マルチファクター・モデルとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・数量分析と確率・統計
ひとことで言うと
- マルチファクター・モデルは、株式のリターンを市場全体・規模・バリューなど複数の共通要因(ファクター)で説明するモデルです。
- 各ファクターへの感応度(ファクター・ベータ)は、過去のリターンをファクターに重回帰して求めます。
- モデルの良し悪しは、決定係数、係数のt値、切片(アルファ)、残差の性質などで評価します。
この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「マルチファクター・モデル」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計 |
|---|---|
| 大分類 | (11) 回帰分析(重回帰) |
| 協会の学習ポイント | 重回帰分析によるマルチファクター・モデルの係数計算方法を理解し、モデルの評価ができる。 |
マルチファクター・モデルとは
CAPMのシングル・インデックス・モデルは、個別株のリターンを市場ポートフォリオのリターン1つで説明します。しかし実際には、企業規模や割安度、業種、金利・景気といった他の要因もリターンに共通して影響します。そこで複数のファクターを説明変数とし、リターンを被説明変数とした重回帰モデルで表すのがマルチファクター・モデルです。
代表的な型には、①市場・規模(SMB)・バリュー(HML)などのリターン差をファクターとするファンダメンタル型(ファーマ=フレンチ型)、②鉱工業生産やインフレ率などの予期せぬ変化をファクターとするマクロ経済型、③データから統計的にファクターを取り出す統計的ファクター・モデル(主成分分析などを使う)があります。
係数の計算方法
銘柄(またはポートフォリオ)の超過リターンの時系列を、同じ期間のファクター・リターンの時系列に重回帰し、最小二乗法で係数を推定します。各係数は「他のファクターを一定としたとき、そのファクターが1単位動くとリターンがどれだけ動くか」を表す感応度です。行列で書くと β̂ =(X’X)−1X’y です。
モデルの評価
- 決定係数(自由度修正済み):リターンの変動のうちファクターで説明できる割合。
- 各係数のt値:そのファクターが有意に効いているか。
- 切片(アルファ):ファクターで説明できない平均的な超過リターン。モデルが十分ならゼロと有意に異ならないはずです。
- 残差の性質・安定性:系列相関や不均一分散の有無、推定期間を変えても係数が安定しているか、ファクター間の多重共線性。
押さえておきたい公式
具体例で確認
ある株式の超過リターンを3ファクターで回帰し、市場β=1.1、SMBβ=0.4、HMLβ=−0.2 が得られたとします。ファクター・プレミアムはそれぞれ年6%、2%、3%とします。
- 期待超過リターン = 1.1×6% + 0.4×2% +(−0.2)×3% = 6.6% + 0.8% − 0.6% = 6.8%
さらに、ファクターどうしが無相関で、標準偏差が市場20%、SMB10%、HML10%、残差の標準偏差が15%なら、
- 共通リスク = 1.21×0.04 + 0.16×0.01 + 0.04×0.01 = 0.0504
- 総分散 = 0.0504 + 0.152 = 0.0729 → 標準偏差 27%
- 共通リスクの割合(決定係数に相当)= 0.0504 ÷ 0.0729 ≒ 69%
試験で問われやすいポイント
- ファクター感応度からの期待リターンの計算(符号のマイナスに注意)。
- 総リスクを共通リスクと固有リスクに分解する計算と、ファクター間に相関があるときは共分散項が入る点。
- 係数の意味は「他のファクターを一定としたとき」の感応度であること。単回帰のベータとは一般に一致しません。
- アルファが有意に正ならファクターで説明できない超過リターンがある、という評価の読み方。
- 記述式では、回帰結果の表からモデルを評価させる(R2、t値、多重共線性など)問題に備えましょう。
要点まとめ
- マルチファクター・モデルは、リターンを複数ファクターで説明する重回帰モデルです。
- 感応度は時系列回帰(最小二乗法)で推定します。
- 期待超過リターン=Σ(感応度×ファクター・プレミアム)、リスクは共通+固有に分解できます。
- 評価は決定係数、t値、アルファ、残差の性質と係数の安定性で行います。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
