ひとことで言うと

  • (弱)定常な時系列とは、平均・分散が時点によらず一定で、自己共分散が「時点の差(ラグ)」だけで決まる系列のことです。
  • 定常なら過去のデータから推定した性質が将来も続くとみなせるため、推定・検定・予測の前提になります。
  • AR(1)モデル yt = c + φyt−1 + εt は |φ| < 1 のとき定常、φ = 1(ランダムウォーク)では非定常です。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「定常性」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (13) 時系列分析
協会の学習ポイント 時系列データの定常性について理解する。

時系列の定常性とは

時系列データでは、同じ変数を異なる時点で1回ずつしか観測できません。それでも過去のデータから平均や相関を推定して将来に役立てられるのは、「データを生み出す仕組み(確率的な性質)が時間を通じて変わらない」と考えられる場合です。この性質を定常性といいます。

実務や試験で通常「定常」というときは弱定常(共分散定常)を指し、次の3条件を満たすことをいいます。①期待値 E[yt]が時点tによらず一定、②分散 Var(yt)が一定、③自己共分散 Cov(yt, yt−k)が時点tによらず、ラグkだけに依存する。分布そのものが時間をずらしても変わらないという、より厳しい条件は強定常と呼ばれます。

定常性が重要な理由

非定常な系列では、平均や分散が時間とともに変化するため、標本平均などの推定値が意味をもたなくなったり、通常のt検定の分布が成り立たなくなったりします。特に、非定常な系列どうしを回帰すると、無関係でも高い決定係数や有意なt値が出る見せかけの回帰が起きやすくなります。そのため、分析の前に定常性を確認し、非定常なら差分をとる(株価なら対数差分=リターンにする)などの処理を行います。

AR(1)モデルでの定常条件

AR(1)モデルでは、|φ| < 1 ならショックの影響が時間とともに減衰し、平均 c÷(1−φ)の周りを変動する定常過程になります(平均回帰)。自己相関はラグkに対して φk と指数的に小さくなります。一方、φ = 1 のランダムウォークではショックの影響が永続し、分散が時間とともに増大するため非定常です(単位根過程)。定常かどうかは、ADF検定などの単位根検定で確かめます。

押さえておきたい公式

弱定常:E[yt] = μ、 Var(yt) = σ2、 Cov(yt, yt−k) = γkいずれも時点tによらない(γはラグkのみに依存)
AR(1)(|φ| < 1):μ = c ÷ (1 − φ)、 Var = σε2 ÷ (1 − φ2)、 ρk = φk
ランダムウォーク:yt = yt−1 + εt → Var(yt) = tσε2分散が時間とともに増大し非定常。差分 Δyt = εt は定常

具体例で確認

yt = 2 + 0.6yt−1 + εt、誤差の分散 σε2 = 1 のAR(1)モデルを考えます。|0.6| < 1 なので定常です。

  • 平均:2 ÷(1 − 0.6)= 5
  • 分散:1 ÷(1 − 0.36)= 1.5625
  • 自己相関:1次 0.6、2次 0.620.36、3次 0.216 …と減衰

これに対し、yt = yt−1 + εt(σε2 = 1)のランダムウォークでは、出発点を固定すると10期後の分散は10、100期後は100と増え続け、一定の平均に戻る力もありません。

試験で問われやすいポイント

  • 弱定常の3条件(平均一定・分散一定・自己共分散がラグのみに依存)を正確に述べられるか。
  • AR(1)の定常条件 |φ|<1 と、平均 c÷(1−φ)・分散 σ2÷(1−φ2)・自己相関 φk の計算。
  • ランダムウォークは非定常(分散が時間に比例して増大)だが、その差分は定常になる点。
  • 非定常系列の回帰で起こる見せかけの回帰と、差分・対数差分による対処。
  • 記述式では、定常性が分析の前提として重要な理由を説明させる問題に備えましょう。

要点まとめ

  • 弱定常とは、平均・分散が一定で、自己共分散がラグだけで決まる性質です。
  • 定常性は、推定・検定・予測を意味あるものにする前提です。
  • AR(1)は |φ|<1 で定常となり、平均へ回帰します。
  • ランダムウォークなどの非定常系列は、差分をとって定常化してから分析します。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。