ひとことで言うと

  • 見せかけの回帰とは、ランダムウォークのような非定常な系列どうしを回帰すると、本当は無関係でも決定係数やt値が高く出て、関係があるように見えてしまう現象です。
  • 一方、非定常な系列どうしでも、ある線形結合が定常になる(長期的に離れすぎない安定した関係がある)場合を共和分といいます。
  • 共和分関係があれば、長期関係からの乖離が修正される動きを誤差修正モデルで表せます。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「見せかけの回帰と共和分」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (13) 時系列分析
協会の学習ポイント 非定常時系列モデルにおける見せかけの回帰や共和分について理解する。

見せかけの回帰と共和分とは

見せかけの回帰

通常の回帰分析のt検定やF検定は、データが定常であることを前提にしています。ところが、互いにまったく無関係な2つのランダムウォークを回帰すると、どちらもたまたま一方向に漂う期間があるため、決定係数が高く、係数のt値も有意という結果が高い確率で出てしまいます。これを見せかけの回帰(spurious regression)といいます。サンプル数を増やしても解消せず、むしろ「有意」と判定されやすくなるのが厄介な点です。

見せかけの回帰では、残差にも単位根が残るため、残差の自己相関が非常に強く、ダービン=ワトソン比が0に近くなります。「決定係数がダービン=ワトソン比より大きい場合は見せかけの回帰を疑う」という目安がよく紹介されます。対策としては、単位根検定で非定常性を確認し、階差をとってから回帰するのが基本です。

共和分

ただし、非定常な系列どうしに本当の長期的関係がある場合もあります。たとえば、ある商品の現物価格と先物価格、同じ業種の2銘柄の株価、長期金利と短期金利などは、それぞれは非定常でも、差や比率は一定の範囲内で行き来する傾向があります。このように、I(1)の系列xt、ytについて、yt − βxt が定常になるβが存在するとき、両者は共和分の関係にあるといい、βを共和分ベクトル(の係数)と呼びます。

共和分があるときに階差だけで分析すると、長期関係の情報を捨ててしまいます。そこで、長期関係からの前期の乖離(誤差修正項)を説明変数に加えた誤差修正モデル(ECM)を使います。共和分の検定には、まず水準で回帰して残差の単位根検定を行うエングル=グレンジャーの2段階法や、多変数に対応したヨハンセン検定などがあります。

押さえておきたい公式

zt = yt − βxt が定常 ⇒ xt と yt は共和分x、yはともにI(1)(1回階差をとると定常)
Δyt = c + γΔxt − λ(yt−1 − βxt−1) + εt誤差修正モデル。λ>0は乖離が修正される速さ

具体例で確認

2つの株価指標y、xの間に、長期的に y = 2x という共和分関係があり、誤差修正モデルの修正速度がλ=0.2と推定されたとします(簡単のため c=0、今期のΔx=0 とします)。

  1. 前期の値が y=105、x=50 だったとすると、長期関係からの乖離は 105 − 2 × 50 = 5
  2. 今期のyの変化の予測:Δy = −0.2 × 5 = −1
  3. yは長期関係に向かって1だけ下がり、乖離は4に縮むと予測されます。

これに対し、yとxが共和分でない無関係なランダムウォークなら、水準で回帰して高い決定係数が出ても、この乖離に「戻る力」はありません。ペア・トレーディングのような戦略は、共和分関係が本当に存在することが前提になっています。

試験で問われやすいポイント

  • 見せかけの回帰の症状(高い決定係数・有意なt値・DW比が0に近い)と、その原因(非定常系列どうしの回帰)が問われやすいです。
  • 対策として単位根検定で確認し、階差をとるという手順を説明できるようにしましょう。
  • 共和分の定義「非定常な系列の線形結合が定常」を正確に書けることが大切です。
  • 共和分がある場合に階差だけで分析すると長期情報を失うため、誤差修正モデルを使うという流れが記述式で問われる可能性があります。
  • エングル=グレンジャー法では、水準回帰の残差に単位根がないことを確かめる、という手順も押さえましょう。

要点まとめ

  • 非定常な系列どうしの回帰は、無関係でも関係があるように見える(見せかけの回帰)
  • 見せかけの回帰は残差の自己相関が強く、DW比が0に近い
  • 非定常でも線形結合が定常なら共和分=長期的な均衡関係がある
  • 共和分があれば誤差修正モデルで短期の調整と長期関係を同時に扱う

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。