固定資産の減損とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- 固定資産の減損は、収益性が低下して投資額を回収できなくなった固定資産の帳簿価額を、回収可能価額まで減額する処理です。
- 日本基準は「兆候 → 認識(割引前将来CFと比較)→ 測定(回収可能価額まで減額)」の3段階で進めます。
- 回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い方で、減損損失は原則として特別損失に計上します。
この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「固定資産の減損」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 費用の測定 |
| 協会の学習ポイント | 固定資産の減損処理を理解し、減損額を計算できる。 |
固定資産の減損とは
固定資産は取得原価から減価償却累計額を引いた帳簿価額で計上されています。しかし、事業環境の悪化などで、その資産が将来生み出すキャッシュ・フローでは帳簿価額を回収できない状況になることがあります。このとき、回収できない分を損失として計上し、帳簿価額を引き下げるのが減損処理です。時価の下落を反映する時価評価ではなく、取得原価基準のもとで回収可能性を反映させるための処理と位置づけられています。
日本基準の3ステップ
- 減損の兆候:営業損益やキャッシュ・フローが継続してマイナス、使用範囲・方法の大幅な変更、経営環境の著しい悪化、市場価格の著しい下落などがあるかを確認します。資産は、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位(資産グループ)でまとめて判定します。
- 減損損失の認識:兆候がある場合、資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回るときに、減損損失を認識します。
- 減損損失の測定:帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減額分を減損損失とします。
認識の段階で割引前の金額を使うのは、減損が確実な場合に限って処理するという、日本基準の慎重な姿勢の表れです。
IFRSとの違い
IFRSでは、割引前キャッシュ・フローによる認識のステップはなく、帳簿価額が回収可能価額を上回れば減損を認識します。そのため、日本基準より減損が早く計上されやすい傾向があります。また、日本基準では減損損失の戻入れは行いませんが、IFRSではのれん以外について、回収可能価額が回復した場合の戻入れが求められます。
押さえておきたい公式
具体例で確認
ある工場設備(資産グループ)の状況は次のとおりです(単位:百万円)。
- 帳簿価額 1,000、減損の兆候あり
- 残り4年間、毎年200の将来キャッシュ・フロー(使用後の処分価値はゼロ)
- 割引率 5%、正味売却価額 650
- 認識:割引前将来CFは200 × 4 = 800。帳簿価額1,000を下回るので減損を認識します。
- 使用価値:200 ÷ 1.05 + 200 ÷ 1.052 + 200 ÷ 1.053 + 200 ÷ 1.054 ≒ 709
- 回収可能価額:正味売却価額650と使用価値709の高い方で、709。
- 減損損失:1,000 − 709 = 291。減損後の帳簿価額は709となり、以後はこれをもとに減価償却します。
もし割引前CFが1,100だった場合は、帳簿価額を上回るため日本基準では減損を認識しません。一方IFRSでは、回収可能価額(使用価値など)が帳簿価額を下回れば減損を計上する点が異なります。
試験で問われやすいポイント
- 認識は割引前、測定は割引後(使用価値)を使うという使い分け。
- 回収可能価額は正味売却価額と使用価値の「高い方」であること(低い方と誤りやすい)。
- 日本基準は戻入れなし、IFRSはのれん以外で戻入れありという違い。
- 減損損失の計算手順(兆候 → 認識 → 測定)と、減損後の減価償却費が小さくなる影響。
- 減損は多額の特別損失となりROEなどを一時的に押し下げる一方、将来の費用負担は軽くなる点。
要点まとめ
- 減損は回収できない帳簿価額を回収可能価額まで減らす処理。
- 日本基準は兆候 → 割引前CFで認識 → 回収可能価額で測定の3段階。
- 回収可能価額は正味売却価額と使用価値の高い方。
- 日本基準は戻入れなし、IFRSは1段階判定で戻入れあり(のれん除く)。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
