商品業務

債券業務①国債の種類・発行市場・流通市場・現先取引|外務員試験の要点

債券業務① 債券の基礎と市場

結論:債券業務は「国債の種類と発行方式」「店頭取引が中心の流通市場」「金利と価格の逆相関」「現先・着地取引などの売買手法」の4本柱です。

  • 国債の発行は公募入札が原則。国債のシンジケート団引受方式は2006年3月に廃止されています
  • 個人向け国債は変動10年・固定5年・固定3年の3種類。1万円から、毎月発行下限金利0.05%発行後1年経過で中途換金できます
  • 債券の売買は店頭取引(相対取引)が中心。日本証券業協会が毎営業日売買参考統計値(平均値・中央値・最高値・最低値)を公表します
  • 金利が上がると債券価格は下がる。残存期間が長いほど、利率が低いほど価格の変動は大きくなります
  • 現先の相手方は上場会社又はこれに準ずる法人で、個人とは行えません。着地取引は約定から受渡しまで1か月以上の取引です

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第2巻

この章は一種・二種で範囲が同じです。二種の方も記事全体が対象です。

▶ この章の解説動画

動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。

外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。利回り計算と転換社債(CB)は続きの債券業務②CBと利回り計算で扱います。

債券の基礎知識:まず押さえる用語

債券は、国・地方公共団体・会社などがお金を借りるときに発行する借用証書のようなものです。発行体は、決められた日に利子を払い、満期(償還日)に額面金額を返します。試験では用語の意味そのものが○×で問われるので、次の表を正確に覚えてください。

用語 意味 試験での注意点
額面(券面額) 償還時に返される金額。価格は「額面100円あたり」で表示 価格が100円なら「パー」、100円超は「オーバーパー」、100円未満は「アンダーパー」
利率(クーポン) 額面に対して1年間に支払われる利子の割合 「利回り」とは別物。利回りは購入価格と償還差損益を含めた収益率
償還期限 元本が返される日 期限前に返す「繰上償還」、分けて返す「定時償還」もある
残存期間 今日から償還日までの期間 価格変動の大きさを左右する(長いほど大きい)
利払い 日本の利付債は年2回が一般的 割引債は利払いがなく、額面より低い価格で発行される
経過利子 前回利払日の翌日から受渡日までの利子相当額 利付債の買い手が売り手に支払う

債券の種類

発行体による分類

種類 発行体 ポイント
国債 発行額・流通量とも最大。短期から超長期まで年限がそろう
地方債 都道府県・市町村など 市場で公募する「市場公募地方債」(全国型、複数団体による共同発行)と、住民などを対象にした「住民参加型」がある
政府保証債 政府関係機関 元利払いを政府が保証する
財投機関債 財政投融資の対象機関 政府保証がない。機関自身の信用で発行する
社債(事業債) 株式会社など 普通社債のほか、新株予約権付社債、劣後債などがある
金融債 特定の金融機関 特別の法律に基づいて発行する債券
外国債 外国の政府・企業など 発行体・発行場所・通貨のどれかが外国のもの(後述)

「政府保証債」と「財投機関債」の違いは頻出です。政府の保証があるのは政府保証債だけで、財投機関債は保証なしで市場の評価を受けます。

国債の種類と年限

国債は年限で呼び分けます。財務省「債務管理リポート2025」の区分では次のとおりです。

区分 年限 補足
短期国債 6か月・1年など 国庫短期証券(割引方式)。主に機関投資家が売買
中期国債 2年・5年 利付債
長期国債 10年 長期金利の指標になる
超長期国債 20年・30年・40年 40年債は利回り競争入札(ダッチ方式)
物価連動国債 10年 元本が物価(全国消費者物価指数)に連動。償還時の連動係数が1を下回っても額面で償還(元本保証のフロア)
クライメート・トランジション利付国債 5年・10年 GX(脱炭素)投資の財源。2023年度から発行
個人向け国債 変動10年・固定5年・固定3年 個人だけが購入できる(下表)

国債の最低額面は5万円(物価連動国債は10万円、個人向け国債は1万円)です。15年変動利付国債は2008年5月を最後に発行されておらず、2023年5月に償還を終えています。古いテキストのまま「15年変動国債を発行中」と覚えないようにしてください。

