ひとことで言うと

  • シミュレーションの結果は入力の確率分布しだいなので、各変数の分布の形・パラメータ・変数間の相関をどう決めるかが最も重要なステップです。
  • 決め方には、過去データへの当てはめ、過去データをそのまま再利用するヒストリカル(ブートストラップ)法、データが乏しいときの専門家の判断(主観的分布)があります。
  • 相関のある変数は、コレスキー分解などで相関を持たせた乱数を発生させます。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「確率分布の定め方」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (14) シミュレーション手法
協会の学習ポイント シミュレーションを行う各変数の確率分布を定める方法について理解する。

シミュレーションでの確率分布の定め方とは

モンテカルロ・シミュレーションは、どれだけ試行回数を増やしても、入力の分布が現実とずれていれば結果もずれてしまいます。そのため、どの変数を確率変数として扱うか(重要な変数に絞る)、その変数にどんな分布を当てはめるか、パラメータをいくつにするか、変数どうしの相関をどう設定するかを、根拠をもって決める必要があります。

1. 過去データに分布を当てはめる(パラメトリック法)

過去のデータから平均や標準偏差を推定し、正規分布などの理論分布を当てはめる方法です。株価のように負の値をとらず右に裾を引く変数には対数正規分布(対数リターンが正規分布)、裾の厚さを表したいときにはt分布など、変数の性質に合った分布を選びます。当てはまりの良さは、ヒストグラムとの比較や適合度検定で確認します。どの期間のデータを使うかでパラメータが変わる点にも注意が必要です。

2. 過去データをそのまま使う(ヒストリカル法・ブートストラップ)

分布の形を仮定せず、過去の実際のリターンなどを無作為に抜き出して(復元抽出して)シナリオを作る方法です。現実の裾の厚さや非対称性をそのまま反映できる反面、過去に起きなかった事象は出てこないという限界があります。

3. 専門家の判断で決める(主観的分布)

新製品の売上や新規事業のコストのように過去データがない変数は、担当者や専門家に「最小・最頻・最大」を聞いて三角分布を使ったり、範囲だけわかる場合に一様分布を使ったりします。判断の偏り(楽観バイアスなど)が入りやすい点に注意します。

変数間の相関

金利と株価、売上とコストのように連動する変数を独立に発生させると、結果のばらつきを過小または過大に評価してしまいます。相関行列をコレスキー分解し、独立な標準正規乱数を変換することで、相関を持つ乱数を作れます。

押さえておきたい公式

三角分布の平均 = (a + m + b) ÷ 3a:最小値、m:最頻値、b:最大値
x1 = z1  x2 = ρz1 + √(1 − ρ2) × z2独立な標準正規乱数z1、z2から相関ρの乱数を作る(2変数のコレスキー分解)
ST = S0 × exp(r)  r ~ 正規分布対数リターンが正規分布なら株価は対数正規分布

具体例で確認

例1:専門家の判断による三角分布

新製品の初年度売上について、担当者が「最悪80億円、最もありそうなのは100億円、最高150億円」と見積もったとします。三角分布を使うと、平均は (80 + 100 + 150) ÷ 3 = 110億円 です。上振れ幅が大きいため、平均は最頻値より大きくなります。

例2:相関のある乱数を作る

2つの資産のリターンの相関をρ=0.6としたいとき、独立な標準正規乱数 z1=1.0、z2=−0.5 が出たとします。

  1. x1 = 1.0
  2. x2 = 0.6 × 1.0 + √(1 − 0.36) × (−0.5) = 0.6 − 0.8 × 0.5 = 0.2

これを何度もくり返すと、x1とx2の相関はおよそ0.6になります。あとは各資産の平均と標準偏差を使って、実際のリターンの値に直します。

試験で問われやすいポイント

  • 分布の定め方の3つの方法(過去データへの当てはめ・ヒストリカル法・専門家の判断)と、それぞれの長所と限界が問われやすいです。
  • ヒストリカル法は過去に起きなかった事象を再現できないという限界が、ひっかけとして使われやすい論点です。
  • 株価には対数正規分布、裾の厚さにはt分布、データがないときは三角分布・一様分布など、変数の性質と分布の対応を押さえましょう。
  • 相関を無視するとリスクを誤って評価すること、相関の付け方(コレスキー分解)を説明できるようにしましょう。
  • 記述式では、ある変数にどの分布を選ぶか、その理由を述べさせる形も考えられます。

要点まとめ

  • 入力分布の設定がシミュレーション結果の質を左右する
  • 過去データへの当てはめ、ヒストリカル法、専門家の判断を使い分ける
  • 変数の性質(非負・裾の厚さ・データの有無)に合った分布を選ぶ
  • 変数間の相関はコレスキー分解などで反映させる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。