ひとことで言うと

  • 財務諸表監査は、公認会計士・監査法人が、財務諸表が会計基準に沿って適正に表示されているかを確かめ、意見を表明するしくみです。
  • 監査意見には無限定適正意見・限定付適正意見・不適正意見・意見不表明の4種類があります。
  • 財務諸表を作る責任は経営者、意見を表明する責任は監査人にある(二重責任の原則)点も重要です。

この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅱ「財務分析」の学習ポイントのひとつ「財務諸表監査」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (1) 証券アナリストと財務分析
協会の学習ポイント 財務諸表監査の目的、監査報告の類型を理解する。

財務諸表監査とは

投資家は、企業が作成した財務諸表をそのまま信じてよいのでしょうか。経営者には業績をよく見せたい動機があるため、第三者のチェックが必要です。そこで、独立した専門家である公認会計士または監査法人が財務諸表を検証し、その結果を監査報告書で表明します。これが財務諸表監査です。金融商品取引法にもとづき有価証券報告書を提出する会社や、会社法上の大会社などは監査を受けることが義務づけられています。

監査の目的

財務諸表監査の目的は、経営者が作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態・経営成績・キャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠にもとづいて意見を表明することです。

合理的な保証と二重責任の原則

監査は、財務諸表に重要な虚偽表示がないことについて合理的な保証を得るものであり、絶対的な保証ではありません。すべての取引を調べるわけではなく、試査(サンプルによる検証)が中心だからです。また、財務諸表を作成する責任は経営者にあり、監査人の責任はその財務諸表について意見を表明することにあります。これを二重責任の原則といいます。

監査報告書の記載事項

監査報告書には、監査意見のほか、意見の根拠、監査上の主要な検討事項(KAM)、経営者と監査人の責任などが記載されます。KAMは、監査人が特に重要と判断した事項(たとえば、のれんの減損や収益認識など)を説明するもので、投資家にとって財務諸表のどこに判断の難しさがあるかを知る手がかりになります。継続企業の前提に重要な不確実性がある場合には、その旨も記載されます。

整理しておきたいポイント

監査意見 どのような場合か 意味
無限定適正意見 すべての重要な点で適正に表示されている 財務諸表は適正
限定付適正意見 虚偽表示や監査範囲の制約があるが、影響が重要ではあっても広範ではない 除外事項を除き適正
不適正意見 虚偽表示の影響が重要かつ広範 財務諸表は適正ではない
意見不表明 監査範囲の制約などで十分な証拠が得られず、影響が重要かつ広範になりうる 意見を述べることができない

具体例で確認

H社のケースを考えてみましょう。

  • H社は海外子会社の在庫について、現地の混乱で監査人が実地棚卸に立ち会えませんでした。ただし、その在庫は連結総資産のごく一部で、影響は限定的と判断されました。この場合、監査範囲の制約はあるものの影響が広範ではないため、限定付適正意見となる可能性があります。
  • 一方、H社が売上の大部分について架空計上を行っており、経営者が修正に応じなかったとします。影響が重要かつ広範であれば、不適正意見が表明されます。
  • 経営者が主要な資料の提出を拒み、監査人が財務諸表全体について十分な証拠を得られない場合は、意見不表明になりえます。

無限定適正意見以外の意見が出ると、財務諸表の信頼性に疑問が生じます。上場会社では、取引所の上場廃止基準にかかわる場合もあるため、アナリストは監査報告書の内容を必ず確認します。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「財務諸表監査の目的、監査報告の類型を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 監査意見4類型の区別:「重要」と「広範」の組み合わせで、限定付適正・不適正・意見不表明が分かれること。
  • 虚偽表示による場合は「不適正」、監査範囲の制約による場合は「意見不表明」になりうるという違い。
  • 監査は合理的な保証であり、絶対的な保証ではないこと。
  • 二重責任の原則(財務諸表の作成責任は経営者、意見表明の責任は監査人)。
  • 監査報告書にKAMや継続企業の前提に関する記載がありうること。

要点まとめ

  • 財務諸表監査は、財務諸表が適正に表示されているかについて監査人が意見を表明するもの。
  • 監査意見は無限定適正・限定付適正・不適正・意見不表明の4種類。
  • 監査は合理的な保証であり、試査が中心。
  • 作成責任は経営者、意見表明責任は監査人(二重責任の原則)。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。