時系列のトレンド推定とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・数量分析と確率・統計
ひとことで言うと
- トレンドとは、時系列データに含まれる長期的・持続的な増加や減少の傾向のことです。
- 時間 t を説明変数とする回帰(トレンド回帰)や、前後のデータを平均する移動平均などで取り出します。
- トレンドが確定的か(トレンド定常)、確率的か(単位根)によって、適切な取り除き方が異なる点が重要です。
この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「トレンドの推定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計 |
|---|---|
| 大分類 | (13) 時系列分析 |
| 協会の学習ポイント | 時系列データのトレンドの推定について理解する。 |
時系列のトレンドとは
GDPや企業の売上高、株価指数などの時系列データは、一般に「トレンド(長期的傾向)」「循環変動(景気の波)」「季節変動」「不規則変動」の組み合わせとして捉えられます。このうちトレンドを推定して取り出すことは、長期的な成長率の把握や、トレンドを除いた変動(景気循環など)の分析の出発点になります。
トレンド回帰
最も基本的な方法は、時間 t(1, 2, 3, …)を説明変数とする回帰です。一定の「量」ずつ増えるなら線形トレンド yt = a + bt、一定の「率」で成長するなら対数をとった log yt = a + bt を当てはめ、bが(連続複利の)成長率の推定値になります。曲がったトレンドには t2 などを加えた多項式トレンドも使われます。
移動平均
各時点の前後のデータを平均して、短期的な変動をならす方法です。前後同数を平均する中心化移動平均がよく使われ、平均する期間を長くするほど滑らかになりますが、系列の両端では値が計算できなくなります。季節変動のあるデータでは、季節の周期(月次なら12か月)に合わせた移動平均をとると季節変動も同時にならせます。そのほか、滑らかさと当てはまりのバランスをとってトレンドを抽出するHPフィルターなどの方法もあります。
トレンド定常と差分定常
トレンドを除いた残りが定常になる系列(トレンド定常)なら、トレンド回帰の残差を分析すれば十分です。一方、ランダムウォークのように確率的なトレンドをもつ系列(差分定常、単位根過程)に時間トレンドを当てはめると、本当は存在しない確定的トレンドがあるように見えてしまうおそれがあり、この場合は差分をとるのが適切です。
押さえておきたい公式
具体例で確認
ある企業の売上高(億円)が、t=1〜5 で 100、104、107、112、116 だったとします。
- t̄ = 3、ȳ = 107.8
- Σ(t − t̄)(yt − ȳ)=(−2)×100 +(−1)×104 + 0 + 1×112 + 2×116 = 40(Σ(t−t̄)=0なので、yの偏差の代わりにyそのものを使っても同じ)
- Σ(t − t̄)2 = 4 + 1 + 0 + 1 + 4 = 10 → b̂ = 40 ÷ 10 = 4
- â = 107.8 − 4 × 3 = 95.8 → トレンド線 y = 95.8 + 4t
- t=6 のトレンド値:95.8 + 24 = 119.8
- 3期移動平均:t=2 で(100+104+107)÷3 ≒ 103.7、t=3 で(104+107+112)÷3 ≒ 107.7
試験で問われやすいポイント
- 線形トレンドと対数線形トレンドの使い分け(一定の量で増えるか、一定の率で増えるか)と係数の意味。
- 時間を説明変数とする最小二乗法での傾き・切片の計算と、トレンド値の外挿。
- 移動平均の計算、期間を長くするほど滑らかになるが端点で欠ける・転換点に遅れる点。
- トレンド定常と差分定常の違い。確率的トレンドをもつ系列にトレンド回帰を行う危険性。
- 記述式では、トレンド推定の計算過程と、推定方法の選び方の理由を説明させる形に備えましょう。
要点まとめ
- トレンドは時系列の長期的な傾向で、トレンド回帰や移動平均で推定します。
- 一定率で成長する系列には、対数をとった線形トレンドが適しています。
- 移動平均は短期変動や季節変動をならしますが、端点で値が欠けます。
- 確率的トレンド(単位根)をもつ系列には、差分をとる方法が適切です。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
