ひとことで言うと

  • 包括利益は、株主との資本取引を除いた、一期間の純資産の変動額です。
  • 包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益(OCI)という関係になります。
  • OCIは有価証券の評価差額や為替換算調整勘定など、まだ実現していない損益で、貸借対照表では「その他の包括利益累計額」に積み上がります。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「包括利益とOCI」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (2) 主要財務諸表と企業活動
協会の学習ポイント 包括利益とOCI(その他の包括利益)を理解する。

包括利益とOCIとは

包括利益とは、ある期間の純資産の変動額のうち、株主との直接的な取引(増資、配当、自己株式の取得など)によらない部分をいいます。企業の成果を「当期純利益」だけでなく、時価の変動なども含めた広い範囲で示そうとする考え方です。

その他の包括利益(OCI)とは

その他の包括利益(Other Comprehensive Income、OCI)は、包括利益のうち当期純利益に含まれない部分です。資産や負債を時価などで評価したときに生じる差額のうち、まだ損益として確定させない(実現していない)ものが中心です。日本基準の連結財務諸表での主な項目は次のとおりです。

  • その他有価証券評価差額金:持ち合い株式など「その他有価証券」の時価評価差額
  • 繰延ヘッジ損益:ヘッジ会計でヘッジ手段の損益を繰り延べたもの
  • 為替換算調整勘定:在外子会社の財務諸表を円換算するときに生じる差額
  • 退職給付に係る調整額:未認識の数理計算上の差異や過去勤務費用

OCIは税効果を考慮した後の金額で表示されます。当期に発生したOCIは貸借対照表の純資産の部に「その他の包括利益累計額」として積み上がっていきます。

組替調整(リサイクリング)

たとえばその他有価証券を売却すると、それまでOCIとして計上していた評価差額が実現し、売却益として当期純利益に計上されます。このとき同じ金額をOCIから差し引かないと二重計上になるため、OCIからマイナスする調整を行います。これを組替調整(リサイクリング)といいます。日本基準では原則としてOCIはすべてリサイクリングされますが、IFRSでは、FVOCIを選択した資本性金融商品の評価差額などリサイクリングしない項目があります。

包括利益の表示方法

連結財務諸表では、損益計算書とは別に包括利益計算書を作る「2計算書方式」か、両者を1つにまとめる「1計算書方式」で包括利益を表示します。日本では、連結財務諸表では包括利益の表示が求められていますが、個別(単体)財務諸表には適用されていません。

押さえておきたい公式

包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益(OCI)OCIは税効果控除後の金額
当期末のその他の包括利益累計額 = 期首残高 + 当期のOCI
用語 意味
当期純利益 実現した収益・費用から計算した期間利益
OCI 包括利益のうち当期純利益に含まれない部分(主に未実現の評価差額)
その他の包括利益累計額 OCIの累計。連結貸借対照表の純資産の部に表示(個別では評価・換算差額等)

具体例で確認

ある会社の当期の数字が次のとおりだったとします(単位:百万円、OCIは税効果控除後)。

  • 当期純利益:500
  • その他有価証券評価差額金:+40
  • 繰延ヘッジ損益:−10
  • 為替換算調整勘定:+30
  • 退職給付に係る調整額:−20

OCIの合計は 40 − 10 + 30 − 20 = 40 です。したがって包括利益は 500 + 40 = 540 となります。

翌期に、評価差額(税効果控除後)15を含むその他有価証券を売却した場合、売却益は当期純利益に計上されます。同時にOCIでは組替調整として−15を計上するため、この15が包括利益に二重に含まれることはありません。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「包括利益とOCI(その他の包括利益)を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 包括利益 = 当期純利益 + OCI という関係と、それを使った計算。
  • OCIに含まれる項目(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整額)の判別。売買目的有価証券の評価差額はOCIではなく当期純利益に含まれる点がひっかけになりやすいです。
  • 組替調整(リサイクリング)の意味と、日本基準とIFRSの扱いの違い。
  • OCIは税効果控除後の金額で表示されること。
  • 包括利益の表示は連結に適用され、個別財務諸表では求められていないこと。

要点まとめ

  • 包括利益は資本取引以外による純資産の変動額。
  • 包括利益 = 当期純利益 + OCI。
  • OCIは未実現の評価差額などで、純資産の「その他の包括利益累計額」に積み上がる。
  • 実現したときは組替調整で当期純利益に振り替え、二重計上を防ぐ。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。