ひとことで言うと

  • 行列Aを掛けても向きが変わらず、長さだけがλ倍になるベクトルxを固有ベクトル、その倍率λを固有値といいます(Ax = λx)。
  • 固有値は固有方程式 det(A − λI) = 0を解いて求め、2×2行列なら2次方程式になります。
  • 主成分分析や分散共分散行列の分解など、2次の多変量解析の土台となる計算です。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「固有値と固有ベクトル」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (10) ベクトルと行列
協会の学習ポイント 2×2行列の固有方程式から固有値や固有ベクトルを計算できる。

固有値と固有ベクトルとは

一般に、ベクトルに行列を掛けると、長さも向きも変わります。ところが行列ごとに、掛けても向きが変わらない(同じ直線上にとどまる)特別な方向があります。その方向のベクトルxを固有ベクトル、伸び縮みの倍率λを固有値といい、Ax = λx(x ≠ 0)と表します。

固有方程式の導き方

Ax = λx を移項すると (A − λI)x = 0 です。ここで、もし A − λI に逆行列があれば、両辺に掛けて x = 0 しか解がなくなってしまいます。x ≠ 0 の解が存在するためには、A − λI に逆行列がない、つまりdet(A − λI) = 0でなければなりません。これが固有方程式(特性方程式)です。

固有ベクトルは「方向」だけが決まる

固有値λを求めたら、(A − λI)x = 0 に代入して固有ベクトルを求めます。このとき、x がこの式を満たせば 2x や −x も満たすため、固有ベクトルは方向(成分の比)だけが決まり、大きさは任意です。そこで、長さが1になるように割って正規化しておくのが一般的です。主成分分析では、この正規化した固有ベクトルが主成分のウェイトになります。

知っておくと便利な性質

2×2行列では、固有値の和は対角成分の和(トレース)固有値の積は行列式に等しくなります。また、分散共分散行列のような対称行列の固有値はすべて実数で、異なる固有値に対応する固有ベクトルは互いに直交します。

押さえておきたい公式

Ax = λx (x ≠ 0)固有値λと固有ベクトルxの定義
det(A − λI) = 0固有方程式。A = [[a, b], [c, d]] なら (a − λ)(d − λ) − bc = 0
λ1 + λ2 = a + d  λ1 × λ2 = ad − bc和はトレース、積は行列式(検算に便利)
記号 意味
λ 固有値(伸び縮みの倍率)
x 固有ベクトル(向きが変わらない方向)
I 単位行列

具体例で確認

A = [[2, 1], [1, 2]] の固有値と固有ベクトルを求めます。

  1. 固有方程式:(2 − λ)(2 − λ) − 1×1 = 0 → λ2 − 4λ + 3 = 0 → (λ − 3)(λ − 1) = 0
  2. 固有値:λ1 = 3、λ2 = 1(検算:和4=トレース2+2、積3=行列式4−1)
  3. λ1 = 3 のとき:(2 − 3)x1 + x2 = 0 より x2 = x1。固有ベクトルは (1, 1)’、正規化すると (1/√2, 1/√2)’
  4. λ2 = 1 のとき:(2 − 1)x1 + x2 = 0 より x2 = −x1。固有ベクトルは (1, −1)’、正規化すると (1/√2, −1/√2)’
  5. 確認:A(1, 1)’ = (3, 3)’ = 3 × (1, 1)’。2つの固有ベクトルの内積は 1 − 1 = 0 で直交しています。

試験で問われやすいポイント

  • 2×2行列の固有方程式を立てて2次方程式を解く計算が中心です。符号(A − λI の対角成分)を間違えないようにしましょう。
  • 固有ベクトルは方向だけが決まり大きさは任意であること、正規化(長さ1)した形で答える場合があることに注意しましょう。
  • 固有値の和=トレース、積=行列式は、計算結果の検算や選択肢の絞り込みに使えます。
  • 対称行列では固有ベクトルどうしが直交する性質が、主成分分析や対角化で問われます。
  • 記述式では、固有方程式→固有値→連立方程式→固有ベクトル(正規化)という計算過程を順に示すことが大切です。

要点まとめ

  • Ax=λxを満たすλが固有値、x(≠0)が固有ベクトル
  • 固有値は固有方程式det(A−λI)=0で求める
  • 固有ベクトルは方向のみ決まり、通常は長さ1に正規化する
  • 固有値の和はトレース、積は行列式に等しい

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。