ひとことで言うと

  • 繰延税金資産は「将来の税金を減らす効果」なので、将来に十分な課税所得がなければ価値がありません。
  • そのため、回収可能性(将来の税金を実際に減らせる見込み)がある部分だけを計上します。
  • 見込みが下がると繰延税金資産を取り崩し、法人税等調整額を通じて当期純利益が減ります。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「繰延税金資産の回収可能性」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (7) 税効果会計
協会の学習ポイント 繰延税金資産の回収可能性を理解する。

繰延税金資産の回収可能性とは

繰延税金資産は、将来減算一時差異や税務上の繰越欠損金が将来の課税所得を減らすことで、納める税金が少なくなる効果を資産として計上したものです。しかし、将来に課税所得がなければ、減らすべき税金そのものがなく、この効果は実現しません。

そこで、繰延税金資産は将来の税金負担額を軽減できると認められる範囲でのみ計上します。これが回収可能性の判断です。回収可能性がないと判断された部分は計上できず、すでに計上していた場合は取り崩します。

回収可能性の判断材料

  • 収益力に基づく将来の課税所得:過去の業績や将来の事業計画から、十分な課税所得が見込めるか
  • タックス・プランニング:含み益のある資産の売却など、課税所得を生み出す計画があるか
  • 将来加算一時差異の解消:将来加算一時差異が同じ時期に解消し、課税所得を生むか

日本基準の適用指針では、過去の業績や欠損金の状況などに応じて企業をいくつかの分類に分け、分類ごとに計上できる範囲の目安を示しています。業績が安定している企業ほど広く計上でき、重要な欠損金が続いている企業ほど計上が制限されます。

財務分析上の意味

繰延税金資産の取り崩しは、現金の流出を伴わないものの、税金費用を増やして当期純利益と純資産を減らします。業績が悪化した企業では、本業の赤字に加えて繰延税金資産の取り崩しが重なり、純利益が大きく落ち込むことがあります。逆に業績回復局面では、計上していなかった繰延税金資産を計上し直すことで利益がかさ上げされることもあります。利益の質を見るうえで、法人税等調整額の動きには注意が必要です。

整理しておきたいポイント

状況 繰延税金資産 損益への影響
将来の課税所得が十分に見込める 計上できる 法人税等調整額がマイナスとなり、税金費用が減る
回収見込みが下がった 取り崩す(減額) 法人税等調整額がプラスとなり、当期純利益が減る
回収見込みが改善した 追加で計上する 法人税等調整額がマイナスとなり、当期純利益が増える

具体例で確認

繰延税金資産300を計上している会社が、業績悪化で将来の課税所得の見込みが下がり、回収可能と判断できるのは200だけになったとします。当期の税引前当期純利益は1,000、当期の法人税、住民税及び事業税は300(ほかの一時差異の増減はなし)とします。

  • 取り崩し額:300 − 200 = 100(法人税等調整額 +100)
  • 税金費用:300 + 100 = 400
  • 当期純利益:1,000 − 400 = 600(取り崩しがなければ700)

税引前利益に対する税負担率は40%となり、法定実効税率の30%を大きく上回ります。こうした税負担率の上昇は、繰延税金資産の取り崩しを疑う手がかりになります。

試験で問われやすいポイント

  • 繰延税金資産は、将来の課税所得で回収できる範囲でしか計上できない点が基本です。
  • 取り崩しは法人税等調整額(プラス)を通じて税金費用を増やし、当期純利益と純資産を減らします。方向を問う問題に注意しましょう。
  • 判断材料は「収益力に基づく課税所得」「タックス・プランニング」「将来加算一時差異の解消」の3つです。
  • 取り崩しはキャッシュの流出を伴わない点、利益の質の分析で注意すべき点が問われることがあります。

要点まとめ

  • 繰延税金資産は、将来の税金を減らせる見込み(回収可能性)がある分だけ計上する。
  • 回収可能性は将来の課税所得の見込みなどで判断する。
  • 取り崩すと税金費用が増え、当期純利益が減る。
  • 税負担率が実効税率から大きく離れたら、取り崩しなどの影響を確認する。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。