
n個の観測値を縦に並べ、y(n×1)、定数項の列(すべて1)と説明変数を並べたX(n×(k+1))、係数ベクトルβ((k+1)×1)、誤差ベクトルε を使うと、y = Xβ + ε と書けます。最小二乗推定量は b = (X’X)−1X’y です。
標準的な仮定
最小二乗法の推定量が望ましい性質を持つための代表的な仮定は、①誤差項の期待値が0、②誤差項の分散が一定(均一分散)、③誤差項どうしが無相関(系列相関なし)、④説明変数と誤差項が無相関、⑤説明変数どうしが完全な線形関係にない(完全な多重共線性がない)、などです。検定を行う際は、さらに誤差項が正規分布に従うと仮定することが一般的です。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| Y | 被説明変数(目的変数) |
| Xj | 説明変数(k個) |
| β0、βj | 定数項、偏回帰係数 |
| ε | 誤差項 |
具体例で確認
ある株式の月次超過リターン(%)を、市場超過リターンX1(%)と、小型株と大型株のリターン差X2(%)で説明する重回帰を推定し、次の結果を得たとします。
- X1の係数1.1:規模要因X2が同じなら、市場超過リターンが1%ポイント高い月は、この株式の超過リターンが平均1.1%ポイント高くなります。
- X2の係数0.4:市場の動きが同じなら、小型株が大型株を1%ポイント上回る月は、この株式が平均0.4%ポイント高くなります(小型株的な性質を持つ)。
- 定数項0.2:両方の説明変数が0のときの平均的な超過リターンです。
もしX2を入れずにX1だけで単回帰すると、X1とX2が相関している場合には、X1の係数にX2の影響の一部が混ざり、1.1とは違う値になりえます。
試験で問われやすいポイント
- 偏回帰係数を「他の変数を一定としたときの影響」と正しく解釈できるかが最も問われます。
- 単回帰と重回帰で同じ変数の係数が変わる理由(説明変数間の相関、欠落変数)を説明できるようにしましょう。
- 誤差項に関する標準的な仮定と、それが崩れたときの問題(不均一分散・系列相関・多重共線性)が組み合わせで問われます。
- 行列表記 y = Xβ + ε と、Xに定数項の列(すべて1)が入ることに注意しましょう。
- 記述式では、推定結果の係数の符号と大きさを言葉で解釈させる問題に備えておきましょう。
要点まとめ
- 重回帰はYを複数の説明変数の1次式と誤差項で表すモデル
- 偏回帰係数は「他の変数を一定としたときの影響」
- 行列ではy=Xβ+ε、推定量はb=(X’X)−1X’y
- 誤差項の均一分散・無相関などの仮定が前提になる
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