個人向け国債

項目 変動10年 固定5年 固定3年
金利の決め方 基準金利×0.66(半年ごとに見直し) 基準金利−0.05% 基準金利−0.03%
下限金利 0.05% 0.05% 0.05%
購入単位・価格 最低1万円から1万円単位。額面100円につき100円
発行頻度 毎月(年12回)
利払い 半年ごと(年2回)
中途換金 発行後1年経過すればいつでも国が買い取る。換金額から「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」が差し引かれる。保有者の死亡・災害時は1年以内でも可

変動10年の基準金利は、10年固定利付国債の入札の平均落札利回りです。中途換金で差し引かれるのは直前2回分の利子相当額で、「1回分」と入れ替えるひっかけに注意してください。

このほか、金融機関の窓口で個人も買える新型窓口販売方式の国債(新窓販国債)があり、対象は2年・5年・10年の利付国債、最低5万円から5万円単位です。

利払い・償還の仕組みによる分類

  • 利付債と割引債:利付債は定期的に利子を払う。割引債は利子がなく、額面より低い価格で発行して額面で償還する(差額が収益)
  • 固定利付債と変動利付債:変動利付債は、参照する金利に応じて利率が見直される
  • 新株予約権付社債:社債に株式を取得できる権利が付いたもの。代表が転換社債型新株予約権付社債(CB)
  • 劣後債:発行体が破綻したとき、元利金の支払順位が一般の債務より後になる。その分、利率は高め
  • ストリップス債:利付国債の元本部分と利子部分を切り離し、それぞれを割引債として流通させるもの

外国債と円建外債

外国債は「発行体」「発行する市場」「通貨(払込・利払い・償還)」の組み合わせで名前が決まります。

名称 発行体・市場 通貨
円建外債(サムライ債) 外国の発行体が日本国内で発行 払込・利払い・償還すべて円
ユーロ円債 日本国外の市場(ユーロ市場)で発行 円建て
外貨建外債(ショーグン債) 外国の発行体が日本国内で発行 外貨建て
デュアル・カレンシー債 国内外 払込・利払いは円、償還は外貨
リバース・デュアル・カレンシー債 国内外 払込・償還は円、利払いは外貨

デュアルとリバース・デュアルの入れ替えは定番です。「償還が外貨ならデュアル、利払いが外貨ならリバース」と覚えましょう。外貨で受け取る部分には為替変動リスクがあります。

発行市場:国債と社債はどう発行されるか

国債の発行方式

国債は公募入札が原則です。以前は金融機関などで組織したシンジケート団(シ団)が引き受ける方式がありましたが、2006年3月に廃止されました。代わりに2004年10月に国債市場特別参加者制度(いわゆるプライマリー・ディーラー制度)が導入され、特別参加者は入札で一定の応札・落札責任を負います。

方式 内容
価格競争入札(コンベンショナル方式) 入札者が示した価格(利回り)で、それぞれ落札する。多くの国債で採用
ダッチ方式 落札者全員が同じ価格(利回り)で落札する。40年債・クライメート・トランジション国債は利回り競争入札・ダッチ方式
非競争入札 2年・5年・10年債が対象。発行予定額の10%が上限、1参加者10億円まで
第Ⅰ非価格競争入札 国債市場特別参加者のみ。発行予定額の25%が上限
第Ⅱ非価格競争入札 競争入札の後に行う。国債市場特別参加者のみ
個人向け販売 個人向け国債(毎月)、新窓販国債(2年・5年・10年)を金融機関が取り扱う

社債の発行

社債は、広く一般に募集する公募債と、特定少数の投資家に取得させる私募債に分かれます。公募債は証券会社が引受け、投資家に販売します。発行条件(利率・発行価格など)は、需要を調べたうえで決めるのが一般的です。

会社法第702条により、社債を発行する会社は原則として社債管理者を定め、社債の管理を委託しなければなりません。ただし各社債の金額が1億円以上の場合や、社債の総額を各社債の最低額で割った数が50未満の場合(法務省令)は不要です。社債管理者を置かない場合に選べる、権限が限定された社債管理補助者の制度もあります。社債の機関や社債権者集会は株式会社法概論②で整理しています。

論点 要点
社債管理者の設置 原則として必要(会社法702条)
設置不要の例外 各社債の金額1億円以上、または社債の口数が50未満
社債管理補助者 社債管理者を置かない場合に、社債権者の権利行使を補助する
格付け 格付会社が元利払いの確実性を記号で評価。一般にBBB(トリプルB)以上が投資適格、BB以下は投機的

