ひとことで言うと

  • コモディティの先物価格は、現物価格に金利と保管コストを加え、コンビニエンス・イールド(現物を持つ便益)を差し引いた持越費用(キャリー)モデルで説明されます。
  • 先物を使ったコモディティ投資のトータル・リターンは、スポット・リターン+ロール・リターン+担保(コラテラル)リターンに分解できます。
  • 先物価格が現物より低いバックワーデーションではロール・リターンがプラス、高いコンタンゴではマイナスになりやすいのがポイントです。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「コモディティの評価とリスク・リターン」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (9) オルタナティブ投資資産の種類、特徴と投資管理
協会の学習ポイント コモディティ投資の価値評価方法やリスク・リターン特性について理解する。

コモディティ先物のリターンの内訳とは

先物価格の決まり方(持越費用モデル)

コモディティは配当や利息を生まないため、株式のように将来のキャッシュフローを割り引いて価値を求めることができません。そこで、現物と先物の関係から価格を考えます。現物を買って将来まで持ち続ける場合、購入資金の金利と保管コスト(倉庫代・保険料など)がかかります。一方、在庫を手元に持っていれば、品不足のときにすぐ使える・売れるという便益があり、これをコンビニエンス・イールドと呼びます。

先物価格は、現物価格にこの「金利+保管コスト−コンビニエンス・イールド」を反映した水準になります。在庫が豊富でコンビニエンス・イールドが小さいときは先物価格が現物価格より高いコンタンゴになりやすく、在庫がひっ迫してコンビニエンス・イールドが大きいときは先物価格が現物価格より低いバックワーデーションになりやすいと説明されます(在庫の理論)。

また、生産者が価格下落に備えて先物を売ってヘッジするため、その相手方となる投資家はリスク・プレミアムを受け取れる、つまり先物価格は将来の予想現物価格より低くなりやすい、という考え方もあります(ケインズのノーマル・バックワーデーション、ヘッジ圧力仮説)。

トータル・リターンの3つの内訳

  • スポット・リターン:現物価格そのものの変化によるリターンです。
  • ロール・リターン:満期が近い先物を売り、期先の先物を買い直す(ロールする)ことから生まれる損益です。先物価格は満期に向けて現物価格に近づくため、バックワーデーションでは安い先物が値上がりしてプラス、コンタンゴでは高い先物が値下がりしてマイナスになりやすくなります。
  • 担保(コラテラル)リターン:先物の想定元本に相当する資金を短期国債などで運用して得る金利収入です。

リスク・リターン特性

コモディティは価格変動が大きく、需給ショック(供給途絶や天候不順など)で急騰することがあるため、個別商品のリターン分布は右に裾が長くなることがあります。株式・債券との相関は長期的に低く、予想外のインフレとの相関はプラスとされます。一方、コンタンゴが続くとロール・リターンのマイナスが積み重なり、現物価格が上がっても投資家のリターンが伸びないことがある点に注意が必要です。

押さえておきたい公式

F = S × e(r + u − y)T連続複利による持越費用モデル。F<S ならバックワーデーション、F>S ならコンタンゴ
トータル・リターン ≒ スポット・リターン + ロール・リターン + 担保リターン完全担保で先物に投資した場合の近似的な分解
F 先物価格
S 現物(スポット)価格
r 無リスク金利
u 保管コスト(現物価格に対する率)
y コンビニエンス・イールド
T 満期までの期間(年)

具体例で確認

先物価格の計算

現物価格100、無リスク金利3%、保管コスト2%、満期1年とします。

  • コンビニエンス・イールドが6%のとき:F=100×e(0.03+0.02−0.06)×1=100×e−0.0199.0。先物が現物より安いバックワーデーションです。
  • コンビニエンス・イールドが0%のとき:F=100×e0.05105.1。先物が現物より高いコンタンゴです。

リターンの分解

完全担保で1年間コモディティ先物に投資し、現物価格が5%上昇、担保の金利が1%だったとします。

  • バックワーデーションでロール・リターンが+2%なら、トータル・リターンは約5%+2%+1%=約8%です。
  • 同じ5%の現物価格上昇でも、コンタンゴでロール・リターンが−4%なら、約5%−4%+1%=約2%にとどまります。

現物価格の動きだけを見ていると、先物による投資の成果を見誤ることがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • トータル・リターンの3分解(スポット・ロール・担保)と、それぞれの意味を説明できるかが基本です。
  • バックワーデーションとコンタンゴの定義、それぞれでロール・リターンがプラス・マイナスどちらになりやすいかの向きが狙われやすいです。
  • 持越費用モデルで、金利・保管コストが上がると先物価格は上昇、コンビニエンス・イールドが上がると下落するという関係を押さえましょう。
  • 在庫の理論(在庫水準とコンビニエンス・イールド)と、ノーマル・バックワーデーション(ヘッジ圧力)の考え方の違いに注意しましょう。
  • 記述式では、先物価格を計算させて期間構造を判定させたり、現物価格が上がったのに投資成果が振るわない理由を説明させたりする形が考えられます。

要点まとめ

  • 先物価格は現物価格に金利・保管コストを加え、コンビニエンス・イールドを差し引いて決まる。
  • 先物投資のリターンはスポット・ロール・担保リターンの合計で近似できる。
  • バックワーデーションはロール・リターンがプラス、コンタンゴはマイナスになりやすい。
  • コモディティは変動が大きい一方、株式・債券との相関が低く、インフレと正の相関を持つ。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。