【CFA®︎ L3 Performance Measurement LM3】Overview of the Global Investment Performance Standards を要点解説|GIPSの目的・ファームと裁量・コンポジット・リターン計算・検証

Learning Module 3「Overview of the Global Investment Performance Standards(GIPS(グローバル投資パフォーマンス基準)の概要)」は、GIPS基準の目的と適用範囲、準拠の基本事項(ファームと裁量の定義)、リターン計算の方法、評価の階層、コンポジットの構築とリターン計算、GIPSレポートでの開示、過去の実績の継承、検証(verification)を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM3のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM3には11個のLOSがあります。
- LOS 1:GIPS基準の目的と適用範囲、および見込み顧客・投資家と運用会社にとってのメリットを論じるdiscuss the objectives and scope of the GIPS standards and their benefits to prospective clients and investors, as well as investment managers
- LOS 2:ファームの定義と、ファームによる裁量の定義を含む、GIPS基準への準拠の基本事項を説明するexplain the fundamentals of compliance with the GIPS standards, including the definition of the firm and the firm’s definition of discretion
- LOS 3:外部キャッシュフロー、現金・現金同等物、費用・報酬の扱いを含む、リターン計算方法に関するGIPS基準の要件を論じるdiscuss requirements of the GIPS standards with respect to return calculation methodologies, including the treatment of external cash flows, cash and cash equivalents, and expenses and fees
- LOS 4:GIPS基準が推奨する評価の階層を説明するexplain the recommended valuation hierarchy of the GIPS standards
- LOS 5:ポートフォリオ・リターンの資産加重の方法を含む、コンポジット・リターンの計算に関するGIPS基準の要件を説明するexplain requirements of the GIPS standards with respect to composite return calculations, including methods for asset-weighting portfolio returns
- LOS 6:コンポジット構築における「裁量的(discretionary)」の意味を説明し、関連する事実から、あるポートフォリオが裁量的とみなされるかどうかを判断するexplain the meaning of “discretionary” in the context of composite construction and, given a description of the relevant facts, determine whether a portfolio is likely to be considered discretionary
- LOS 7:コンポジットの構築における投資マンデート、目的、戦略の役割を説明するexplain the role of investment mandates, objectives, or strategies in the construction of composites
- LOS 8:コンポジット間のポートフォリオの移し替え、新規ポートフォリオの組入れ時期、解約ポートフォリオの除外時期を含む、コンポジット構築に関するGIPS基準の要件を説明するexplain requirements of the GIPS standards with respect to composite construction, including switching portfolios among composites, the timing of the inclusion of new portfolios in composites, and the timing of the exclusion of terminated portfolios from composites
- LOS 9:表示と報告に関するGIPS基準の要件を説明するexplain requirements of the GIPS standards with respect to presentation and reporting
- LOS 10:過去のファームや所属先の実績を、新しいファームや買収側のファームの過去の実績として連結・使用できる条件を説明するexplain the conditions under which the performance of a past firm or affiliation may be linked to or used to represent the historical performance of a new or acquiring firm
- LOS 11:検証の目的、範囲、プロセスを論じるdiscuss the purpose, scope, and process of verification
LM3のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- GIPS基準への準拠を表明できるのは、実際の資産を裁量的に運用し顧客獲得を競う運用会社(ファーム)と、資産を管理・監督する資産保有者
- GIPSの目的は、投資家の利益の促進と信頼の確保、正確で一貫したデータ、実績の計算・表示に関する世界共通の基準、公正なグローバル競争、業界の自主規制の促進
- GIPS基準が法規制と矛盾する場合は法規制に従い、その旨をGIPSレポートで開示する
- ファームは、独立した事業体として公に示される運用会社・子会社・部門。コンポジットは、類似のマンデート・目的・戦略で運用されるポートフォリオの集合
- 裁量的で報酬を受け取る分別口座は、少なくとも一つのコンポジットに含めなければならない
- リターンは原則として時間加重収益率で計算し、条件を満たす場合に限り金額加重収益率を使える。1年未満のリターンは年率換算しない。現金を含め、取引コスト控除後で計算する
