法令・諸規則

金融サービス提供法と消費者契約法(説明義務・取消権)|外務員試験の要点

金融サービス提供法 消費者契約法

結論:この章は「業者の民事責任を重くする法律(金融サービス提供法)」と「消費者が契約をやめられる法律(消費者契約法)」の2本立てです。

  • 旧・金融商品販売法は改正を重ね、現在の題名は「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」(金融サービス提供法)。2024年11月1日から、金融サービスを提供する事業者全般に顧客等の最善の利益を勘案した誠実公正義務が課されています
  • 重要事項の説明義務違反・断定的判断の提供で顧客に損害が出たら、業者は無過失責任で賠償。損害額は元本欠損額と推定されます
  • 勧誘方針は策定・公表が義務。怠ると50万円以下の過料
  • 消費者契約法の取消権は追認できる時から1年契約締結時から5年で消滅(霊感等による勧誘は3年・10年)

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第1巻

この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。

▶ この章の解説動画

動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。

外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。

金融サービス提供法の全体像:3つの法律の役割分担

まず位置づけを押さえます。外務員試験では「どの法律の話か」を取り違えさせる問題がよく出ます。

法律 性格 違反したらどうなるか
金融商品取引法 業者を監督する行政規制(登録・行為規制) 行政処分・刑事罰など
金融サービス提供法 業者と顧客の間の民事ルール+金融サービス仲介業の制度+誠実公正義務 顧客への損害賠償(無過失責任・損害額の推定)
消費者契約法 事業者と消費者(個人)の契約全般の民事ルール 契約の取消し、不当な条項の無効

金融商品取引法の業者規制は金融商品取引法①業者規制と外務員制度で扱っています。この章は「お客さまが業者に何を請求できるか」の話だと覚えておくと、ひっかけに強くなります。

名前の変遷

もとは2000年(平成12年)に制定された金融商品の販売等に関する法律(金融商品販売法)です。2020年の改正で金融サービス仲介業が新設され「金融サービスの提供に関する法律」に、2023年成立の改正で現在の「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」に改称されました。法律番号(平成12年法律第101号)は同じままです。

時期 主な出来事
2000年制定 金融商品販売法。説明義務・損害賠償責任・勧誘方針を定める
2020年改正 金融サービス仲介業を創設。題名を「金融サービスの提供に関する法律」に
2023年改正 題名を現在のものに変更。最善利益を勘案した誠実公正義務を新設(2024年11月1日施行)。金融経済教育推進機構の根拠も置かれる

顧客等の最善の利益を勘案した誠実公正義務(第2条)

第2条は、金融サービスの提供等に係る業務を行う者は「顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない」と定めています。

ポイントは対象の広さです。証券会社だけでなく、銀行、保険会社・保険募集人、信託会社、貸金業者、金融サービス仲介業者、年金の運用に関わる者なども対象になります。従来は業法ごとにばらばらだった「顧客本位」の考え方を、業態をまたぐ横断的な法的義務にしたものです。

  • 「最善の利益」は、顧客の利益を勘案しつつ誠実・公正に業務を行うという義務です。業者が自社の利益を一切得てはいけないという意味ではありません
  • 金融庁の「顧客本位の業務運営に関する原則」(プリンシプル)は、採択するかどうかを業者が選べるソフトローです。第2条はそれとは別の法律上の義務です

顧客本位の原則そのものはセールス業務(職務と倫理・顧客本位)で扱います。

重要事項の説明義務(第4条)

金融商品販売業者等は、金融商品を販売するまでの間に、顧客に重要事項を説明しなければなりません。対象となる「金融商品の販売」には、預金・信託・保険・有価証券の取得・デリバティブ取引などが幅広く含まれます。

説明すべき重要事項

区分 内容
元本欠損のおそれ 金利・通貨の価格・相場などの指標の変動(市場リスク)、販売業者や発行者などの業務・財産の状況の変化(信用リスク)、その他政令で定める事由を原因として、元本欠損が生ずるおそれがあること。その指標・その者・取引の仕組みのうちの重要な部分
当初元本を上回る損失のおそれ デリバティブの証拠金取引などで、顧客が差し入れた委託証拠金等の額を上回る損失が生ずるおそれがあること。その原因と取引の仕組みのうちの重要な部分
期間の制限 権利を行使できる期間の制限、契約を解除できる期間の制限があるときはその旨

説明の程度(実質的説明義務)

説明は、顧客の知識、経験、財産の状況及び契約を締結する目的に照らして、その顧客に理解されるために必要な方法及び程度で行う必要があります。書面を渡して読み上げただけ、では足りない場合があるということです。これは金融商品取引法の「適合性の原則」と同じ4つの要素が並んでいるので、セットで覚えると楽です。

説明が不要な場合

場合 内容 注意点
特定顧客 金融商品の販売等に関する専門的知識・経験を有する者として政令で定める者(金融商品販売業者等) 金融商品取引法の「特定投資家」とは別の概念
顧客の意思表明 顧客から「重要事項について説明を要しない」旨の意思の表明があったとき 商品関連市場デリバティブ取引とその取次ぎでは、意思表明があっても説明を省けない

