証券アナリスト(CMA)2次試験で問われる「財務分析」。1次で会計の基本を学んだはずなのに、2次のテキストでは「日本基準とIFRSの相違点」「希薄化後EPS」「監査上の主要な検討事項」といった言葉が次々に出てきて、「結局2次では何ができるようになればいいの?」と戸惑う方も多いはずです。

この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、2次の財務分析で要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。

財務分析で学ぶこと

  • 一歩踏み込んだ会計処理:デリバティブ・ヘッジ会計、退職給付、税効果、企業結合、外貨換算などが財務諸表にどう表れるか
  • 日本基準とIFRSの違い:同じ取引でも基準が違うと利益や資産の数字がどう変わるのかを読み解く
  • 財務分析の応用:希薄化後EPS、セグメント情報、監査報告書などを使い、数字の裏側まで分析する

財務分析の基本情報

試験科目 2次「コーポレート・ファイナンスと企業分析」(財務分析・コーポレート・ファイナンス)
試験での出題 午前・午後の総合試験の中で出題(記述式)
学習ポイント数 28項目(大分類7つ)
1次とのつながり 1次では「証券アナリストと財務分析」「主要財務諸表と企業活動」「企業会計の仕組み」から収益・費用の測定、労務費用、税効果、企業結合、外貨換算、「財務分析の基礎」までの基本を学びます。2次ではそのうち(4)〜(9)の会計処理を日本基準とIFRSの比較も含めて深掘りし、(11)「財務分析の応用」で実践的な分析に進みます

全体像:7つの大分類

大分類 ひとことで言うと
(4) 収益の測定 デリバティブとヘッジ会計の処理、収益認識の日本基準とIFRSの違いを押さえる
(5) 費用の測定 固定資産・無形資産・引当金・金融商品・リースについて、日本基準とIFRSの違いを整理する
(6) 労務費用の会計 退職給付の過去勤務費用・数理計算上の差異、ストック・オプションの費用計上を理解する
(7) 税効果会計 繰延税金資産の回収可能性や税率変更の影響を、計算も含めて理解する
(8) 企業結合会計 子会社化・持分法・事業の移転が連結財務諸表にどう影響するかを理解する
(9) 外貨換算会計 為替予約とヘッジ会計、外貨換算の日本基準とIFRSの違いを押さえる
(11) 財務分析の応用 債権者の視点、IFRS導入、希薄化後EPS、セグメント情報、監査報告書などを使った実践的な分析

各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。

参考:1次も含めた大分類の全体像

協会の「主要学習事項と学習ポイント」では、1次と2次で大分類に同じ通し番号を使っています。2次の財務分析に(1)〜(3)と(10)が出てこないのは、これらを1次で学ぶためです。2次は1次の内容を前提に出題されるので、全体の流れを参考に確認しておきましょう。

大分類 扱う試験 ひとことで言うと
(1) 証券アナリストと財務分析 1次のみ なぜ財務分析をするのか、会計や開示の制度はどうなっているのかという土台を知る
(2) 主要財務諸表と企業活動 1次のみ 有価証券報告書と主要な財務諸表の中身、表示のルール、相互のつながりを理解する
(3) 企業会計の仕組み 1次のみ 資本と利益、資産・負債・収益・費用の関係など、会計の基本的な考え方を押さえる
(4) 収益の測定 1次・2次 デリバティブとヘッジ会計の処理、収益認識の日本基準とIFRSの違いを押さえる
(5) 費用の測定 1次・2次 固定資産・無形資産・引当金・金融商品・リースについて、日本基準とIFRSの違いを整理する
(6) 労務費用の会計 1次・2次 退職給付の過去勤務費用・数理計算上の差異、ストック・オプションの費用計上を理解する
(7) 税効果会計 1次・2次 繰延税金資産の回収可能性や税率変更の影響を、計算も含めて理解する
(8) 企業結合会計 1次・2次 子会社化・持分法・事業の移転が連結財務諸表にどう影響するかを理解する
(9) 外貨換算会計 1次・2次 為替予約とヘッジ会計、外貨換算の日本基準とIFRSの違いを押さえる
(10) 財務分析の基礎 1次のみ 収益性・生産性・安全性・損益分岐点など、財務諸表から企業を分析する手法を身につける
(11) 財務分析の応用 2次のみ 債権者の視点、IFRS導入、希薄化後EPS、セグメント情報、監査報告書などを使った実践的な分析

