【CFA®︎ L1 FSA LM11】Financial Analysis Techniques を要点解説|比率分析・活動性と流動性・デュポン分析・業種別比率

Learning Module 11「Financial Analysis Techniques(財務分析の手法)」は、財務分析で使う手法とその用途・限界、活動性・流動性・支払能力・収益性の各比率の計算と解釈、比率間の関係を踏まえた企業評価、ROEのデュポン分析、業種別比率、比率分析などを用いた利益の予測を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM11のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM11には6つのLOSがあります。
- LOS 1:財務分析で用いられるツールと手法を、その用途と限界を含めて説明するdescribe tools and techniques used in financial analysis, including their uses and limitations
- LOS 2:活動性比率、流動性比率、支払能力比率、収益性比率を計算・解釈するcalculate and interpret activity, liquidity, solvency, and profitability ratios
- LOS 3:比率間の関係を説明し、比率分析を用いて企業を評価するdescribe relationships among ratios and evaluate a company using ratio analysis
- LOS 4:ROEのデュポン分析の適用を示し、その構成要素の変化の影響を計算・解釈するdemonstrate the application of DuPont analysis of return on equity and calculate and interpret effects of changes in its components
- LOS 5:財務分析で用いられる業種別比率の用途を説明するdescribe the uses of industry-specific ratios used in financial analysis
- LOS 6:比率分析などの手法を利益のモデル化と予測にどう活用できるかを説明するdescribe how ratio analysis and other techniques can be used to model and forecast earnings
LM11のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 財務分析のプロセスに唯一の型はないが、一般的には目的の明確化、データ収集、データ処理、分析・解釈、結論と推奨の作成・伝達、定期的なフォローアップという段階を踏む
- 分析の目的は計算そのものではなく、何が起きたかに加えて、なぜ起きたか、価値を生んだかを説明する一貫した結論を導くこと
- 評価には比較が必要。クロスセクション分析は同じ時点・期間の複数企業を比べ、トレンド(時系列)分析は1社の指標を時間を追って比べる
- 比率と共通サイズ財務諸表は規模の影響を取り除く。比率は何が起きたかを示すが、なぜ起きたかは示さない。垂直的分析は同期の総資産や売上高を基準に、水平的分析は基準年の同じ項目を基準に表す
- グラフは推移や構成の変化の把握と結論の伝達に役立ち、回帰分析は変数間の関係の特定に役立つ
- 活動性比率は業務の効率、流動性比率は短期債務の支払能力、支払能力比率は長期債務の支払能力、収益性比率は売上や資産から利益を生む力を測る。キャッシュ・コンバージョン・サイクルは単純な比率ではない流動性の指標
- 単一の比率や分類だけでなく、さまざまな比率をあわせて検討することが重要。デュポン分析はROEを業績の異なる側面を示す要素に分解し、5要素分解では税負担・金利負担・EBITマージン・効率性(総資産回転率)・レバレッジで表す
- 業種によって重要な業績の側面が異なるため業種別比率が使われる。将来の業績予測には感応度分析、シナリオ分析、シミュレーションが用いられる
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:財務分析のツール・手法と限界
主なツールは比率分析、共通サイズ分析、グラフ、回帰分析で、クロスセクション分析やトレンド分析によって比較の基準を設けます。比率は何が起きたかを示しても理由は示さないため、会計方針の違いや事業の多角化などの限界を踏まえて解釈します。
- 垂直的共通サイズ:貸借対照表は総資産、損益計算書は売上高を基準
- 水平的共通サイズ:基準年の同じ項目に対する比率で推移を見る
- クロスセクション分析(企業間)とトレンド分析(時系列)
- 限界:異なる会計方針・基準、事業の多角化による比較可能性の低下、比率の良し悪しの判断基準の必要性
- 季節性や期末日の違いにも注意
LOS 2:活動性・流動性・支払能力・収益性の比率
比率は4つに分類されます。活動性は資産の運用効率、流動性は短期の支払能力、支払能力(ソルベンシー)は長期の支払能力、収益性は売上や資産から利益を生む力を測ります。
- 活動性:棚卸資産回転率(売上原価÷平均棚卸資産)、売上債権回転率、仕入債務回転率、総資産回転率など
- 流動性:流動比率、当座比率、現金比率、防衛的期間比率
- キャッシュ・コンバージョン・サイクル = 在庫日数 + 売上債権回転日数 − 仕入債務回転日数
- 支払能力:負債資本比率、負債総資産比率、財務レバレッジ比率、インタレスト・カバレッジ(EBIT÷支払利息)、固定費カバレッジ
- 収益性:売上総利益率・営業利益率・税引前利益率・純利益率、ROA、ROE、総資本利益率(return on total capital)
LOS 3:比率間の関係と企業評価
比率はそれぞれ単独で判断せず、複数の比率の関係から企業の全体像をとらえます。たとえば流動比率が高くても、それが在庫の積み上がりによるものなら、活動性比率の悪化とあわせて評価する必要があります。
- 流動性と活動性:回転日数の悪化は流動比率を見かけ上高めることがある
- 収益性と効率性:ROA = 純利益率 × 総資産回転率
- レバレッジはROEを高めるが、リスクも高める
- 同業他社・過去の推移との比較で良し悪しを判断
- 事業戦略(高付加価値型か薄利多売型か)と比率の組み合わせを対応づける
LOS 4:ROEのデュポン分析
デュポン分析はROEを要素に分解し、ROEの変化が収益性・効率性・レバレッジのどこから来たのかを明らかにします。3要素分解は純利益率・総資産回転率・財務レバレッジ、5要素分解はさらに純利益率を税負担・金利負担・EBITマージンに分けます。
- 3要素:ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
- 5要素:税負担(純利益÷税引前利益)× 金利負担(税引前利益÷EBIT)× EBITマージン × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
- 税負担が高い(1に近い)ほど税率は低い
- 金利負担が低いほど利息の負担が大きい
- レバレッジによるROEの上昇は質の面で注意が必要
LOS 5:業種別比率
業種によって重要な業績の側面が異なるため、業種別の比率が使われます。銀行では自己資本の充実度や流動性、小売業では既存店売上高など、業界特有の事業構造を反映した指標で評価します。
- 銀行:自己資本比率(capital adequacy)、流動性カバレッジ比率、純金利マージン、バリュー・アット・リスク
- 小売:既存店売上高(same-store sales)、売場面積当たり売上高
- サブスクリプション型事業:ARPU、解約率
- ホテル:客室稼働率、RevPAR(販売可能客室1室当たり収益)
- ESGに関する指標を加えることもある
LOS 6:比率分析を用いた利益のモデル化と予測
比率分析は将来の財務諸表を予測するモデルの基礎になります。売上高の予測を起点に、利益率や回転率などの比率を当てはめて費用や資産を予測し、感応度分析・シナリオ分析・シミュレーションで不確実性を評価します。
- 売上高予測を起点に、利益率・費用比率で損益を予測
- 運転資本は回転日数などの比率で予測
- 感応度分析:1つの前提を変えたときの結果の変化
- シナリオ分析:複数の前提を同時に変えた場合(楽観・基本・悲観)
- シミュレーション:前提を確率分布で与え、結果の分布を得る(モンテカルロなど)
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