貸借対照表による株価評価とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・株式分析
ひとことで言うと
- 貸借対照表による評価は、資産から負債を差し引いた純資産(ストック)をもとに株式の価値を測る方法です。
- 簿価のまま使う方法のほか、土地や有価証券の含み損益を反映させる修正純資産法、解散を前提にした清算価値などがあります。
- 将来の稼ぐ力を直接は反映しないため、収益力に基づく評価とあわせて使うことが大切です。
この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅰ「株式分析」の学習ポイントのひとつ「貸借対照表による評価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅰ/株式分析 |
|---|---|
| 大分類 | (3) 株式価値評価モデルの基礎 |
| 協会の学習ポイント | 貸借対照表に基づく株価評価手法と利用上の留意点を理解する。 |
貸借対照表による株価評価とは
貸借対照表(バランスシート)は、ある時点で企業が持っている資産と負債、その差額である純資産を示します。純資産は株主に帰属する部分なので、「会社が持っているもので株式の価値を測る」という発想の評価方法がこれにあたります。配当や利益といった将来のフローではなく、現在のストックに注目する点が特徴です。
主な手法
- 簿価純資産法:貸借対照表の純資産(簿価)をそのまま使い、1株当たり純資産(BPS)を株価の目安とする方法です。PBRはこの考え方に基づく指標です。
- 修正簿価純資産法(時価純資産法):土地・有価証券などの含み益や含み損を時価で評価し直し、純資産を修正する方法です。含み益に対する税金の影響を考慮することもあります。
- 清算価値:企業を解散して資産を売却し、負債を返済した後に株主に残る金額で評価する考え方です。売却時の値下がりや清算費用を考えると、簿価を下回ることが多いとされます。
- 再調達原価とトービンのq:企業の資産を今つくり直すといくらかかるか(再調達原価)と、市場での評価額を比べる考え方です。
トービンのq
トービンのqは、企業の市場価値(株式時価総額+負債の時価)を資産の再調達原価で割った比率です。qが1を上回れば、市場は資産を今つくり直すコスト以上の価値を認めていることになり、企業にとって新たな投資が価値を生みやすい状態と解釈されます。qが1を下回れば、資産をつくるより企業ごと買うほうが安いという見方につながります。
利用上の留意点
貸借対照表の数字は取得原価が基本であり、時価や企業の実力とずれることがあります。また、ブランド力・技術力・人材といった無形の価値の多くは貸借対照表に載りません。そのため、継続して事業を行う企業(ゴーイング・コンサーン)の評価では、純資産だけでなく収益力に基づく評価と組み合わせる必要があります。一方で、資産を多く保有する企業や、解散・再編が現実的な企業の評価では、貸借対照表に基づく評価が特に役立ちます。
押さえておきたい公式
具体例で確認
ある企業の貸借対照表上の純資産は1,000億円、発行済株式数は1億株、株価は900円です。保有する土地に200億円、投資有価証券に50億円の含み益があり、税率を30%として修正純資産を計算します。
- BPS=1,000億円÷1億株=1,000円、PBR=900÷1,000=0.9倍
- 含み益(税引後)=(200+50)×(1−0.3)=175億円
- 修正純資産=1,000+175=1,175億円、修正BPS=1,175円
- 修正後のPBR=900÷1,175≒0.77倍
株価は簿価ベースでも時価ベースでも純資産を下回っており、純資産の観点からは割安に見えます。ただし、市場が低い収益力(ROEが株主資本コストを下回る見込み)を織り込んでいる可能性もあるため、純資産だけで結論を出さないことが大切です。
試験で問われやすいポイント
- 簿価純資産法・修正簿価純資産法・清算価値の違いが問われやすいです。
- 含み益・含み損の修正と税効果の扱いを含む修正BPSの計算が狙われやすいです。
- トービンのqの定義(分母は再調達原価)と、qが1を上回る・下回るときの解釈が混同しやすいポイントです。
- 貸借対照表による評価は将来の収益力や無形資産を反映しにくい、という留意点が問われやすいです。
- 継続企業の評価では収益力に基づく方法と併用する、という位置づけも確認しておきましょう。
要点まとめ
- 貸借対照表による評価は、純資産(ストック)に注目する方法
- 簿価純資産、修正純資産(時価修正)、清算価値、再調達原価などがある
- トービンのq=市場価値÷資産の再調達原価
- 収益力や無形資産を反映しにくく、他の手法との併用が大切
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