流通市場:債券は店頭取引が中心

店頭取引と取引所取引

債券の売買は、証券会社と投資家が1対1で価格を決める店頭取引(相対取引)が中心です。上場されている債券もありますが、売買の大部分は店頭で行われます。

項目 店頭取引 取引所取引
価格の決まり方 証券会社との相対。会社によって価格が異なる 取引所での競争売買
手数料 価格にコストが含まれ、別途の手数料はない 手数料と消費税が別途かかる
経過利子 受払いあり 受払いあり
東証の立会時間(国債) 国債は12:30〜14:00

店頭取引では、証券会社は合理的な方法で算出した時価(社内時価)を基準として、適正な価格で取引しなければなりません(日本証券業協会「公社債の店頭売買の参考値等の発表及び売買値段に関する規則」)。顧客から求められたら、価格の算定方法の概要を説明します。顧客の損失を補塡したり利益を上乗せしたりする目的の異常な取引は禁止です。協会規則全体は協会定款・諸規則②を参照してください。

売買参考統計値

店頭取引の価格は外から見えにくいため、日本証券業協会が公社債店頭売買参考統計値を公表しています。

項目 内容
目的 店頭市場の実勢を投資者に知らせ、公正な価格形成と投資者保護を図る
元データ 指定報告協会員(証券会社)が報告する、額面5億円程度の売買の参考となる気配
公表する値 平均値・中央値・最高値・最低値の4種類(単価と利回り)
公表頻度 毎営業日(午後6時30分めど)
対象 主に公募債で、払込・利払い・償還がすべて円建ての債券(新株予約権付社債を除く)
注意点 実際の売買価格と必ずしも一致しない参考値

受渡日(決済期間)

取引 決済期間 実施時期
国債取引(業者間取引など) T+1(約定日の翌営業日) 2018年5月1日約定分から
国債のリテール取引・一般債(社債など) T+2(約定日から2営業日後) 2020年7月13日約定分から

債券貸借取引(レポ取引)と空売り

空売りは、約定日に債券を持たずに売ることです。売った債券を受け渡すために、別の人から債券を借りるのが債券貸借取引で、借り手が担保として現金を差し入れる現金担保付債券貸借が「レポ取引」と呼ばれます。協会規則では、貸借取引を始める前に基本契約書を取り交わすこと、貸し手は原則として取引実行日までに担保金を受け入れることが定められています。

債券市況と価格の変動要因

金利と債券価格は逆に動く

固定利付債の利率は発行時に決まっています。市場金利が上がると、既存の債券は相対的に見劣りするので価格が下がり、利回りが市場金利の水準まで上がります。逆に金利が下がれば価格は上がります。

  • 残存期間が長い債券ほど、同じ金利変化に対する価格変動が大きい
  • 利率(クーポン)が低い債券ほど価格変動が大きい。利払いのない割引債は変動が大きくなりやすい
  • この価格感応度を表す指標がデュレーション。キャッシュフローを受け取るまでの平均的な期間で、長いほど金利変化の影響を受けやすい

金利(債券価格)を動かす要因

要因 金利 債券価格
景気が良くなる 上昇 下落
物価が上がる(インフレ懸念) 上昇 下落
金融引締め(利上げ) 上昇 下落
円安(輸入物価上昇を通じたインフレ懸念) 上昇しやすい 下落しやすい
国債の大量発行(供給増) 上昇 下落
発行体の信用力低下(格下げ) その銘柄の利回りが上昇 下落

残存期間ごとの利回りを結んだ線をイールドカーブといいます。長期の利回りが短期より高い右上がりの形が順イールド、逆が逆イールドです。景気・金融政策と金利の関係は経済・金融・財政の常識とあわせて押さえてください。

債券の売買手法

手法 内容 試験の急所
入替売買 保有債券を売り、同時に別の債券を買う。利回り向上、残存期間の調整、損益の調整などが目的 「同一の債券を同時に売買する」のではなく銘柄を入れ替える
現先取引(条件付売買) 一定期間後に一定の価格で買い戻す(売り戻す)条件を付けた売買。実質は短期の資金貸借 相手方は上場会社又はこれに準ずる法人で経済的・社会的に信用のあるもの。個人は不可
着地取引 約定日から受渡日までが1か月以上の先日付の取引 「1週間以上」などと入れ替えるひっかけに注意
選択権付債券売買(債券店頭オプション) 一定期間内に、あらかじめ決めた価格で債券を売買する権利(選択権)を売買する取引。買い手は対価を支払う 権利の買い手は行使するかどうかを選べる