断定的判断の提供等の禁止(第5条)

金融商品販売業者等は、販売が行われるまでの間に、顧客に対して不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為をしてはなりません。「この株は必ず上がります」「来月には2倍です」が典型です。

第5条違反も、説明義務違反と同じく次の損害賠償責任の対象になります。

金融商品取引法の禁止行為との関係

断定的判断の提供は、金融商品取引法でも業者・外務員の禁止行為として定められています。同じ行為が、金融商品取引法では行政処分の対象に、金融サービス提供法では損害賠償の対象に、消費者契約法では取消しの対象になる、という三重構造です。「金融商品取引法に違反していなければ金融サービス提供法の責任は生じない」といった言い回しは誤りなので注意してください。

  • 行政上の規制:金融商品取引法(業者への処分)
  • 民事上の賠償:金融サービス提供法(無過失責任・損害額の推定)
  • 契約の取消し:消費者契約法(個人の消費者のみ)

損害賠償責任と損害額の推定(第6条〜第8条)

条文 内容 試験のツボ
第6条 損害賠償責任 説明義務違反(第4条)または断定的判断の提供等(第5条)があれば、それによって生じた損害を賠償する 業者の故意・過失は要件でない(無過失責任)
第7条 損害額の推定 元本欠損額を、違反によって顧客に生じた損害の額と推定する 「みなす」ではなく「推定」。業者は反証できる
第8条 民法の適用 この法律に定めのない事項は民法の規定による 民法の不法行為責任(過失相殺など)と併存

元本欠損額は、顧客が支払った・支払うべき金銭等の合計額から、顧客が取得した・取得すべき金銭等の合計額(売却・処分した場合はその額)を差し引いた額です。

例題1. 顧客が投資信託を100万円で購入し、分配金を合計5万円受け取ったあと、80万円で解約した。元本欠損額はいくらと推定されるか(手数料は考えない)。

式:元本欠損額 = 支払った金銭 − 取得した金銭

途中計算:取得した金銭 = 分配金5万円 + 解約金80万円 = 85万円

100万円 − 85万円 = 15万円

答え:15万円(これが損害額と推定される)

顧客側は「説明義務違反があったこと」と「元本欠損が生じたこと」を示せばよく、損害額や因果関係を一から立証しなくてよいのがこの法律の意義です。

勧誘の適正の確保と勧誘方針(第9条・第10条)

金融商品販売業者等は、業として行う金融商品の販売等に係る勧誘の適正の確保に努めなければなりません(第9条、努力義務)。そのうえで、勧誘をしようとするときは、あらかじめ勧誘方針を定め、定めたら速やかに公表しなければなりません(第10条、こちらは義務)。

項目 内容
勧誘方針に定める事項 ①勧誘の対象となる者の知識、経験、財産の状況、契約締結の目的に照らし配慮すべき事項 ②勧誘の方法及び時間帯に関し勧誘の対象となる者に対し配慮すべき事項 ③その他勧誘の適正の確保に関する事項
策定しなくてよい者 国・地方公共団体など勧誘の適正を欠くおそれがない者として政令で定める者、特定顧客のみを顧客とする業者
変更したとき 変更後の勧誘方針も速やかに公表
違反の制裁 勧誘方針の策定・公表を怠ると50万円以下の過料

「罰金」ではなく「過料」(行政上の秩序罰)である点がひっかけになります。

金融サービス仲介業

2020年改正で新設された業態です。スマートフォンのアプリなどで、銀行・証券・保険・貸金の商品をワンストップで仲介するビジネスを想定しています。

項目 金融サービス仲介業
業務の種類 預金等媒介業務・保険媒介業務・有価証券等仲介業務・貸金業貸付媒介業務の4つ
参入 内閣総理大臣の登録。1つの登録で、登録した業務の種別(複数可)を分野横断で扱える
所属制 採用しない(特定の金融機関に所属しなくてよい)
取り扱える商品 顧客に高度に専門的な説明を必要としないものに限られる(仕組預金・デリバティブなどは不可)
顧客財産 顧客から金銭・有価証券などの財産の受入れは禁止
損害への備え 所属制がない代わりに保証金の供託が必要(一定の場合は賠償責任保険で一部代替可)

既存の金融商品仲介業(金融商品取引法)は、所属する証券会社などが仲介業者の顧客への損害について責任を負う所属制です。金融サービス仲介業はこの点が逆なので、「所属金融機関が賠償責任を負う」という選択肢は×になります。

消費者契約法

消費者契約法は、消費者と事業者の間の契約(消費者契約)すべてに適用されます。「消費者」は事業として・事業のために契約当事者になる場合を除く個人なので、法人の顧客は保護の対象外です。

取り消せる勧誘(第4条)

