ひとことで言うと

  • エンハンスト・インデックスは、トラッキング・エラーを小さく抑えながら、指数をわずかに上回ることを狙う戦略です。
  • ロング・ショートマーケット・ニュートラルは、割安株の買いと割高株の売りを組み合わせ、市場の動きに左右されにくいアルファを狙います。
  • ポータブル・アルファは、ある運用で得たアルファを先物などを使って別の資産クラスのリターンに「移し替える」戦略です。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「エンハンスト・インデックスなど」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (5) 株式リターンの分析と株式ポートフォリオによる投資戦略
協会の学習ポイント エンハンスト・インデックス戦略、ロング・ショート戦略、マーケット・ニュートラル戦略、ポータブル・アルファ戦略などの仕組みや特性について理解する。

エンハンスト・インデックス戦略などとは

パッシブ運用とアクティブ運用の間や、その発展形として、さまざまな株式運用戦略があります。いずれも「どのリスクを取り、どのリスクを取り除くか」を意識して設計されている点がポイントです。

エンハンスト・インデックス戦略

基本はパッシブ運用に近い構成を保ちつつ、銘柄のウェイトを指数から少しだけずらしたり、先物と現物の価格差を利用したりして、指数を小幅に上回ることを目指します。トラッキング・エラーは小さく(一般に1〜2%程度以下)、リスク管理を重視したセミ・アクティブ運用です。

ロング・ショート戦略

割安と判断した銘柄を買い(ロング)、割高と判断した銘柄を空売り(ショート)します。ロングのみの運用では、割高銘柄については「持たない(ウェイトをゼロにする)」ことしかできませんが、ショートを使えば割高という判断からも収益を得られるため、予測をより十分にポートフォリオに反映できます。ロング130%・ショート30%で市場エクスポージャーを100%に保つ130/30戦略もその一例です。

マーケット・ニュートラル戦略

ロングとショートの金額やベータをそろえ、ポートフォリオ全体のベータをほぼゼロにする戦略です。市場全体が上がっても下がっても影響を受けにくく、リターンは主に「空売り代金の運用などによる短期金利相当+ロング側とショート側のアルファ」になります。一方で、空売りの制約や貸株コスト、レバレッジのリスク、ロング・ショート両方で判断を誤ると損失が膨らむリスクがあります。

ポータブル・アルファ戦略

アルファを生む運用(例えばマーケット・ニュートラル戦略)と、目標とする資産クラスのベータ(例えば株価指数先物の買い)を別々に調達して組み合わせる戦略です。アルファの源泉を、ベンチマークとは異なる市場に求められるのが特徴で、アルファとベータを分離して管理できます。ただし、先物のロールや証拠金管理、アルファ運用が損失を出した場合にベンチマークを下回るリスクがあります。

押さえておきたい公式

RMN ≒ Rf + αL + αSマーケット・ニュートラル:市場の動きを消し、無リスク金利相当+両サイドのアルファ
RPA ≒ (RB − Rf) + (Rf + α) = RB + αポータブル・アルファ:先物で得るベータ部分+アルファ運用のリターン
記号 意味
Rf 無リスク利子率(短期金利)
αL、αS ロング側・ショート側のアルファ
RB ベンチマーク(株価指数など)のリターン

具体例で確認

ある年金基金は、国内株式指数をベンチマークとする100億円の資金で、ポータブル・アルファ戦略を採用します。

  1. 100億円をマーケット・ニュートラル・ファンドに投資します。期待リターンは短期金利1%+アルファ2%=3%です。
  2. 同時に、想定元本100億円分の株価指数先物を買います。先物からは、おおむね「指数リターン−短期金利」が得られます。
  3. 指数リターンが6%の年なら、先物から約5%、ファンドから3%で、合計は約8%です。これは指数6%+アルファ2%に相当します。

もしマーケット・ニュートラル・ファンドのアルファが−2%なら、合計は約4%となり、指数を下回ります。アルファ運用のリスクがそのまま残る点に注意が必要です。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「アクティブ運用の基本法則と主要戦略を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 4つの戦略の仕組みとリスクの違いを比較して説明させる問題が考えられます。記述式では「何のリスクを取り、何を消しているか」を軸に書けるようにしておきましょう。
  • マーケット・ニュートラルのリターンが短期金利+アルファになる理由が問われやすいです。
  • ロング・ショートは、ロングのみの運用に比べて割高判断も収益化できる(移転係数が高まる)点が重要です。
  • ポータブル・アルファでは、先物による「指数−短期金利」アルファ運用のリターンを足し合わせる計算過程を示せるようにしておきましょう。
  • 空売り制約、貸株コスト、レバレッジ、先物の証拠金管理などの実務上のリスクも押さえておきましょう。

要点まとめ

  • エンハンスト・インデックスは低トラッキング・エラーで指数を小幅に上回ることを狙う
  • ロング・ショートは割安の買いと割高の売りで予測を十分に活かす
  • マーケット・ニュートラルはベータをほぼゼロにし、短期金利+アルファを狙う
  • ポータブル・アルファはアルファとベータを分離して組み合わせる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。