1次で学ぶ内容は【証券アナリスト1次】財務分析の記事で学習ポイントごとに解説しています。

(4) 収益の測定

ポイント:先物・オプション・スワップなどのデリバティブが財務諸表にどう載るのか、ヘッジ目的で使うと損益の計上時期をどう調整できるのかを学びます。あわせて、売上をいつ・いくらで計上するかという収益認識の日本基準とIFRSの違いを押さえます。

学習ポイント 学ぶ内容
デリバティブ取引の会計処理 先物・先渡・オプション・スワップは原則として時価で評価し、評価差額を損益に計上するという基本ルールを理解する
デリバティブの利用とヘッジ会計 ヘッジ対象とヘッジ手段の損益の計上時期をそろえる特例(ヘッジ会計)の考え方と、適用するための条件を理解する
収益認識の日本基準とIFRS 日本の収益認識基準はIFRS第15号をもとにしており「5つのステップ」の考え方は共通。そのうえで残っている違いを押さえる

(5) 費用の測定

ポイント:資産や負債の測り方の違いが、費用や利益の数字にどう効いてくるかを学ぶ大分類です。有形固定資産・無形資産・引当金・金融資産負債・リースの5つについて、日本基準とIFRSの違いを整理します。

学習ポイント 学ぶ内容
有形固定資産の基準差 IFRSでは再評価モデルの選択や、重要な構成部分ごとに減価償却する考え方があるなど、日本基準との違いを理解する
無形資産の基準差 のれんを日本基準では規則的に償却し、IFRSでは償却せず減損テストを行う違いや、開発費の資産計上の扱いの違いを理解する
引当金の基準差 引当金を計上する条件が基準によって異なり、日本基準で計上できる引当金がIFRSでは認められない場合があることを知る
金融資産・負債の基準差 IFRSでは償却原価・その他の包括利益を通じた公正価値・損益を通じた公正価値に分類するなど、分類と評価の違いを理解する
リース取引の基準差 IFRSでは借手が原則すべてのリースを資産・負債として計上する。オフバランスの有無が負債比率やROAを変えることを理解する

(6) 労務費用の会計

ポイント:従業員への報酬のうち、将来支払う退職給付や株式で支払う報酬を、いつ・いくら費用にするのかを学びます。見積りの変化が利益や純資産にどう表れるかがポイントです。

学習ポイント 学ぶ内容
過去勤務費用・数理計算上の差異 制度改定や割引率などの前提変更で生じる差額を、日本基準の連結ではその他の包括利益でいったん認識し、その後一定期間で費用処理する仕組みを理解する
株式報酬費用の会計処理 ストック・オプションは付与日の公正価値をもとに、権利確定までの期間にわたって費用計上するという考え方を理解する
労務費用の基準差 IFRSでは数理計算上の差異などをその他の包括利益に計上した後に損益へ振り替えない(リサイクリングしない)など、日本基準との違いを押さえる

(7) 税効果会計

ポイント:会計上の利益と税務上の所得のズレを調整する税効果会計を、一段深く学びます。繰延税金資産を本当に計上してよいのか、税率が変わったら数字がどう動くのかを、計算も含めて押さえます。

学習ポイント 学ぶ内容
繰延税金資産の回収可能性 将来の課税所得で税金を減らせる見込みがある分だけ計上できる。見込みが下がると取り崩しで利益が減ることを理解する
税率変更時の再計算 税率が変わると繰延税金資産・負債を新しい税率で計算し直す。その差額が利益や純資産、財務指標に与える影響を計算する
その他有価証券の税効果 時価評価差額は税効果を差し引いた純額で純資産(その他有価証券評価差額金)に計上されるという処理を理解する
税効果会計の基準差 繰延税金資産の回収可能性の判断の仕方など、日本基準とIFRSの違いを押さえる

(8) 企業結合会計

ポイント:M&Aや子会社化によって、連結財務諸表がどう変わるのかを学びます。支配を獲得したとき・その後に持分が増減したとき・持分法を使うとき・事業を切り出したときの、それぞれの影響を押さえます。