類型 内容
不実告知 重要事項について事実と異なることを告げ、消費者がそれを事実と誤認した
断定的判断の提供 将来の価額など変動が不確実な事項について断定的判断を提供し、消費者が確実だと誤認した
不利益事実の不告知 利益になる旨を告げながら、不利益な事実を故意又は重大な過失によって告げなかった(消費者が告知を拒んだ場合は除く)
困惑類型 帰ってほしいと言ったのに帰らない(不退去)、帰りたいと言ったのに帰さない(退去妨害)、退去困難な場所へ同行しての勧誘、相談の連絡を妨害、不安をあおる告知、判断力の低下の不当な利用、霊感等による告知 など
過量契約 通常の分量を著しく超えることを事業者が知りながら勧誘した

取消権の行使期間(第7条)

起算点 原則 霊感等による告知の場合
追認をすることができる時から 1年 3年
消費者契約の締結の時から 5年 10年

どちらか早いほうが来た時点で取消権は時効で消滅します。「追認をすることができる時」とは、誤認に気づいた時や困惑から脱した時のことです。取り消した契約は初めから無効だったものとみなされますが、取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗できません

無効になる契約条項(第8条〜第10条)

  • 事業者の損害賠償責任を全部免除する条項、故意・重過失の場合に一部免除する条項
  • 消費者の解除権を放棄させる条項
  • 解約時の違約金などで、事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分
  • 支払遅延の損害金で、年14.6%を超える部分
  • 信義則(民法第1条第2項)に反して消費者の利益を一方的に害する条項

このほか、内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体は、不当な勧誘や条項の使用をやめるよう事業者に差止請求ができます。

金融サービス提供法と消費者契約法の比較

項目 金融サービス提供法 消費者契約法
保護される人 顧客(法人も含む。特定顧客を除く) 消費者(個人のみ)
対象の契約 金融商品の販売等 消費者契約すべて
救済の方法 損害賠償 契約の取消し・条項の無効
断定的判断 損害賠償の対象 取消しの対象

両方の要件を満たせば、顧客はどちらを使ってもかまいません。一方しか使えないわけではない点も○×で問われます。

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 金融サービス提供法の損害賠償責任は、業者に故意又は過失がある場合に限り発生する。

答え:× 無過失責任です。説明義務違反・断定的判断の提供があれば、過失の有無を問わず賠償責任を負います。

問2. 金融サービス提供法では、元本欠損額が顧客の損害の額とみなされる。

答え:× 「みなす」ではなく「推定する」です。業者は反証できます。

問3. 顧客から説明を要しない旨の意思表明があれば、商品関連市場デリバティブ取引であっても重要事項の説明を省略できる。

答え:× 商品関連市場デリバティブ取引とその取次ぎは、意思表明があっても説明は省略できません。

問4. 勧誘方針を定めず公表しなかった金融商品販売業者等は、50万円以下の罰金に処せられる。

答え:× 罰金ではなく50万円以下の過料です。

問5. 金融サービス仲介業者は、所属する金融機関を1社定めなければならない。

答え:× 金融サービス仲介業は所属制を採用していません。

問6. 消費者契約法による取消権は、追認をすることができる時から1年間行使しないとき、又は契約締結の時から5年を経過したときは、時効によって消滅する。

答え:○ 霊感等による告知を用いた勧誘の場合は3年・10年に延びます。

問7. 消費者契約法は、法人が金融商品を購入する契約にも適用される。

答え:× 消費者契約法の「消費者」は個人です。事業として契約する個人も除かれます。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

説明義務の本質は「顧客に理解されるまで説明できるか」です。商品の仕組みやリスクを自分の言葉で説明する力は、証券アナリスト(CMA)やCFA®の学習で体系的に鍛えられます。

金融機関で働く人が外務員の次にどんな学びを選んでいるかは、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 金融商品販売法と金融サービス提供法は別の法律ですか?

A. 同じ法律です。2000年制定の金融商品販売法が改正で改称され、現在の題名は「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」です。試験では現在の名称で出題されます。

Q. 最善利益を勘案した誠実公正義務は、証券会社だけに課される義務ですか?

A. いいえ。2024年11月1日から、証券会社のほか銀行、保険会社、信託会社、貸金業者、金融サービス仲介業者など、金融サービスを提供する事業者に横断的に課されています。

Q. 金融サービス提供法で賠償を求めるとき、顧客は損害額を証明する必要がありますか?

A. 元本欠損額が損害額と推定されるため、顧客は損害額を一から証明する必要はありません。ただし推定なので、業者が反証すれば覆ることがあります。

Q. 消費者契約法の取消権はいつまで使えますか?

A. 追認をすることができる時から1年、または契約締結の時から5年のどちらか早い時点で消滅します。霊感等による告知を用いた勧誘の場合は3年・10年です。

参考(2026年9月確認):e-Gov法令検索「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」(平成12年法律第101号)第2条〜第10条・第11条以下、「消費者契約法」第2条・第4条・第7条〜第10条、金融庁「金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律案 説明資料」(2020年3月)、金融庁「金融サービス仲介業者向けの総合的な監督指針」、金融庁「金融商品の販売等に関する法律案要綱」。制度は改正されることがあるため、最新の条文をご確認ください。