- 資産は公正価値で評価し、活発な市場での同一資産の相場価格がなければ、定められた順序で評価の根拠を選ぶ
- 過去の実績の継承には意思決定者と意思決定プロセスの継続などの条件があり、検証はファーム全体についてのみ行われる
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:GIPS基準の目的・適用範囲・メリット
GIPS基準は、運用実績の計算と表示の世界共通の基準です。準拠を表明できるのは、実際の資産を運用し顧客獲得を競うファームと、資産を管理・監督する資産保有者です。
- 目的:投資家の利益と信頼、正確で一貫したデータ、世界共通の基準、公正な競争、業界の自主規制
- 見込み顧客のメリット:運用会社間で実績を比較しやすい
- 運用会社のメリット:信頼性の向上、社内の管理体制の強化、国際的な顧客獲得
- 法規制と矛盾する場合は法規制に従い、その旨を開示
- 準拠は任意だが、準拠するなら該当する要件をすべて満たす
LOS 2:準拠の基本事項:ファームと裁量の定義
準拠はファーム全体で行い、一部だけの準拠は認められません。ファームは独立した事業体として公に示される単位であり、ファームの定義がすべての基準の前提となります。
- ファーム:公に独立した事業体として示される運用会社・子会社・部門
- ファーム総資産には、裁量・非裁量を含む運用資産をすべて含める
- 方針と手続きを文書化し、一貫して適用
- 部分的な準拠や「〜を除き準拠」という表現は不可
- 裁量の定義を明確に文書化し、一貫して適用
LOS 3:リターン計算方法の要件
ポートフォリオのリターンは原則として時間加重収益率(TWR)で計算し、外部キャッシュフローの影響を除きます。一定の条件を満たす場合は金額加重収益率(MWR)も使えます。
- 外部キャッシュフローの扱いについて、コンポジットごとの方針を定めて一貫して適用
- MWRの条件:ファームが外部キャッシュフローを管理し、かつクローズドエンド、期限付き、固定コミットメント、非流動資産が主体のいずれか
- 現金・現金同等物のリターンを含める
- 取引コスト控除後で計算
- 1年未満の期間のリターンは年率換算しない
- グロス(報酬控除前)とネット(報酬控除後)の区別
LOS 4:推奨される評価の階層
資産は公正価値で評価します。活発な市場での同一資産の客観的な相場価格があればそれを使い、なければ観察可能性の高い順に評価の根拠を選びます。
- 最優先:活発な市場における同一資産の調整前の相場価格
- (1)活発な市場における類似資産の相場価格
- (2)活発でない市場における同一または類似資産の相場価格
- (3)相場価格以外の観察可能な市場ベースのインプット
- (4)主観的で観察できないインプット
LOS 5:コンポジット・リターンの計算
コンポジット・リターンは、構成するポートフォリオのリターンの加重平均です。資産加重は、期首時価、または期首時価に外部キャッシュフローを加重したものを用いるか、合算法で計算します。
- 期首時価による加重
- 期首時価+加重した外部キャッシュフローによる加重
- 合算法:コンポジット全体を一つのポートフォリオとして計算
- 定められた頻度で計算し、期間をつないで長期のリターンを算出
LOS 6:コンポジット構築における「裁量的」の意味
ポートフォリオが裁量的とは、ファームが意図した投資戦略を実行できることを意味します。顧客の制約が戦略の実行を妨げるほど重い場合は、非裁量的としてコンポジットから除外します。
- 判断基準:顧客の制約が意図した戦略の実行を妨げるか
- 例:特定銘柄の売却禁止、大きな現金の維持要求、売買の事前承認など
- 非裁量的なポートフォリオはコンポジットに含めない
- 裁量の定義はファームが文書化し、一貫して適用
LOS 7:投資マンデート・目的・戦略とコンポジット
コンポジットは、類似の投資マンデート、目的、戦略で運用されるポートフォリオを集めたものです。コンポジットの定義が明確であるほど、実績の比較と解釈がしやすくなります。
- 裁量的で報酬を受ける分別口座は、少なくとも一つのコンポジットに含める
- 裁量的で報酬を受ける合同運用ファンドは、定義に合うコンポジットに含める
- コンポジットの定義を文書化し、一覧を整備する
- 成績の良いポートフォリオだけを選ぶ(チェリー・ピッキング)ことを防ぐ
LOS 8:コンポジット構築の要件(移し替え・組入れ・除外)
ポートフォリオの移し替えは原則禁止で、顧客の指示による運用方針の変更やコンポジットの再定義など、文書化された理由がある場合に限られます。新規ポートフォリオの組入れと解約ポートフォリオの除外は、方針に沿って一貫したタイミングで行います。
- 移し替えの条件:顧客の投資方針の変更などの文書化された理由
- 移し替えても過去の実績は元のコンポジットに残す
- 新規ポートフォリオ:方針に定めた時期に、適時かつ一貫して組み入れる
- 解約ポートフォリオ:最後の完全な測定期間まで含める
- 大きな外部キャッシュフローで一時的に除外する方針も認められる
LOS 9:表示と報告の要件
GIPSコンポジット・レポートには、リターン、ベンチマーク、資産額、ばらつきなどの定められた項目を含めます。見込み顧客にはGIPSレポートを提供します。
- 少なくとも5年分の年次実績(設定来が短い場合はその期間)、最低10年まで積み上げる
- コンポジットとベンチマークの各年のリターン
- ポートフォリオ数(6以上の場合)、コンポジット資産額、ファーム総資産
- 内部のばらつき(dispersion)の指標
- コンポジットとベンチマークの3年年率化事後標準偏差
- シミュレーションやモデル・ポートフォリオの実績を実際の実績と連結しない
LOS 10:過去の実績の継承(ポータビリティ)
過去のファームや所属先の実績を新しいファームの実績として連結するには、意思決定者と意思決定プロセスの継続などの条件をすべて満たす必要があります。
- 実質的にすべての投資意思決定者が新しいファームに在籍
- 意思決定プロセスが実質的にそのまま、かつ独立して維持されている
- 新しいファームが実績を裏づける記録を保有
- 過去のファームと新しいファームの間で実績に途切れがない
LOS 11:検証(verification)の目的・範囲・プロセス
検証は、独立した第三者が、コンポジットとプール・ファンドの維持や実績の計算・表示・配布に関する方針と手続きが、GIPSに準拠して設計され、ファーム全体で実施されているかについて保証を与えるものです。
- 対象:記録の保存、方針と手続き、ファームの定義、コンポジット一覧の完全性、ファーム総資産の計算
- 検証報告書はファーム全体についてのみ発行
- 検証は任意だが推奨される
- 特定コンポジットのパフォーマンス審査(examination)とは別
- 信頼性の向上と社内管理の改善につながる
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