現先取引のルール

現先は「売ってから買い戻す(売り現先)」「買ってから売り戻す(買い現先)」の2本の取引を最初にセットで約定します。日本証券業協会「債券等の条件付売買取引の取扱いに関する規則」の主なルールは次のとおりです。

  • 取引を始めるときに、顧客と基本契約書を取り交わす
  • 相手方は上場会社又はこれに準ずる法人であって、経済的・社会的に信用のあるものに限る
  • 対象は国債・地方債・社債など。新株予約権付社債は除かれる
  • 売買の単価は、公社債の店頭売買の価格に関する規則に基づいて決める

債券のポートフォリオの組み方

運用の型として、残存期間の異なる債券を均等に持つラダー型、短期と長期に集中させて中期を持たないバーベル型、特定の期間に集中させるブレット型が知られています。ラダー型は毎年一定額が償還されるので、再投資を繰り返すだけで運用を続けられるのが特徴です。

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 国債はシンジケート団引受方式を中心に発行されている。

答え:× 国債のシ団引受方式は2006年3月に廃止され、公募入札が原則です。

問2. 個人向け国債は、発行から1年を経過すれば中途換金でき、その際は直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれる。

答え:○ 1年経過後はいつでも国が買い取ります。

問3. 財投機関債は、元利払いについて政府の保証が付いている。

答え:× 政府保証が付くのは政府保証債です。財投機関債は保証なしです。

問4. 払込みと利払いが円で、償還が外貨で行われる債券を、リバース・デュアル・カレンシー債という。

答え:× 償還が外貨ならデュアル・カレンシー債です。利払いが外貨のものがリバース・デュアルです。

問5. 売買参考統計値は、日本証券業協会が毎営業日、平均値・中央値・最高値・最低値を公表している。

答え:○ ただし実際の売買価格と一致するとは限りません。

問6. 他の条件が同じなら、残存期間が短い債券ほど、金利変動に対する価格変動は大きい。

答え:× 残存期間が長いほど価格変動は大きくなります。

問7. 証券会社は、信用のある個人投資家であれば債券の現先取引を行うことができる。

答え:× 現先の相手方は上場会社又はこれに準ずる法人で、経済的・社会的に信用のあるものに限られます。

問8. 約定日から受渡日までの期間が1か月以上の債券の取引を、着地取引という。

答え:○ 先日付で受け渡す取引です。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

債券の価格が金利でどう動くかを数字で説明できるようになると、お客さまとの会話の質が一段上がります。デュレーションや信用分析をさらに深く学ぶなら、証券アナリスト(CMA)やCFA®の債券分野が次の選択肢になります。

金融機関で働く人が外務員の次にどんな資格を目指しているかは、こちらでまとめています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 個人向け国債はいつから中途換金できますか?

A. 発行から1年を経過すれば、いつでも中途換金できます。換金額からは直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。保有者の死亡や災害の場合は1年以内でも換金できます。

Q. 債券は取引所と店頭のどちらで売買されていますか?

A. 上場している債券もありますが、売買の中心は証券会社と投資家が相対で価格を決める店頭取引です。店頭取引の価格には取引コストが含まれ、別途の手数料はかかりません。

Q. 金利が上がると債券価格はどうなりますか?

A. 下がります。固定利付債は利率が決まっているため、市場金利が上がると価格が下がって利回りが調整されます。残存期間が長いほど、利率が低いほど価格変動は大きくなります。

Q. 現先取引とレポ取引の違いは何ですか?

A. 現先は、一定期間後に一定価格で買い戻す(売り戻す)条件を付けた債券の売買です。レポ取引は、現金を担保にして債券を貸し借りする債券貸借取引です。どちらも実質的には短期の資金や債券の融通に使われます。

参考(2026年9月確認):財務省「債務管理リポート2025」第Ⅱ編・「個人向け国債 商品概要」、日本証券業協会「公社債店頭売買参考統計値発表制度について」「公社債の売買取引について」「公社債の店頭売買の参考値等の発表及び売買値段に関する規則」「債券等の条件付売買取引の取扱いに関する規則」「債券の空売り及び貸借取引の取扱いに関する規則」「債券等の着地取引」「国債取引の決済期間T+1化」「国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮化」、e-Gov法令検索「会社法」第702条。制度や数値は改正されることがあるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。