ひとことで言うと

  • 財務諸表分析は、財務諸表の数字から企業の収益性・効率性・安全性・成長性・生産性などを読み取り、投資や融資などの意思決定に役立てるための分析です。
  • 手法は、比率を使う比率分析、金額そのものを見る実数分析、構成比を見る百分率財務諸表などがあり、時系列比較企業間比較を組み合わせて使います。

この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅱ「財務分析」の学習ポイントのひとつ「財務諸表分析の目的と手法」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (10) 財務分析の基礎
協会の学習ポイント 財務諸表分析の目的と手法を理解する。

財務諸表分析とは

財務諸表分析とは、損益計算書・貸借対照表・キャッシュ・フロー計算書などの数字を加工・比較して、企業の実態や将来性を評価することです。財務諸表の数字をそのまま眺めるだけでは、規模の違う企業を比べたり、良し悪しを判断したりすることが難しいため、比率や構成比に直して比較できる形にします。

誰が、何のために分析するか

分析の目的は、利用者によって異なります。株主・投資家は、主に収益性や成長性から企業価値や株価の妥当性を判断します。銀行などの債権者は、元利金がきちんと返済されるかという安全性(支払能力)を重視します。経営者は、自社の問題点を把握し、経営改善や計画づくりに役立てます。証券アナリストは、主に投資家の立場から企業の将来の業績やリスクを予測するために分析を行います。

主な分析の視点

代表的な視点は、収益性(どれだけ効率よく利益を上げているか。ROA・ROE・売上高利益率など)、効率性(資産をどれだけ有効に使っているか。回転率・回転期間)、安全性(倒産しにくさ、支払能力。流動比率・自己資本比率・インタレスト・カバレッジ・レシオなど)、成長性(売上高や利益の伸び率)、生産性(付加価値を使った分析。労働生産性など)です。

分析の手法と比較の軸

手法としては、2つの数字の割り算で比率を求める比率分析が中心です。ほかに、売上高や総資産を100%として各項目の構成比を示す百分率財務諸表(構成比分析)、基準年度を100として推移を追う趨勢分析、損益分岐点など金額そのものを扱う実数分析があります。得られた数値は、同じ企業の過去と比べる時系列分析と、同業他社や業界平均と比べるクロスセクション分析(企業間比較)によって解釈します。

整理しておきたいポイント

分析の視点 見ていること 代表的な指標
収益性 投下資本や売上に対する利益の大きさ ROA、ROE、売上高営業利益率
効率性 資産を売上に結びつける効率 総資産回転率、売上債権回転期間
安全性 短期・長期の支払能力 流動比率、自己資本比率、インタレスト・カバレッジ・レシオ
成長性 規模や利益の伸び 売上高成長率、EPS成長率
生産性 生み出した付加価値の大きさ 労働生産性、付加価値率

具体例で確認

A社の売上高営業利益率が8%だったとします。この数字だけでは高いのか低いのか分かりません。

  • 時系列分析:過去5年が10%→9%→9%→8%→8%と推移していれば、収益性は徐々に低下していると読めます。
  • 企業間比較:同業他社が5%前後なら、A社は業界内では高い収益性を保っていると評価できます。

このように、同じ数値でも比較の軸によって評価が変わります。また、会計方針(減価償却方法や棚卸資産の評価方法など)が違う企業同士を比べるときは、数字の差が実態の差なのか会計処理の差なのかに注意する必要があります。

試験で問われやすいポイント

  • 利用者ごとの主な関心(投資家=収益性・成長性、債権者=安全性)の組み合わせを押さえましょう。
  • 指標がどの視点(収益性・効率性・安全性・成長性・生産性)に属するかの分類が問われやすいです。
  • 時系列分析と企業間比較(クロスセクション分析)の違い、百分率財務諸表や趨勢分析の意味。
  • 会計方針の違いや一時的な損益、規模の違いが比較を歪める点など、分析上の留意点も確認しておきましょう。

要点まとめ

  • 財務諸表分析は、数字を比率などに加工して企業の実態を評価する作業。
  • 目的は利用者によって異なり、投資家は収益性・成長性、債権者は安全性を重視する。
  • 比率分析・百分率財務諸表・趨勢分析・実数分析などの手法がある。
  • 時系列と企業間の2つの軸で比較し、会計処理の違いに注意して解釈する。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。