ひとことで言うと

  • 日本基準では、のれんを20年以内の効果が及ぶ期間にわたって規則的に償却し、あわせて減損処理の対象にもします。
  • IFRSでは、のれんを償却せず、毎年(および兆候があるとき)減損テストを行います。
  • この違いにより、同じ買収でも利益の出方が変わるため、企業間比較では注意が必要です。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「のれんの償却と減損」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (8) 企業結合会計
協会の学習ポイント のれんの償却と減損の会計処理を理解する。

のれんの償却と減損とは

のれんは、企業結合で支払った取得原価が、受け入れた純資産の時価を上回る部分です。ブランド力やノウハウ、シナジーへの期待など、個別に識別できない超過収益力を表すと考えられています。

日本基準:規則的な償却+減損

日本基準では、のれんは20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、定額法その他の合理的な方法で規則的に償却します。償却額は原則として販売費及び一般管理費に計上されます。金額に重要性が乏しい場合は、発生した期に一括して費用処理することも認められています。

さらに、のれんは固定資産の減損会計の対象です。のれんを含む資産グループに減損の兆候があり、割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回る場合には、回収可能価額まで帳簿価額を切り下げ、減損損失(原則として特別損失)を計上します。日本基準では、いったん計上した減損損失の戻入れは行いません。

IFRS:非償却+減損テスト

IFRSでは、のれんの価値は時の経過とともに規則的に減るとは限らないという考え方から、償却を行いません。その代わり、のれんを配分した資金生成単位について、少なくとも年1回(兆候があればその都度)減損テストを行い、回収可能価額が帳簿価額を下回れば減損損失を計上します。のれんの減損損失は戻し入れできません。

財務分析上の意味

日本基準の企業は毎期の償却費で利益が押し下げられる一方、IFRSの企業は償却がないぶん利益は高めに出ますが、業績が悪化したときに多額の減損損失が一度に計上されるリスクがあります。基準の異なる企業を比べるときは、のれん償却前の利益で比較するなどの調整が有効です。

整理しておきたいポイント

項目 日本基準 IFRS
規則的な償却 20年以内で償却する 償却しない
減損 兆候がある場合に判定 毎年+兆候があるときにテスト
減損の戻入れ 行わない のれんは行わない
負ののれん 特別利益として一括計上 純損益(利得)として一括計上

具体例で確認

のれん200を計上し、日本基準で10年の定額法により償却するとします。

  • 毎年の償却額:200 ÷ 10年 = 20
  • 3年経過後の帳簿価額:200 − 20 × 3 = 140
  • 3年目末に収益性が低下し、減損損失70を計上すると帳簿価額は 70。残り7年で償却すると、4年目以降の償却額は 70 ÷ 7 = 10

同じ状況をIFRSで処理すると、毎年の償却費はゼロで、のれんは200のまま残ります。減損テストで回収可能価額を下回った時点で、差額をまとめて減損損失として計上します。

試験で問われやすいポイント

  • 日本基準は「20年以内で規則的に償却+減損」、IFRSは「償却せず減損テストのみ」という違いは最重要の論点です。
  • IFRSの減損テストは兆候の有無にかかわらず少なくとも年1回行う点が問われやすいです。
  • のれんの減損損失は、日本基準・IFRSともに戻し入れない点を押さえましょう。
  • 償却額の計算(取得額÷償却年数)や、減損後の償却額の再計算に慣れておきましょう。
  • 基準の違いが利益水準や企業間比較に与える影響も論点になります。

要点まとめ

  • のれんは取得原価と受け入れた純資産の時価との差額(超過収益力)。
  • 日本基準は20年以内で規則的に償却し、減損処理も行う。
  • IFRSは償却せず、少なくとも年1回減損テストを行う。
  • 基準の違いは利益の出方を変えるため、比較時には調整を考える。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。