学習ポイント 学ぶ内容
支配獲得時とその後の持分変動 取得時にのれんや非支配株主持分が生じる仕組みと、支配を保ったまま持分を追加取得・一部売却したときの影響を理解する
持分法の適用による影響 関連会社の損益を持分割合に応じて投資勘定と持分法投資損益に1行で反映する方法と、その影響を理解する
事業の移転と損益の認識 事業を他社に移したとき、投資が「継続」しているか「清算」されたかによって移転損益を認識するかどうかが決まることを理解する
企業結合会計の基準差 のれんの償却の有無や、非支配持分の測定方法などについて、日本基準とIFRSの違いを押さえる

(9) 外貨換算会計

ポイント:為替の変動が財務諸表に与える影響を学びます。為替予約でリスクをヘッジしたときの会計処理と、外貨建て取引や海外子会社の財務諸表の換算についての日本基準とIFRSの違いがポイントです。

学習ポイント 学ぶ内容
為替予約とヘッジ会計 為替予約で円建ての金額を固定したとき、ヘッジ会計を使って為替差損益をどう処理するかを理解する
外貨換算会計の基準差 IFRSは企業が主に活動する環境の通貨(機能通貨)を軸に換算を考えるなど、日本基準との考え方の違いを押さえる

(11) 財務分析の応用

ポイント:2次財務分析の総仕上げです。債権者の目線での分析、IFRS導入時の比較、複雑な資本構成でのEPS、セグメント情報や監査報告書の活用など、実際のアナリスト業務に近い分析の力を身につけます。

学習ポイント 学ぶ内容
債権者の視点 株主は企業の成長や利益の大きさを重視する一方、債権者は元利金をきちんと返してもらえるか(安全性・返済能力)を重視するという違いを理解する
IFRS導入初年度の分析 日本基準からIFRSに切り替えた年の財務諸表で、のれん償却の有無などの基準差が利益や資産にどう表れるかを見分けて分析する
希薄化前・希薄化後EPS 新株予約権や転換社債など、将来株式が増える可能性(潜在株式)を考慮した1株当たり利益を計算する
負債と資本の境界問題 優先株式や劣後債のように性格があいまいな証券を、負債と資本のどちらとして扱うかで財務指標が変わることを理解する
セグメント情報の分析 事業別・地域別の売上や利益を使って、会社全体の数字からは見えない稼ぎ頭や不振事業を分析する
監査上の主要な検討事項(KAM) 監査人が特に重要と判断した事項の記載から、見積りの不確実性など財務分析で注意すべき論点を見つける
会計情報の有用性 決算発表への株価の反応などを手がかりに、会計情報が投資判断や株価形成にどう役立っているかを理解する

財務分析を学ぶときのコツ

1. 「数字がどう変わるか」まで追いかける

2次では、会計処理のルールそのものよりも、その処理によって利益・純資産・財務指標がどう変わるのかが問われます。仕訳を覚えるだけで終わらせず、ROEや負債比率などへの影響まで一緒に考える習慣をつけましょう。

2. 日本基準とIFRSの違いは表にまとめる

学習ポイントの多くに「日本基準とIFRSの相違点」が登場します。のれん・リース・金融商品・退職給付など、項目ごとに「日本基準では」「IFRSでは」「分析への影響」を1枚の表に整理しておくと、復習がぐっと楽になります。

3. 記述式を意識して自分の言葉で説明する

2次は記述式の総合試験です。計算の手順だけでなく、「なぜその数字になるのか」「分析上どこに注意すべきか」を短い文章で説明できるよう、テキストの例題を解いた後に一言でまとめる練習をしておきましょう。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。

よくある質問

Q. 2次の財務分析は1次とどこが違いますか?

1次は会計の仕組みと基本的な財務分析が中心でした。2次では、デリバティブ・退職給付・税効果・企業結合などの会計処理を日本基準とIFRSの違いも含めて深く学び、さらに財務分析の応用として希薄化後EPSやセグメント情報、監査報告書を使った分析まで扱います。

Q. IFRSはどこまで勉強すればいいですか?

学習ポイントに挙がっている項目について、日本基準との主な違いと、その違いが利益や財務指標にどう影響するかを説明できることを目標にしましょう。細かな条文を覚えるより、分析への影響を理解することが大切です。

Q. 計算問題はどのあたりから出ますか?

学習ポイントで計算が明示されているのは、税率変更時の繰延税金資産・負債の再計算と、希薄化前・希薄化後EPSです。企業結合や外貨換算、財務指標への影響なども数字を使って考える場面が多いので、テキストの例題で手を動かして練習しておきましょう。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。