ひとことで言うと

  • 会計情報の有用性とは、財務諸表などの会計情報が、投資家の意思決定株価の形成にどれだけ役立っているかという問題です。
  • 決算発表時の株価の反応(イベントスタディ)や、会計数値と株価水準の関係(価値関連性)を調べる実証研究によって確かめられてきました。
  • 予想外の利益(利益サプライズ)が株価に反映されることは会計情報の有用性を示す一方、発表後も株価が同じ方向に動き続ける現象(PEAD)は市場の効率性との関係で議論されています。

この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「会計情報の有用性」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析
大分類 (11) 財務分析の応用
協会の学習ポイント 資本市場における会計情報の有用性について理解する。

会計情報の有用性とは

財務報告の主な目的は、投資家が企業の将来キャッシュ・フローや企業価値を見積もるのに役立つ情報を提供すること(意思決定有用性)にあります。日本の「財務会計の概念フレームワーク」(討議資料)では、意思決定有用性を支える特性として意思決定との関連性と信頼性が挙げられています。IFRSの概念フレームワークでは、基本的な質的特性として目的適合性忠実な表現が示されています。

では、会計情報は実際に投資判断や株価に影響しているのでしょうか。これを資本市場のデータで確かめるのが、会計情報の有用性に関する実証研究です。

イベントスタディ

決算発表などの出来事(イベント)の前後で、市場全体の動きでは説明できない株価の変動(異常リターン)が生じるかを調べる方法です。Ball and Brown(1968年)の研究は、市場の予想を上回る利益を発表した企業の株価は上昇し、下回った企業の株価は下落する傾向があることを示し、会計利益が株価に関係する情報をもっていることを明らかにした先駆的な研究として知られています。

価値関連性

利益や純資産簿価などの会計数値が、株価水準や株式リターンをどれだけ説明できるかを回帰分析などで調べるアプローチです。オールソン・モデル(残余利益モデル)のように、純資産と利益を使って株主価値を説明する考え方とも結びついています。

決算発表後のドリフト(PEAD)

効率的市場仮説のもとでは、公表された情報はすぐに株価に織り込まれるはずです。しかし実証研究では、利益サプライズの発表後もしばらく同じ方向に株価が動き続ける決算発表後の株価ドリフト(PEAD)が報告されており、市場が会計情報を十分に織り込めていない可能性(アノマリー)として議論されています。

押さえておきたい公式

異常リターン ARt = Ri,t −(α + β × Rm,tマーケット・モデルで期待リターンを推定した場合
累積異常リターン CAR = ΣARtイベント期間(決算発表の前後数日など)の異常リターンを合計したもの
記号 意味
Ri,t 個別銘柄の実際のリターン
Rm,t 市場ポートフォリオのリターン
α・β 推定期間のデータから求めたマーケット・モデルのパラメータ

具体例で確認

ある企業が市場予想を上回る増益を発表した日に、株価が5%上昇しました。同じ日の市場全体のリターンは2%、この銘柄のマーケット・モデルはα=0、β=1.2と推定されています。

  • 期待リターン:0 + 1.2 × 2% = 2.4%
  • 異常リターン:5% − 2.4% = 2.6%

市場全体の動きでは説明できない2.6%の上昇が、決算発表という会計情報に反応した部分と考えられます。多くの企業で同じ傾向が確認されれば、会計情報が株価形成に役立っている証拠になります。

試験で問われやすいポイント

  • 意思決定有用性という財務報告の目的と、それを支える質的特性(目的適合性・忠実な表現など)の用語を押さえておきましょう。
  • イベントスタディの手順(期待リターンの推定→異常リターン→累積異常リターン)と計算が問われやすいです。
  • 利益サプライズと株価反応の方向(予想を上回れば上昇)を正しく理解しておきましょう。
  • PEADが効率的市場仮説と整合しない現象(アノマリー)とされる点も押さえましょう。
  • 記述式では、会計情報が株価形成に役立っていることを、どのような実証方法で確かめられるかを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 会計情報の主な目的は、投資家の意思決定に役立つこと(意思決定有用性)。
  • イベントスタディや価値関連性の研究で、会計情報と株価の関係が確かめられてきた。
  • 異常リターンは、実際のリターンからマーケット・モデルによる期待リターンを差し引いて求める。
  • 決算発表後の株価ドリフト(PEAD)は、市場の効率性との関係で議論されるアノマリー。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。